「ザ・ブロードウェイ・ストーリー」
VOL.15 伝記映画に見る、作詞作曲
家コール・ポーターの波乱多き人生
VOL.15 伝記映画に見る、作詞作曲家コール・ポーターの波乱多き人生
■贅を尽くした人生から生まれた楽曲
■意外やポーターが喜んだ伝記映画
「夜も昼も」日本公開時のポスター。「はんらんする歌と踊り!!」のキャッチ・コピーが凄い。
実はポーターの伝記映画は、彼の無名時代に才能を見出し、作詞作曲を続ける事を薦めたバーリンのアイデアだった。企画が立ち上がったのは第二次大戦中。大怪我を負いながらも、懸命に曲創りに励むポーターの姿が、戦地で負傷した兵士たちの病んだ心を鼓舞すると考えたのだ。ただし、脚本の段階で問題が多かった。まず当時のハリウッドでは、ショウビズの世界では周知の事実だったポーターのセクシャリティーに触れる訳には行かず、作品の核となるべきリンダとの関係は生ぬるいラヴロマンスに終始。その分を、〈ナイト・アンド・デイ〉を舞台と映画で創唱したフレッド・アステアや、『エニシング~』などに主演したポーター作品の常連エセル・マーマンら、豪華ゲストの歌と踊りで補おうとしたものの、彼らの出演は叶わなかった。
「夜も昼も」のワンコインDVD。Amazonのprime videoなどでも視聴可だ。
一方「五線譜のラブレター」は、年老いたポーター(ケヴィン・クライン)が人生を振り返る構成。若き日の回想に始まり、闘病と向き合いつつ生涯最大のヒット『キス・ミー・ケイト』(1948年)を発表、その後のリンダの死(1954年)までが描かれる。ただ、ポーターと男性との情事や事故後の苦悩、妻の献身を綴りながら、脚本と演出が平板で興を削いだ。「夜も昼も」同様に名曲満載で、アラニス・モリセットやエルヴィス・コステロ、シェリル・クロウら個性派シンガーが歌いまくるが、ステージングがチープな上に、歌手の人選にも疑問が残る。白眉は、リンダ逝去のシーンで、ベテランのナタリー・コールがしっとりと聴かせる〈さよならを言う時はいつも〉。「さよならを言う時はいつも、私は少しだけ死ぬの。美しい愛の調べも、何故か突然に長調から短調に変わってしまう」と心の機微を活写した歌詞が秀逸だ。
『キス・ミー~』以降も、『カン・カン』(1953年)や『絹の靴下』(1955年)、新曲を書き下ろしたミュージカル映画「上流社会」(1956年)と「魅惑の巴里」(1957年)を発表し精力的に活躍。しかし1958年に、悪化した右足を切断した後は隠遁生活に入り、1964年にカリフォルニアの病院で静かに息を引き取った。享年73。その死を看取ったのは、執事2人と看護師だけという、豪奢なライフスタイルを貫いたポーターには似合わない最期だった。
「ラヴ・フォー・セール」は、ユニバーサルミュージックからリリース
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