【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#196
作詞家・阿久悠の言葉
恋愛というのは、うまく行かないことを前提に置いて考えるもので、翻弄され、手酷くふられることにすら恍惚感を覚えられるようでなくては、やってはならない
この本は、阿久悠が手掛けた曲のタイトルを題材にしたエッセーを99編収録。作品への想いをはじめ、歌手や作曲家とのエピソード、平成の世相などを、阿久独自の視点で綴っている。今回紹介する名言は、その中の『気絶するほど悩ましい 「恋愛」すら死語になった』というエッセーからの抜粋。「気絶するほど悩ましい」は、1977年に大ヒットしたCharの2枚目のシングル。「♪うまく行く恋なんて 恋じゃない うまく行く恋なんて 恋じゃない」というリフレインが印象的で、年上の女性に翻弄される青年の心情を表した名曲である。阿久は、この歌詞を例にあげ、今回の名言によって「勝手な思い込みを拒否されただけで憎み、殺す時代に『恋愛』はありえない」と主張する。阿久は続けて、「僕の青年期までは、恋愛は免許制だった」「免許とは何かというと、教養講座としての文学を読むことか、文学を読まない人は、人を思いやり、自分を制御することを知る人間講座の実地を学ぶか、どちらか」と語る。阿久の恋愛観は、どんな時代にも通じるのではないだろうか。ちなみに「気絶するほど悩ましい」 は、5000曲以上を作詞した阿久が、〝趣味的にはぼくの大好きな歌〟なのだとか。好きな自作の歌ベスト10では、必ず上位に入るという話も興味深い。
1937年2月7日生まれ、兵庫県淡路島出身。作詞家、詩人、小説家、エッセイスト。1966年、広告代理店でのサラリーマン生活にピリオドを打ち、放送作家と作詞家の仕事を本格化させる。処女作は、1965年のザ・スパイダースのデビュー曲『フリフリ』のB面「モンキーダンス」。広く名を知られるようになったのは、1967年の「朝まで待てない」(ザ・モップス)。1971年の「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)、1976年の「北の宿から」(都はるみ)をはじめ、レコード大賞を5曲で受賞(作詞家としては最多)している。日本テレビのオーディション番組 『スター誕生!』(1971年~1983年)に番組企画と審査員として参加し、広い世代に知られる存在となる。生涯の作詞数は5000曲以上。2007年8月1日、尿管癌のため死去。享年70。2019年8月1日に13回忌を迎えた。2007年3月に行われた石川さゆりの『デビュー35周年 感謝の宴』に出席したのが公の場に出た最後の姿。第2回横溝正史ミステリ大賞、第45回菊池寛賞受賞。紫綬褒章、旭日小綬章受章。明治大学アカデミーコモン地階1階に『阿久悠記念館』がある。
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