【東京スカパラダイスオーケストラ
インタビュー】
一緒に音が出せる喜びを謳歌した
写真左から時計回りに、NARGO(Trumpet)、沖 祐市(Key)、茂木欣一(Dr)、川上つよし(Ba)、大森はじめ(Percussion)、谷中 敦(Baritone sax)、GAMO(Tenor sax)、加藤隆志(Gu)、北原雅彦(Trombone)
前作『ツギハギカラフル』から1年4カ月振りとなる新作『SKA=ALMIGHTY』(スカ・オールマイティ)がついに完成! 国内外のアーティストとのコラボや多彩なモチーフを注入したナンバーなどバラエティー豊かな楽曲が並ぶ、間違いなく東京スカパラダイスオーケストラ(以下、スカパラ)にしか実現できない快作について、谷中 敦(Baritone sax)、川上つよし(Ba)に制作背景を訊いた。
スカパラでいられることは
自分自身を安心させる
『SKA=ALMIGHTY』は実に素晴らしい作品に仕上がっているのは間違いないのですが、やはりコロナ禍の影響は避けて通れない内容ではあって。
谷中
あぁ、そうですね。
川上
うん。
本作収録曲の「倒れないドミノ」は、ステイホームが呼びかけられ始めた時期のJ-WAVE(81.3FM)『GOOD MUSIC, GOOD VIBES』キャンペーンソングであって、『SKA=ALMIGHTY』の中で最初に作成されたナンバーだと思いますが、この曲からアルバム制作が始まった感じですか?
川上
その頃はまだそんなにアルバムのことは考えてなくて、「倒れないドミノ」のあとに『仮面ライダーセイバー』の主題歌の話をいただいて、そっちをやっていくうちにアルバムが見えてきたので、昨年の後半くらいに残りの曲を…という。
これはスカパラに限った話ではないですけれども、昨春に最初の緊急事態宣言が出て、ライヴはおろかレコーディングすらままならない状況となってしまったわけですが、当時はどんな心境でしたか?
谷中
自分たちは今年デビュー32年目になるんですけど、スカパラの歴史の中でこれだけライヴ活動ができない年は初めてで。年間100本弱くらいずっと続けてきて、まさに休みなく活動してきたので、止まってしまっていることがすごく不思議でしたね。どうしたらいいか分からない…活動休止とか、まとまった休みもとらずにやってきてたんで(笑)、何もしていない状態というのが慣れなくて。最初のステイホーム期間中には全然メンバーにも会えないし、個人的に練習に行くのもはばかられるような…
川上
サックスは大変だよね? 家で練習できないもんね。
谷中
そうだね。そういう状態だったから音も出せないし。でも、そんな中でもスカパラでいられるということは、自分にとって自分自身を安心させるひとつの要素であって。そういった約束…“スカパラでいられる”というみんなと交わした約束、“離れていてもつながっていられる”という部分があるから、新型コロナウイルスに立ち向かっていけるんじゃないかと思ったし、コロナみたいな目に見えないものに立ち向かえるのは人の心なんじゃないかというところで“オールマイティ”という言葉が出てきたんです。“心はオールマイティなんじゃないの?”というね。
ステイホーム期間の音楽ができないという抑圧された状況の中、スカパラでいられることや、音楽をやる意味のようなものを今まで以上に考えたという感じでしょうか?
谷中
ステイホーム期間中には加藤隆志(Gu)主導で海外のアーティストと一緒に「上を向いて歩こう」の動画を作ったし、さかなクンからは“バスクラリネットで「Paradise Has No Border feat.さかなクン」(2017年発表のアルバム『Paradise Has NO BORDER』収録曲)を吹いてみたんで、これに音を重ねてください!”っていう半分無茶振りもあって(笑)。それもそれぞれは会わずに作れたし、加藤主導の「上を向いて歩こう」に関してはプエルトリコとか…
川上
アルゼンチン、ブラジル、アメリカとか。
谷中
アメリカのロサンゼルスからはアンジェロ・ムーア(FISHBONE)ね。
川上
まず最初に欣ちゃん(茂木欣一の愛称)が作ったリズムトラックが送られてきて、そこに僕がベースを入れて…というふうにどんどんWeb上で重ねていって、それが世界中のアーティストに広がって。最近は毎年、必ずラテン圏に行ってたんで、そこでつながりができたアーティストに声をかけたら、世界中が同じような状況なんで、みんなやってくれましたね。
谷中
そうやって海外とつながれるということも学びましたし、そういう点では今のテクノロジーがあって良かったなって(笑)。昔だったらできなかったから。
川上
初めての体験だったね。面白かった(笑)。
その海外のつながりというところで言いますと、『SKA=ALMIGHTY』のラストに「Ribbon feat.Moral Distraída(モラル・ディストライダ)」が収録されていますが、Moral Distraídaというのはチリのバンドだそうですね。“地球の反対側にいるバンドとこの状況下でどうやって録音したのだろう?”という素朴な疑問はあったんですけれども、今おっしゃられたようなかたちでレコーディングされたんですね。
川上
そうですね。データをやりとりして。僕たち、チリには3回行ってるんですけど、Moral Distraídaとは加藤が知り合って。
谷中
チリでもアルゼンチンでもアメリカでもやってる『LOLLAPALOOZA(ロラパルーザ)』という大きいフェスで、Monsieur Perine(ムッシュ・ペリネ)を通じて知り合ったんですけど、Monsieur Perineは女性ヴォーカルのコロンビアのバンドで、過去にスカパラと一緒にやってるんです。
川上
で、本当は昨年3月に開催するはずだったデビュー30周年イヤーの締めくくりとなる代々木第一体育館でのライブにMonsieur Perineもゲスト出演してくれることになっていたんですよ…
なるほど。そう考えると「Ribbon feat.Moral Distraída」をアルバムの最後に置くというのは、とても意義深い印象がありますね。地球の裏側の人たちともつながっているというところでは、ものすごい広がりも感じられますし。
谷中
最後の一曲で天国へ行っちゃうみたいな感じだよね(笑)。そういうところが“面白いなぁ”と思って。
川上
(笑)。本当に歌が素晴らしいよね。
谷中
“ここはどこなんだ!?”と思うようなサウンドが最後に来るのは自分たち的には気に入ってますね。
そうした他アーティストとのコラボレーションというのは長きに渡ってスカパラが取り込んできたことで、もはや定番とも言えると思うんですけれども、今作でもMoral Distraída以外にもさまざまなコラボを実現されていますよね。まず、何と言っても『仮面ライダーセイバー』とのコラボです。昨年、『仮面ライダー』の新作の主題歌がスカパラだと聞いた時には相当衝撃でした。
川上
これは僕らにとっても昨年一番のトピックでしたよね。
谷中
救われました、ほんとに。お仕事をいただけたというのは(笑)。コロナ禍での楽曲制作や歌詞を書かなきゃいけないというのはつらい気持ちもありましたけど、こうしてお話をもらったのは本当にありがたいなと。しかも、それが『仮面ライダー』だったので。これはカッコ良い人に歌ってもらった方がいいということで、自分の中で真っ先に浮かんだのが[Alexandros]の川上洋平くんだったんです。前から洋平くんとは一緒にやりたいと思ってたんで、みんなとミーティングした時に洋平くんの名前を出したら“じゃあ、彼でいこう!”と。
川上
そこはすんなり決まりましたね。
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“変身!”への恩返しを盛り込みたいなと思ったアーティスト
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