【フジファブリック インタビュー】
僕らも支えてもらった分、
支えたいし、
みんなと一緒に進みたい
L→R 金澤ダイスケ(Key)、山内総一郎(Vo&Gu)、加藤慎一(Ba)
メジャーデビュー15周年という節目を経て、2年2カ月振りにリリースする11作目のアルバム『I Love You』。ストレートに愛を伝えるメッセージとダンサブルなサウンドに加え、豪華コラボレーションなど聴きどころ満載な作品に仕上がった。
今、鳴り響いていてほしい
音楽を考えて詰め込んだ
最高傑作と言えるぐらい自信作になった『F』(2019年1月発表のアルバム)の次ということで、いつも以上に楽しみにしていたのですが、変に気負うことなくしっかり地に足を着けて、新たな気持ちで前に進んでいこうという想いが感じられる作品になりましたね。まずはアルバムを完成させた手応えから聞かせてください。
山内
みんなに届いてこその『I Love You』だと思うので、手応えっていうのはもうちょっと時間が経ってから感じるものなのかな? でも、間違いなく今までで一番いいと思える作品になりました。今回、いろいろな“I Love You”が入っているんですけど、誰に伝えるかという大きなテーマが決まってからは、ひとつのところに向かっていくだけで良かったんです。このタイトルに決まるまでの過程はコロナ禍とか、自粛期間とか、いろいろあったんですけど、僕らとファンの関係性や今までの道のりを知ってもらえれば、それが突拍子もないメッセージではなく、バンドの想いだと分かってもらえると思います。そういう意味でも手応えがある作品になりました。
加藤
確かに“I Love You”ってタイトルは僕らにしてはストレートすぎるかもしれないけど、自信を持ってそう言っているし、曲も“愛”について照れることなく表現しているんです。
金澤
いっぱいある曲の中からタイトルに相応しいものを選んでいきました。
メジャーデビュー15周年というアニバーサリーを祝う中で、改めて感じたファンに対する感謝の気持ちをどう返そうかというところでの“I Love You”なんだと思ったのですが。
山内;それはまさに。
そこにコロナ禍以降の想いが加わって、“I Love You”という気持ちがさらに大きなものになっていったと。
山内
そうですね。新型コロナウイルスが感染拡大し始めた時、僕らはちょうどツアー中(『フジファブリック LIVE TOUR 2020 "I FAB U"』)で。15周年の大阪城ホール公演(2019年10月20日)で全国からお客さんが大阪まで来てくれたから、お礼参りじゃないですけど、そういうツアーだったんです。それがコロナ禍によって名古屋公演を最後に延期、そして中止になって、その後3カ月くらいメンバーとも会えない時期があり。でも、バンドは音楽を作って転がしていかないと活動も停滞してしまうので、作品を作らなきゃと思いタイトルを考え始めた…というか、その時からデモはいくつかメンバーそれぞれで作っていたんですけど、そこから何を伝えようかと悩んだり、不安になったりしながら、斜めから見たタイトルじゃなくて“I Love You”と、聴いてくれるみんなやライヴに来てくれるみんなに対して、加藤さんが言ったように恥ずかしがらずに伝えるべきじゃないかと。だって、みんな不安だし、みんなどうしていいか分からないしね。だったら、誰もが自分自身を肯定できるようなアルバムにしないといけないと考えて。僕らも支えてもらった分、支えたいですし、背中を押してもらっている分、みんなと一緒に進みたいという気持ちから生まれたタイトルですね。
今、お話していただいたことは、2曲目の「SHINY DAYS」の歌詞にはっきりと表れていますね。
山内
ファンのみなさんに向けた曲なんです。1曲目は「LOVE YOU」というインストですけど、幕開けから伝えたかった。ちなみに「SHINY DAYS」は加藤さんもダイちゃん(金澤の愛称)も歌ってるんですよ。今までコーラスってあったけど、一節でもメインヴォ―カルを取るっていうのは、この曲の場合、すごく意味のあることだと思いましたね。
アルバムタイトルが決まってから曲作りの方向性も定まっていったわけですね?
山内
やっぱり何を伝えるか決まらないと音楽も抜けてこないですからね。でも、その前からある曲もあって、ダイちゃん(金澤の愛称)が作ってきた「楽園」はそうです。話は前後しちゃいますけど、「楽園」をダイちゃんが自粛期間中に書いてきたこともアルバムに向かう上で、すごくいい起爆剤になりました。“めっちゃクオリティー上げてんじゃねえか!? しかも、これまでキラキラポップソング・メーカーだったダイちゃんがすごくエッジの効いた曲を書いてきたぞ”って(笑)。バンド内でもそんなふうに活性化していないと、“I Love You”とはなかなか言えなかったかもしれないな。
「楽園」はどんなところから作っていったんですか?
金澤
大阪城ホール公演が終わってから“これでもない、これでもない”と少しずつ作っていたんですけど、TVアニメ『Dr.STONE』第2期のオープニングテーマのお話をいただいた時、その勢いで完成させました。大阪城ホール公演が終わって感謝を伝えたいと思いながら、自分たちも前に進みたいという気持ちがあったんです。
その気持ちがエッジの効いた曲に挑戦させたのですか?
金澤
今までもエッジーな曲はあったと思うんですけどね(笑)。でも、まぁ確かに明るい曲のほうが作りやすいし、自分自身も明るいと思ってましたけど、自分の暗い部分もちゃんと見つめた上で自分を肯定してあげようっていう気持ちになったんでしょうね。
山内
肯定できてるよ。
金澤
できてるかね?(笑)
たくさんある曲の中からタイトルに相応しい曲を選んだそうですが、これまでと比べて、サウンドというかジャンル的にグッと絞っているという印象がありました。メンバー自身“今度のアルバムはダンサブルだ”とおっしゃっていたように、R&Bやファンクのテイストが感じられる曲が多めですよね?
山内
そうですね。自分が“今、鳴り響いていてほしい音楽”を考えたら、チルアウトしたものか、明るく輝くものか、照らしてくれるものか、いい感じにノリのあるものだったんです。重苦しいのはあんまり聴きたくなかった。そういうざっくりしたイメージを持って曲を作っていく中で、心が躍るところがない曲は入れないようにしました。その結果、ダンサブルな曲が多めになりましたね。最初は11曲ぐらいの予定だったんです。でも、“そんなにいる? それよりも純度を高めたほうがいいよ”という話になって、絞っていったら全9曲になりました。
ダンサブルな曲が多めになったことで、山内さんのギターも今回はファンキーなカッティングがメインになった印象があります。
山内
休符が多めですね。でも、自分でもうまいなぁって思います。あははは。
金澤
そう言えるなら本当に幸せだよね(笑)。
山内
めちゃくちゃうまいんですよ。特に「赤い果実 feat. JUJU」のギターソロは。
あれはいいですね!
山内
いいですよねぇ。あのソロは自分の人生の中で一番ですね。名ソロはいっぱいあるんですけど、この歳になってああいうところもみんなに知ってもらわないといけないと思いながら弾いたんですけど、レコーディングに2日かかりました(笑)。
加藤
すごく時間をかけたよね。一回録ったけど、“これじゃない!”って言ってね。
山内
確固たるイメージがあったんです。あの空気…ライ・クーダー的って言うんですか? デレク・トラックスもそうですけど、レイドバックしたね。フジファブリックって言うと「銀河」(2005年2月発表のシングル)だったり、「夜明けのBEAT」(2010年発表のアルバム『MUSIC』収録曲)のギターの印象が強いと思うし、そう思ってもらえるのは嬉しいですけど、こういうのも弾けるんだぞっていう。自分たちの根底にあるものがギターソロひとつ取っても表れているというか、根底にあるものに立ち返っているような気がして。繰り返しになりますけど、あれはいいギターソロですね(笑)。
そう思います。加藤さんのベースプレイもいつも以上にグルーブを意識したものになっていて。
加藤
曲がすでにそうだったので。フレーズもデモの段階からかっちり決まっていたから、それを基本にしながらレコーディングの時は、“もっとこうしたほうがいいんじゃない?”というところがあれば、みんなで話し合いながらちょっと変えてみたりして作りました。
そして、金澤さんのキーボードが今回、ソロの多さや音色の多彩さも含め、大活躍しています。
山内
いろいろな年代の音色が鳴ってますよね。
金澤
いろいろやりましたね。フィジカルに実際弾いたものもあればプログラムしているものもあって、結構両極端に使い分けました。
山内
メインの音色っていうのがどの曲にもあるよね。
金澤
あるね。それはそれぞれに作るデモのクオリティーが上がっているのもあると思います。例えば「たりないすくない feat. 幾田りら」のキーボードはほとんど加藤さんが弾いているんです。それもあって音色が多彩に聴こえるのかもしれない。
加藤
弾いているというか、デモに入っていたキーボードをそのまま使っているんです。
山内
加藤さんの鍵盤とか、ギターとかってムズいのよ。独特だから。
加藤
いやいや、どれもすぐに弾けるって。
山内
弾けるけど、弾いたら独特の感じがなくなっちゃうんだよ。例えばギターのいい感じの千鳥足感とかね(笑)。
金澤
音色の選び方やエフェクトのかけ方がキーボード奏者の発想じゃないんです。だから、それを差し替えちゃうと加藤さんが表現したいものが薄まるような気がして。もちろん、差し替えたほうがよりいいものになると思ったら差し替えて、一回聴いてもらうんですけどね。
加藤
僕はみんなに弾いてほしいんです。
山内
だから、俺たちがその独特の魅力を守らないと。
アーティスト
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