名曲
「サタデー・イン・ザ・パーク」を
収録したシカゴの傑作『シカゴ V』
シカゴは1stアルバムの『シカゴの軌跡(原題:The Chicago Transit Authority)』(’69)、2nd『シカゴと23の誓い(原題:Chicago)』(’70)、3rd『シカゴ III(原題:Chicago III)』(’71)と、新人であるにもかかわらず、3枚続けて2枚組でのアルバムリリースを果たしている。そして、4枚目となる初のライヴ盤『シカゴ・アット・カーネギー・ホール』(’71)は何と4枚組(当時の日本盤LPは7,800円!)でのリリースという、貧乏学生泣かせのグループであった。今回紹介する本作『シカゴ V』(’72)は彼ら初の一枚もののアルバムで、ここにきてようやく彼らのアルバムを入手できた若者は少なくなかったはずだ(当時中学生の僕はそうだった)。大ヒットしたシングル「サタデイ・イン・ザ・パーク」(全米3位)の収録もあって、本作は全米1位を獲得することになる。前3作のスタジオアルバムでは、3管を擁したパッション溢れる演奏と政治色の濃い硬派のイメージがあったが、本作はロックグループとしての熟練すら感じられるすっきりとした仕上がりになっており、それまでの集大成とも言える彼らのエッセンスが凝縮された傑作である。
ジャズロックとブラスロック
シカゴはブラッド・スウェット&ティアーズ(以下、BS&T)やチェイスらと同様、ホーンセクションを擁したブラスロック・グループとして知られている。ただ、BS&Tやチェイス(トランペット4管!)が、ジャズサイドからロックへのアプローチを試みたようなサウンドなのに対して、シカゴはあくまでもロックグループとしてのスタンスを保ちながらホーンを導入しているという感覚である。海外では“ブラスロック”という表現は存在せず、BS&Tもチェイスもジャズロックとされているが、僕はシカゴには“ブラスロック”という言葉が似合うと思っている。それだけ初期のシカゴはロックフィールに溢れており、シングルヒットした「クエスチョンズ67&68」「長い夜(原題:25 or 6 to 4)」「ぼくらに微笑みを(原題:Make Me Smile)」「自由になりたい(原題:Free)」などを聴けばそれは明らかである。また、3rdアルバム『シカゴ III』では生ギターを使ったり、70年代初頭に巻き起こったシンガーソングライター・ブームに便乗したかのようなフォーキーな曲を取り入れたりするなど、時代の要求に敏感に対応できる柔軟さは、ほかのジャズロックのグループにはあまり見られない。
ロバート・ラムのポップ性
上記のシングルヒットした4曲は、どれもポップ性の高い仕上がりになっているが、テリー・キャスの破壊的なギターや実験的なホーンアレンジが登場するなど、そのあたりの多面性にもシカゴの魅力があるのではないかと思う。シカゴのヒット曲の多くはロバート・ラムが書いたものであり、彼のソングライターとしての才能がシカゴをビッググループにのし上げたことは間違いない。
ラムはソングライター&ヴォーカリストとしての才能を買われたのか、グループを続けながら、この後『スキニー・ボーイ』(’74)でソロデビューも果たす。バックにホーンはなく、シカゴの弟バンドと言われたマデュラのメンバーの他にポインターシスターズなどが参加している。そのサウンドは想像通り典型的なAORサウンドで、残念ながら彼の才能が生かされているとは言い難い内容であった。
ラムはソングライター&ヴォーカリストとしての才能を買われたのか、グループを続けながら、この後『スキニー・ボーイ』(’74)でソロデビューも果たす。バックにホーンはなく、シカゴの弟バンドと言われたマデュラのメンバーの他にポインターシスターズなどが参加している。そのサウンドは想像通り典型的なAORサウンドで、残念ながら彼の才能が生かされているとは言い難い内容であった。
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