【山下久美子 インタビュー】
愛にあふれた人たちに対する
感謝の想いを込めている

山下久美子

そのライヴパフォーマンスから“総立ちの久美子”との異名をとり、現在のロックシーンの礎を築いたとも言える山下久美子の40周年記念作品『愛☆溢れて! ~Full Of Lovable People~』。新曲を加えたベスト盤+ライヴ盤+映像の3枚組で、過去の総括だけでなく、未来を感じさせる貫禄の作品集に仕上がっている。

常に基本はラブソングで、
テーマは“愛”

デビュー40周年記念作品はCD2枚+DVD1枚という大ボリュームですが、DISC1の“40th Anniversary Best 「愛☆溢れて!」”は東芝EMI時代のベスト盤といった感じですね。

35周年の時もテイチクエンタテインメントさんから出させていただいているので(2016年3月発表のベストアルバム『ALL TIME BEST Din-Don-Dan』)、それと被らないようにして、前回のベストと今回のベストでできれば全てを網羅したいというか、ある意味“これでベストが完結する”くらいな意味合いで選んだ感じですね。

逆に言いますと、前回のベストアルバムは東芝EMI時代の楽曲が薄かったわけですか?

うん。コロムビア時代のものとかデビュー当時から…というニュアンスが強かった。ほぼ1980年代のものでしたからね。だから、今回は1990年代になってからのもので。そうしないと、私の40周年が語れないというのもあって(苦笑)。

今作のDISC1収録曲はいわゆるシングルのカップリング曲が多い印象でもありますね。

あっ、それは考えてなかった(笑)。やっぱりベストアルバムっていい曲を選ぶでしょ? そうすると必然的に好きな曲になって。私、汐留のBlue Moodというホームグラウンドみたいな場所で5年くらいずっと定例ライヴをやってるんですけど、そこでほぼ全曲やったと思うんです。それまでやっていなかった曲も結構やっているので、改めて一曲一曲の良さみたいなものを自分なりに感じたというか、“この曲もいい曲だなぁ”とか(笑)…もちろん全部がいい曲だと思ってるんですけれど、そういう流れもあったので、選びやすかったですよね。

カップリングというとタイトル曲に比べて陽が当たらない印象もありますけど、実際にライヴでやってみて、これは埋もれさせるには惜しいという感じだったんでしょうか?

私はアナログ盤からスタートしているからだけど(笑)、シングルは両A面という気持ちでずっといるから、カップリングにも陽が当たるように絶対にいい曲であるべきだと思っているので、そういった意識はなかったですね。

単純に全15曲中、カップリング曲が7曲とほぼ半数で、“カップリングコレクション”にも近い容姿になっているもので少し気になって訊いてみました(苦笑)。

それは誰も考えてなかったです(笑)。

これはDISC1を拝聴して感じたことなのですが、この収録曲もラブソングばかりですし、改めて久美子さんは徹頭徹尾、ラブソングを歌ってきた方であることが分かると思うんです。それが今回のタイトルである“愛☆溢れて! ~Full Of Lovable People~”にもつながっていると思うんですが、ここまでずっとラブソングを歌い続けてきたのはどうしてなのでしょうか?

…それ以外にどんな曲があるんだろう?(笑) 私はポリティカルなこととか、忌野清志郎さんみたいなことは言えないし、逆に言えば私にしかできないラブソングを歌いたいと思っていて、それ以外は歌いたいとは思わないですね。それは他の方にお任せしておけばいいかなって感じで、常に基本はラブソングで、テーマは“愛”です。大きな意味での“愛”で、すごくいろんなバリエーションもあって。

意識なさらずとも、そうなってしまう感じですか?

ですね。それは自分自身もそうで、最近はちょっと大人になって自立できてきたんですけど(苦笑)、常に誰かに愛されて、美味しい水を与えてもらわないときれいに咲けないと思っていたし、私はひとりじゃなくて、誰かがいてこそ歌っていられるんだという意識がずっとありましたし。そういうふうに守ってもらってここまで来ている感じだったりするので、そういう意味合いでも愛がないと生きていけないと思っています。

誰かに支えてもらう感じですか?

“支えてもらう”というよりは、喉の渇きを潤すための美味しい水をいただくっていう感じで、それは愛情だったり、やさしさだったり、笑顔だったり、時には叱咤激励だったり。ある意味、叱られることも愛情だったりするじゃないですか。年齢を重ねると誰も言ってくれなくなるでしょ?(苦笑) 何も言ってもらえなくなっちゃうことって寂しいから、言ってくれる人が側にいてくれることがありがたいと思ってて。

アーティスト