【LACCO TOWER ライヴレポート】
『黒白歌合戦
~電波極まる漆黒の変~』
2020年9月6日 at 伊勢崎市文化会館
(無観客ライヴ)
2020年9月6日 at 伊勢崎市文化会館(無観客ライヴ)
暗転した会場に青い光が飛び交う。どうやら今日はステージで演奏するようだ。SEの「狂想序曲」が響き渡る中、拳を突きあげ、5人が登場。昨日とは真逆で、マスクまで真っ黒という徹底ぶりだ。そして、いきなり真一ジェット(Key)は椅子に、細川大介(Gu)はモニターに昇る様子が映し出される。火蓋を切って落とした1曲目は「林檎」。咆哮混じりの松川の歌声を筆頭に、一気に沸点越えのパフォーマンスを見せていく。演奏を終え、松川が“暗黒漆黒真っ黒け。白いのは私の心ぐらい”と言うと、重田雅俊(Dr)が“白いよ、ネクタイ”とすかさずツッコミ。そんな笑いも交えつつ、次は流麗なピアノから「仮面」へ。終盤に向かって開けていく展開が、早くもクライマックスのムードを醸し出す。しかし、もちろん、ここで勢いは止まらない。続く「蛹」を終えた時には、松川は“暑い!”と叫ぶほどだった。
そこからはミドルテンポの「薄荷飴」「桜桃」を畳みかけ、画面からも切なさがあふれ出す。MCを挟んだあとは、松川のアカペラから怒涛の演奏になだれ込む「杏子」。そして、松川の“普段は会場でしかできないことを、電波の上でもやってみようと思います”という言葉から真一がショルキーを抱え、“オイ! オイ!”と手を突きあげ、松川が“お手を拝借!”と叫び「傷年傷女」へ。飛ばしまくる真一、松川の歌が笑い交じりになる。ここまで読んでもらえれば分かるように、彼らは無観客にもかかわらず、まったくぶれずにライヴを楽しんでいたのだ。それは外出自粛期間などを経て、5人でバンドをできることそのものに喜びを感じているのもあっただろうし、長い歴史の中、彼らがさまざまなシチュエーションでライヴをやってきた成果も表れているのだと思う。また、何より画面の向こう側の“あなた”が彼らにしっかりと見えていたことも大きかったはずだ。
換気タイムを経て、全員がスマホを持って帰還。視聴者のコメントを読みながらも汗だくの重田雅俊(Dr)が“すっごい疲れるね”と笑う姿は、アグレッシブなセットリストを証明していた。とはいえ、後半戦も手を緩めることなく、ドラマチックな「罪之罰」からスタート。さらに、ステージ中心から5人をぐるりと映すカメラワークも印象的だった「斜陽」、深い切なさを描いた「恋人」と続く。美しくもエモーショナルなピアノソロから突入した「閃光」では、画面の向こうからオーディエンスの声も聴こえてくるような気がしたし、ユニゾンがすこぶる気持ち良い「地獄且天国」では画面を越えて歓喜の混沌が広がってきた。
しっとりとした曲調の中で、華麗なアンサンブルとエモーショナルな歌声が際立つ「霙」を終えてからは、松川がバンドマンとのその周りの状況を率直に話し、“大好きな人を大好きなままで、思い切り愛してあげてください”という切実なメッセージを届けて、最後は「火花」。鮮やかなパッションを焼きつけて、二日間にわたる『黒白歌合戦』は終幕した。
“白の日”もそうだったが、ひと口に“黒の日”と言えども、激しいものから穏やかなものまで、さまざまな楽曲が飛び出してきて、LACCO TOWERの奥深さが感じられた。また、その感動や衝撃は曲目が発表されていても目減りすることはなく、彼ら自身も“ライヴ=生”だからこそ見せられるものを分かっていることが伝わってきた。“ライヴの熱量が真ん中に集まることってなかったじゃん。まるでLACCO TOWERだなと思って”(塩崎)、“五角形だから美しいよね”(真一)という言葉もあったけれど、まさにそびえ立つ五角形のタワーのように、何が起こっても揺るがぬ彼らの美しき屈強さを見せつけられたライヴだった。
撮影:三木康史/取材:高橋美穂
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