【加藤和樹 インタビュー】
歌詞はファンへの強いメッセージ

加藤和樹

日本を代表するミュージカル俳優であり、シンガーとしても大活躍中の加藤和樹。新作ミニアルバム『Addicted BOX』は、そのタイトルに“中毒”という意味を持つ言葉の入った、まさに中毒性の高い、予想ができないさまざなジャンルの曲たちが収録されている。

歌詞の内容が
ちょっとダサいのが狙い

ミニアルバム『Addicted BOX』は全ての曲がまったくタイプの異なる曲だったので、ワクワクしながら聴いていました。

ありがとうございます。今作を制作する時、すでにツアーが決まっていたこともあり、ライヴで盛り上がるだろう新曲3曲と、事前に配信シングルとしてリリースしていた3曲を足して作ったんですが、自分でも驚くほどいろんな曲が入った一枚になったと感じています(笑)。

1曲目の「RISKY」からとてもインパクトがありますよね。

全6曲を並べた時に、“1曲目はこの曲しかない”と思いましたね。おっしゃってくださったようにインパクトがあるのはもちろん、男が聴いてもすごく共感できる曲なんです。歌詞の内容はちょっとダサいんですが(笑)、それが狙いで。男ってダサカッコ良いことに憧れるんですよ。背伸びしてカッコつけたり、ちょっと高いお店に入ったり、慣れないレストランに入ったり。でも、そんな経験がいつかは絶対に役に立つんです。そういった男の成り上がり精神がしっかりと描かれていたので、レコーディングも魂を込めて歌うことができました。

《ブリリアントなダイヤモンド》など、言葉選びも印象的ですよね。

すごくいいですよね。僕からは出てこない言葉ですし、歌詞の世界観がしっかりとあって、しかも物語になっているので、多くの人に共感してもらえるんじゃないかと期待しています。それに、自分でも歌っていて力をもらえるんですよ。すごくパワフルなので、1曲目に相応しい曲になりました。

加藤さんもご自身で歌詞を書かれるわけですが、ちなみに大事にしているのはどのようなことでしょうか?

昔は僕も言葉遊びなどをしていたんですが、自分の方向性としてはファンのみなさんと一緒に成長していきたいという想いがあるので、最近ではメッセージソングが増えましたね。僕は俳優としてデビューをして、音楽はそのあとから始めたものなので、シンガーとしての活動はゼロからのスタートだったんです。だからこそ、ファンのみなさんに本当に支えられていますし、一緒に歩んでいるという意識が強くて。それもあって“これからも一緒に進んでいこう!”というテーマのものが多くなりましたね。

「Hello」はまさにそういった想いが反映された歌詞になっていますね。

そうですね。僕は20代最初の頃まで、ほんと人と話すことが苦手で、インタビューでさえもできたらやりたくないと思っていたくらいなんです。ライヴのMCも何を話していいのか分からなくて、ライヴ前にメッセージを台本のように書いて覚えて、そのまま話してましたからね(苦笑)。それほど自分から発信することが苦手だったんですけど、役者やアーティストとして活動していく中で、自分が何かを発信したり、声をあげることって大事だと思うようになったんです。だから、“おはよう”とかの些細なことでいいので、自分から動き出すことが大事だということが言いたかったんです。

サウンドと相まって、すごくメッセージが強く入ってきました。

最初にサウンドを聴いた時、すごく前向きな印象を受けたんです。だからこそ、ネガティブな言葉はあまり入れたくなかったんですよね。でも、前向きな言葉だけだと深みがなくなるので、過去を振り返る意味で、バランスをとった歌詞に仕上げました。僕は自分自身にも言い聞かせる歌詞を書きたいので、数年経って聴き返した時に曲からエネルギーをもらうことがありますし、振り返って“あの頃の自分ってちゃんとしていたな”って思ったり…それが音楽の持つ力ですし、ちゃんと音楽に言葉が乗って届くように、分かりやすい言葉で書くことも心がけました。

過去に書いた歌詞で、今でも勇気づけられる曲はどの曲でしょうか?

「僕らの未来〜3月4日〜」(2007年4月発表のアルバム『Face』収録曲)は僕にとってすごく大事な曲になってますね。当時は地元の仲間に書いた曲だったんですよ。ひとりで上京して、みんなは前に進んでいるのに自分だけが前に進めていないという葛藤を描いているんですが、数年経った今、いろんな人とつながり、大切な人がたくさんできたからこそ、その頃の悔しさや寂しさがエネルギーとなって、今につながっているんだということを感じられるんです。

そういう意味では毎回歌詞を書いていくことは日記のようにもなるし、どこか良い気持ちの整理にもなっているのかもしれないですね。

そう思います。今作の「Shining Star」を書いた時も、ちょうど受験生の様子が報道されているニュースを観て、“今の光は弱いかもしれないけれど、誰もが輝ける星なんだ”ということを言いたいと思ったんです。これは今の自分だからこそ書けたものなので、これからもその時々に感じたことをしっかりとメッセージにしていきたいですね。

加藤さんもファンのみなさんから日々力をもらっていると思うのですが…

もちろんです! 常日頃励まされているので、本当に幸せを感じています。しかも、今は自粛の日々なので、そういう時こそ待っていてくれる人たちがいるということが心を温めてくれるんですよね。

そんな今って加藤さんはどのように時間を過ごしていらっしゃいますか?

今は自分と向き合う時間が増えたので、積極的に曲作りをしたり、ツアーに向けてのスタンバイをしたりしています。その中でもっといろんな人とコラボをしたり、リモートで演奏もしたいと思うようになりましたね。

コラボをしてみたい方はいらっしゃいますか?

ミュージカルをやっているので、そこでのつながりがある人たちと一緒に音楽をやりたいですね。とはいえ、アーティストにかかわらず、表現者の人たちとたくさんかかわっていいものを作っていきたいと思っています。

ミュージカル俳優の方々って、本当に横のつながりが濃いですよね。

濃いですね~(笑)。役者って“初めまして”の人たちが集まって、一緒に何カ月も過ごしてひとつの作品を作り上げていくんですね。そうなると、ほんと絆の深まり方がすごいんですよ。しかも、また再共演する機会も多いですし、みんな仲が良いんです。その絆を活かして、何かにつなげていきたいですね。

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