吉田一郎が語る、音楽家人生の始まり
からZAZEN BOYS期、ソロ最新作まで【
インタビュー新連載・匠の人】
当時、シンガーを探してたんです。要は自分の歌と楽曲制作に自信がなかったんでしょうね。それによってバンドでもメンバーを引っ張っていけず推進力を失って解散した感じだったので。だから7th FLOOR とか弾き語り系の人が出てるライブハウスに毎日当日券で入って、それっぽい人に片っ端から連絡先渡して「一緒にスタジオ入ろうよ」って言ってました。でもうまくいかなくて追い込まれて。
そこで、ベースを弾くことに関しては自信があったんで、ベーシストとして入れるバンドがないかなって思ったんです。そしたら今COCOBATでギターを弾いてる松澤世紀って男がいるんですけど、地元が近いっていうのもあって昔から知ってて、彼に「ZAZENのベースが辞めたから入ればいい」って言われて。でも彼はZAZENのメンバーと知り合いでもなんでもなくて、ただのファンなだけなんですけど(笑)。僕は当時ZAZENのことほぼ知らなかったんですが、自分の風体を考えるとなんかピンときて。それでとりあえず手紙書いて、音源とライブ映像も送って、合わせてみて、加入したんです。
ももクロは去年ライブに参加させてもらっただけですけど、50~60曲練習して。去年3ヵ月くらいももクロのことばっか考えたくらいで(笑)。ヒャダインさんの曲とか怒涛のスピードなんですよ。でもそれがちゃんとルーツミュージックを感じさせて、ちゃんとファンキーだったりニューウェービーだったりする。サポートやらせてもらうまでは1曲も知らなかったけど、今は単純にファンになっちゃって。ファンって親戚のおじさんみたいな感覚になるって言いますけど、そんな感覚もありながら(笑)、裏表が全然なくてかっこいい人たちなんですごく敬意を抱いてますね。でも去年の夏、ドレスコーズとTKとももクロのサポートの時期が割と近くて。何も考えずに、全部「やります」って答えてたらスケジュールいっぱいになっちゃってて。初めて腱鞘炎になりましたね(笑)。
そこで自分が何に向いてるか見定めなきゃなって考えてたんです。やっぱり音楽やりたいなって思って、高校半分くらい行かなくてずっと楽器弾いてて。日に日に技術を身に着けていく中で、ナルシズムとか自己肯定ではなく客観的に自分を見たときに、これを磨き続けてそこにお金が発生するっていうのは無理な話じゃないなっていう確信は高校3年生の夏休みに持ったんですね。
でも20代はずっと自分の歌詞が一言一句気に入らなくて。書けども書けどもダメで。30過ぎて、いい加減かっこつけてもしょうがないしって思えたんでしょうね。曲のアレンジも、中学からためてた曲にアレンジを研鑽し過ぎてよくわかんなくなってて。でも『あぱんだ』は出したくてしょうがなかったんです。ZAZENにいながらも、ずっとソワソワしてて。それで「誰も聴いてくれないかもしれないけど、30代になったし、もういいや」って感じで出した。そしたら思いのほか評判が良くて、いまだにふわふわした夢の中の感じもあるんです。
だから、自分の作品が人に良いよねって言ってもらえた手応えは『あぱんだ』出したときなんで、20年かかってますよね(笑)。『あぱんだ』出して、宮藤官九郎さんとリハスタでばったりお会いしたときに、「一郎君CD聴いたよ! あんな曲作るんだねえ」って言ってくれたんです。それで、「意外と良い!」ってゲラゲラ笑ってたんですけど、俺自身「意外と良い」って言葉がすごくしっくりきて。お客さんも「一郎の曲意外と良いな」って反応してくれて。
■ソロをやってなかったら生まれなかった出会いで進化できた
技術的な部分もやっぱり大きくて。演奏技術っていうより機材ですね。『あぱんだ』出した後に出会った人でいうと、水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミが作るトラックってすごいと思うんですよ。なんであんなに垢抜けてる感じにできるんだろうって。何をやってもすごいキャッチーだし。去年彼が久しぶりにソロアルバムを出して、それがめちゃくちゃいいんですよ。グラミー賞とかで流れてても全然違和感ないやっていうか。ケンモチ君とは、コムアイから連絡きて対バンしようってなって知り合えたんですけど。ソロやってなかったら生まれなかった出会いで。
「どういう機材使ってるの?」とか当然訊くわけですよ。だから、このケンモチ君から教えてもらった機材買って使ってみたら超良かったみたいな現実的な話ですね。音楽作るって、すごく現実的なものでもあって。僕は上っ面だけ見ちゃう人間で、「この機材、置いてるだけであまり意味ないんでしょう」とか思っちゃうひねくれたガキだったんですけど、歳を取るごとに純粋に情報が入るようになって。それで知り合いのミュージシャンが教えてくれることも素直に聞けるようになったんですね。だから『あぱんだ』と『えぴせし』の大きく違うところって、自分が調べたものももちろんありますけど、教えてもらった情報で進化できたっていう、すごく現実的な違いがありますね。
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