新国立劇場バレエ団の配信「巣ごもり
シアター」~名演『マノン』と懐かし
さ満載『ドン・キホーテ』の見どころ
を紹介
■米沢&ムンタギロフ、魂のぶつかり合いが生み出すドラマに注目
『マノン』は英国を代表する振付家、ケネス・マクミランによる作品で、1974年に英国ロイヤルバレエ団で初演されて以来、パリ・オペラ座など、世界の名だたるバレエ団がレパートリーとして取り入れている。原作はフランスのファム・ファタル文学の先駆けとされるアヴェ・プレヴォの小説『マノン・レスコー』で、美少女マノンと、彼女への愛ゆえに破滅していく神学生デ・グリューを中心に、人間の抱く愛や欲の姿が赤裸々に描かれる。バレエとは「蝶よ花よ」といった、おとぎ話やファンタジーの世界だと、そう思っている人達にとっては認識が180度変わるであろう作品で、またダンサーには演技力……というよりは舞台となる18世紀フランスで「生きる」ことが要求される難物だ。だからこそそこに描き出されるドラマは生々しく深く重く、観る者の心に深い印象を刻みつける。
ちなみに『マノン』の舞台は18世紀のフランスで、時の王はルイ15世。彼の時代はヴェルイユ宮殿など華麗な文化を築き上げた太陽王ルイ14世と、その時代の浪費・散財が遠因となり、結果的に革命の露と消えゆくルイ16世の、その間にあたる。この時代、ルイ15世の宮廷では王侯貴族を中心に華麗なロココ文化が花開く一方、国民は明日の糧を得るため物乞いや娼婦に身をやつすなど、華麗な文化の代償ともいえる貧富の格差はいよいよ広がっていた。また3幕で登場するルイジアナはルイ14世の名にちなんで名づけられたフランスのアメリカ植民地のひとつで、流刑囚や孤児が送り込まれたほか、喰い詰めて海を渡った者もおり、また本国の目が届かぬことをいいことにやりたい放題の役人もいるなど、ここにも掃き出された人間の巣窟があった。『マノン』には、こうした明日をも知れぬ日々をなりふり構わず生き抜こうとする人々の姿が投影されているので、こうした時代背景もぜひ頭の片隅に留めておくと、より世界観が深まること請け合いである。
■登場人物が盛りだくさん! 懐かしい顔ぶれも味わい深い『ドン・キホーテ』
8日から配信される『ドン・キホーテ』はセルバンテスの同名の小説を原作としたバレエ。憧れのドルネシア姫を求めお供のサンチョ・パンサを連れて旅に出た誇り高き妄想の騎士、ドン・キホーテが、バルセロナの町で出会った町娘のキトリと床屋のバジルのカップルらと繰り広げるコメディだ。古典バレエの王道ともいえる作品で、物語は単純明快。バレエのテクニック的にも超絶技巧が次々と登場するなど、初めて古典バレエを見る人にはぜひおすすめしたい作品のひとつだ。
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