表現者として腹をくくった。阿部真央
が語る11年目の決意
リード曲は「お前が求める私なんて全部壊してやる」。『まだいけます』は阿部真央の言いたいことが集約されたアルバムだ。それはつまり、彼女が「言いたいこと」を曝け出せるくらいアーティストとして脱皮を果たしたということでもある。本人の言葉を借りるなら、「いい子ぶらなくてもいっか!」ということだ。高いプロ意識の裏返しが固定観念に繋がっていたとも言える彼女だが、デビュー10周年となった昨年に大きな心境の変化があったという。「表現者としてようやくスタートラインに立てた」という彼女に、ありのままの心境を語ってもらった。
2018年の末から2019年の1年間は明るい曲のリリースが多かったので、次に出すアルバムは暗くしたいと思ってて。私はどうしても1個前にできたイメージを壊したくなっちゃうんですよね。自分の中にある影の部分に焦点を当てたような曲を前に出す作品にしたいと思ってました。
ーそれで「dark side」というタイトルを1曲目に持ってきたと。
そう。そしてデビュー10周年イヤーだった去年は変化の年で、自分自身に制約を課すのはやめようと思ったんです。
ー制約?
これまでは「ここまでのパフォーマンスをやると引かれちゃうだろう」とか、「辛辣なことを言って後で色々言われるのも嫌だな」とか、そういう事を考えちゃうタイプで。私は昔からずっとそうなんですけど、いい人に見られたいとか、人から不適合者に思われたくないという気持ちが凄く強いんですよ。心底自信がない人間だから、失敗しないようにするんですよね。恥かかないように。
ーなるほど。
今だったら母親としておかしくないようにしたいとか、ライヴでも曲順間違えないように、歌詞を飛ばさないように、音程もちゃんとしてコンディションを整えて、ギターも間違えないようにしなきゃとか、そういうことを1個1個を凄く考え過ぎちゃう。クソ真面目なんです。で、そのクソ真面目なところに縛られて、どんどん固定観念に捕らわれていく。そういう息苦しさは音楽を続ければ続けるほどありました。
ーそれが去年から解放された?
そう。去年の1年間は色々なライヴをして、イベントに出させてもらう中で、そんないい子ぶらなくていっか!って思えるようになった。クソ真面目な自分を壊さないといけない、もっと自分に自信を持って素直に発信できるようになりたいと思った。
ー何かきっかけはあったんですか。
いや、これといういきっかけはなくて。単純に1回ガッチガチにして、熱さを持たせないと割れなかった感じだと思う。だから10年やってきた自信が後押ししてくれたのもありますね。それで「リミッターを外したい」という言い方をしていたんですけど、表現者として腹を括ったのが去年の秋頃にやった弾き語りツアーが終わる頃で。それから『まだいけます』の制作に入ったので、その腹の決まった感じがそのまま反映されているところがあります。個人的に物凄く満足しているアルバムになりましたね。
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