【家入レオ インタビュー】
未完成な私だからこそ、
今、これが書けた
家入レオ
“未完成”であることの危うさと、そこにある尊さ。琴線を掻きむしられるような言葉の紡ぎと声に胸がグッと締め付けられるニューシングル「未完成」。家入レオの“今”のリアルが響き渡る、まさに全身全霊を込めた楽曲だ。
私が愛してきた全ての人に
投げ付けた一曲だと思う
ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』主題歌でもある「未完成」は、シングルとしては1年振りのリリースとなりますが、どのような心持ち、姿勢で制作に臨んだのでしょうか?
今回のシングルのリリースに向けては夏から制作に入ってて、ずっと曲を作り続けていたんですけど、その制作期間の中で自分の人生も展開していくわけじゃないですか。だから、早い段階で主題歌になる曲が決まっていたら、この「未完成」はできなかったと思うんです。自分的に大きなターニングポイントを迎えたからこそ…何が書きたいのか分からないんだけど、“歌いたい”“書きたい”っていう欲求が強く生まれた中でできた曲だったから、何かが迸っているし、あふれ出てているし、ほんと“未完成”というタイトルが相応しい作品が作れたと思っています。
今、おっしゃった“ターニングポイント”というのは?
2019年はいろんなことがありました。苦しかったことにも、嬉しかったことにも、“あなたはあなた自身で生きなさい”というメッセージが宿っていて。私は10代で社会に出て、反射で生きてきた…そうしないと日々に追い付いていけなかったんですね。“これをやるかやらないか、この場で決めて”っていう、その判断をすぐにすることで日常が回ってたし、それをベースに今まで生きてきた。そんな私に“ちょっと考えたい”って言っていいし、悲しい時は“助けて”って言えばいいって、やさしさを教えてくれた人がいて。“泣くことが悪いって誰が言ったの?”って。だけど、私はタイム感を大事に生きていたから、最初はどうしていいか分らなくて、そのやさしさが痛みになっちゃって…。でも、ちょっと時間が経った時、“あっ、あれって最大限の愛だったんだ”と思って、ひとりで頑張ることをやめたんです。それがすごく大きかった。魂の土台が完成して、“自分”で生きていく覚悟ができました。
「未完成」を聴いているとレオさんを見ている気がして。真っ直ぐで、でも、ちょっと危うくて。いろいろな細かい粒子で形作られている人みたいな。
…私ですね。ほんとにそうだと思います。ラブソングで“あなたに幸せになってほしい”と結論だけを言っているものも、それはそれで美しいと思うんですよ。でも、私は“会えて良かった”というひと言に辿り着く前に、“ねぇ、こんなに苦しかったよ”や“こんなに悲しかったんだよ”っていう…それは相手を傷付けているようでいて愛の告白なんです、私からすると。裏切られたと思うのは、それだけ相手に期待していたということだし。これから生きていく上で、私の中に一生残るのは“会えて良かった”という気持ちなんですけど、そこに辿り着く前には相手を憎む過程や自分に対する後悔があるわけで。気持ちを整理するって、美しいことばかりじゃないですよね。そういう未完成な自分だからこそ、これが書けたと思います。未完成な自分を隠そうとするのは狡いことであって、弱いところなんだけど、それを剥き出しにすることが生きていくことだと思うし。…うん、すごくいい作品ができたと思いますね。
この純度の高さがちょっと怖かったりしますけどね。
それはありますね。スタッフさんに“レオさんは情熱の人だと思います”って言われた時、しっくりきたんです。自分は相手の肩をトントンって叩いているだけなのに、相手からすると、まるで地球を抱きしめるてくるくらいの…(笑)。なんかね、どうしても愛のコントロールができないんですよ。
歌詞ですが、ラストに行き着くまでの過程が濃くて。しかも、普通のストーリーじゃないから、すごくいろいろなことを考えさせられます。
そうなんですよね。“これはストーリーとして破綻しているよ”って言われるかもしれないけど、恋愛の愛も親に対する愛も普遍的な愛に対する想いも全部背負ってる曲なんです。私が愛してきた全ての人に投げ付けた一曲だと思います。しかも、“君”と“僕”が場面場面で違うんですよ。人格も3秒ごとに変わっていくし。はちゃめちゃで時系列が合ってないんだけど、根底にあるのは全部愛っていう。
この“君”と“僕”は自分に欠けているものを相手に求めていたりもするんでしょうか? それでお互いが満たされるような。
私の感覚だと“類は友を呼ぶ”で。だから、外側はそうなんですよね。自分にないものを持っていると思うから好きになる。だけど、蓋を開けてみたら、自分と同じ未完成な相手の心があったっていう。
あと、すごく切迫感もあって。
今までは感情を剥き出しにしているようで、どこかに俯瞰で見ている自分がいたんです。でも、「未完成」は“今の私はこう!”っていう感じというか。目の前で展開される出来事を、目を見開いて自分に刻み付けることだけで精いっぱいっていうスピード感はあるかもしれないです。
コーラスやフェイクの使い方も含めて、歌唱法がまた新しい境地に行った気がします。
冷静な自分…外に出している自分と内側の自分の落差が激しすぎて。ここ(とフェイクの一部を口ずさむ)とかは、外でにっこりとして“私、何も動じてません”みたいな。でも、内側を覗いて見たら渦巻いている感情がある。この曲はどこをとっても矛盾がありますね。だからこそ、“いろんなことがあったけど、全部音楽にしていいんだ。音楽があって良かった”と思いました。これからも新しい挑戦をいろいろとしていくと思いますけど、“私は何度も音楽に戻ってくるんだな”って思ってます。
これを言うと嫌がるかもしれないですが…やはり宿命みたいなものを感じます。
あー、私もそう思います。それをやっと認められました。なので、自分が思った道を正々堂々と、当たり前に歩いて行こうと思ってます。
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