【ももすももす ライヴレポート】
『ももすももす「木馬」
購入者特典ライブ』
2019年4月28日 at Future SEVEN

2019年4月28日 at Future SEVEN

 2019年2月にメジャーデビューシングル「木馬」をリリースしたももすももすが、同作の購入者特典としてFuture SEVENで発売記念ライヴを開催。今回は招待制だったが、ももすももすにとって初のワンマンライヴであり、開演が近づくと待ちわびるファンに向けて“素晴らしいひと時にすることをここに約束する”と本人からのアナウンスが流れ、普段のライヴとは違った特別感があった。

 ももすももすは切ない想いや願いを歌にしながらも、どこか淡泊で文学的な歌詞や謎めいた雰囲気がファンを惹き付けていた。しかし、この日はそんな淡泊さを感じることはなく、初っ端から痛快なロックを堂々と響かせ、「サボテン」でギターソロを披露したり、《声に出せなかったさよなら》と歌う「桜の刺繍」のエモーショナルなサビでは、彼女が声を張れば張るほど胸が締め付けられる。これまで印象付いていたちょっぴり不思議なムードが漂う“ももすももす”は姿を消し、“一体その心に何を秘めているのだろう?”と興味を引くくらいに、何かを取っ払ったかのような力強いパフォーマンスで観る者を魅了した。

 かと思えば、“あードキドキした”とこぼしてゆるりとMCへ。この日は“嬉しいとありがとうで心があふれている”と何度もその気持ちを口にしていて、デビューシングルをリリースして3カ月が経つ今だからこそ、その実感があったり、ファンに楽曲が届けられる喜びに満ちていたのだろう。シングルのリリース記念を掲げたライヴだったが、冒頭の2曲で歪んだギターをかき鳴らした通り、彼女はもう次のステップへと進んでいることが伝わった。

 はっきりと要約ができないからこそ、リスナーが自分自身と向き合うことができる彼女の音楽。「Confession」を聴くと後悔にも似た悲しい気持ちでいっぱいになったり、その時の自分によって愛情にも儚さにも希望にも受け取れるのが魅力のひとつだ。聴いた時に感じた気持ちこそが大切なものなのだと気付かせてくれる。

 デビュー曲の「木馬」には身も心も軽やかにしてくれる癒しがあり、今回のライヴの要となる一曲を観客を見つめながらしっかりと届けた。たった3カ月の月日と言えど、今作をリリースしてからファンとの距離感も徐々に縮まっているように思う。自身のデビュー日に購入したという鍵盤で華やかなメロディーを鳴らす「ハネムーン」は、幸福感もあって新鮮な印象をもたらし、これからひとつひとつ彼女の新たな一面を知ることへの期待が高まる。幸せな気持ちや孤独感、憂い、悔しさなど、さまざまな感情がどれも美しいものだと感じさせる楽曲たちはやっぱり芸術そのものだ。

 アンコールではデビュー発表時に公開した「うさぎの耳」を披露。初めてこの曲を聴いた時には“どんなアーティストなのだろう?”という疑問でいっぱいだったことを思い出す。彼女がこれからどの景色をどんな色で描いていくのか、あの時の疑問が今は楽しみに変わっている。

撮影:乙羽/取材:千々和香苗



セットリスト

  1. 1. サボテン
  2. 2. 桜の刺繍
  3. 3. Confession
  4. 4. 海と傷口
  5. 5. シャボン
  6. 6. 木馬
  7. 7. ハネムーン
  8. 8. 隕石
  9. <ENCORE>
  10. うさぎの耳

ももすももす

モモスモモス:2015年よりロックバンド・メランコリック写楽の作詞作曲を手がけ、ヴォーカル&ギター“ももす”として活動。18年より“ももすももす”としてソロ活動を開始。中毒性の高いハイトーンヴォイスと純文学の影響を受けたユニークな言葉遣い、そして絵画のように奥深く、予測不能なメロディーの渦を宅録から世界へ発信している。19年2月にはシングル「木馬」でメジャーデビュー、20年3月には1stアルバム『彗星吟遊』を発表。23年2月にソニー・ミュージックレーベルズ移籍第一弾シングル「エソア」をリリース。その後も配信シングルを2曲、CDシングルを1枚発表し、11月に移籍後初となるアルバム『白猫浪漫』をリリース。12月にはワンマンライヴ『黒猫会議』を開催する。

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