ももすももす

ももすももす

【ももすももす インタビュー】
ぼんやりと、
なんとなく分かるっていうのが
一番理想的かもしれない

MBSドラマ特区『どうせもう逃げられない』のエンディング主題歌として書き下ろした配信シングル「サーモクライン」は、ももすももすにとって“絶対に手離せない手紙みたいな曲”に仕上がった。自宅で黙々と楽曲制作をする中、どんな心の動きを経て同曲が完成したのだろうか。

自分の声を残すことで
私自身も支えられている

昨年3月にリリースされたアルバム『彗星吟遊』以来のインタビューですが、この一年半、どんな気持ちで過ごしていましたか?

猫を飼い始めたので、ずっと猫と一緒にいて(笑)。曲を作る時も外に出ず、家で作業することばかりでした。昨年からライヴを一切しなくなったので、一回もギターをアンプにつなげていないんです。大きい声で歌えなくなった寂しさもずっとあるし、ライヴは自分の曲に需要があるかどうかを確認できる場でもあったんだなと思いました。ひとりだと楽器のアンサンブルで曲を作ることができないので、聴こえる音だけで組み立てていて。なんとか今は自分なりに寂しい気持ちを解消する方法を見つけて、一生懸命生きているところです。

どんなきっかけがあって前向きになれたんですか?

身近な人が亡くなってしまう悲しい出来事があって。自分自身も入院したり、精神的にすごく落ち込んだ時期があったんですけど、その時に人生は儚いということをかなり身に染みて感じて、それから今ある命を限りなく使い果たそうと思うようになりました。自分がショックを受けたことって、他の人にとっては何でもないことだったりするじゃないですか。私は音楽という仕事をやっているからこそ、そのショックを曲に落とし込んで、誰かに染み渡るものを作っていきたいと思ったんです。

昨年からももすさんが自作したMVがたくさんありますね。イラスト動画でYouTubeにアップされている「ベルガモットとドラゴンアイ」は、どんどん孤独になるほうへ潜っていくような曲でした。

コロナ禍になってから自分の気持ちを書いた曲なんですけど、全然広まっていないんですよね(笑)。自分では結構気に入っていて、昔の画家が習作としてデッサンを描いているのに近い感覚で曲をアップしています。自分で動画を作り始めてから表現の幅が広がっている気はするんですけど、その反面で心がすり減っていくのも感じているので、しばらくは音楽に徹しようかなって(笑)。

ライヴがないとはいえ、別の部分でたくさん頭を使っていたんですね。

はい。人に会えなかったので、ひたすら家の中で創作するしか自分の生きる術がなくて。音楽と動画を作ることで自分が救われていたと思いますし、それは今もそうかもしれないです。

今年6月にアップされた「夏至のツンドラ」のMVは自宅で撮影された実写だったので、これを観た時には伸び伸びと過ごせているのかなと思いました。

曲やMVを作るのが生き甲斐になってきて、一日中撮影をしては編集しての繰り返しだったんです。曲も自分で録音していたから結構大変だったんですけど、それが自分にとって“これをやらなきゃ死んじゃう!”みたいな呼吸に近い感じになっていました。

家の中で曲を作るようになってどんな変化がありましたか?

以前よりもいろんな音を収集するようになりました。まったく使わなさそうな音も集めちゃっているけど、それはいいことだと思っています。今までは規則に縛られて作っていたことに気がついて、“もっと自由に作ろう!”って。

自由なほうが居心地良さそうに見えます。

そうです! 何事にも縛られたくないタイプなんです。“一日は24時間で、25時間にも23時間にもならない。本当は自分で単位を決めてもいいのに!”って気持ち悪いことを考えたりもします(笑)。でも、自由に曲を作ろうと思えるのは今の環境のおかげでしかないので、感謝の気持ちを忘れないでやっていこうと思っています。

あと、YouTubeには“ももすももすの豚バラジオ”と題して、ももすさんが気ままにおしゃべりをする番組もアップされていて、とても楽しそうだなと思っていました。冒頭で“ここから先を聴いても何のためにもなりません”と話している回もありますが(笑)。

本当に気が向いた時にやっているだけの無価値なラジオなので(笑)。私は“この世に肉声を残したい”という気持ちが人一倍強いんです。三島由紀夫さんがラジオで話しているのをよく聴くんですけど、喋り方に人柄が出ていて面白いので、私も残していこうと思って。

話し方もひとつの表現ですからね。

はい。身体を残すことはできないけど、声は残りますからね。私がいつか息絶えた時、私の声を聴いて喜んでくれたり、ホッとしてくれる人が世の中にいたらいいなって。それが支えになることがあるかもしれないし、今こうして声を残すことで私自身も支えられているので。

人生の儚さを痛感しても、この先ずっと残るものを作っていることがももすさんの糧になっているのかもしれませんね。音楽もそんな感覚ですか?

音楽に関しては“絶対に作らなければいけない”という使命感があります。そう思うようになったのはメジャーデビューしてからです。周りの人への感謝と、もらっている愛情と、自分が贈りたい愛情、何よりメジャーデビューをしてもついてきてくれるファンの方がいるってことが大きくて、その方たちを支える曲を作りたいんです。

使命感とはいえ追われているのではなく、ももすさんの生命力になっている?

かなりなっています!
ももすももす
配信シングル「サーモクライン」

OKMusic編集部

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