【vivid undress インタビュー】
“今の私たちはこれだ!”
という気持ちで作りました

L→R syunn(Ba)、kiila(Vo)、rio(Key)、yu-ya(Gu)

テクニカルなポップロックサウンドで人気を伸ばしてきたvivid undressがドラマーの脱退という危機を乗り越え、4thミニアルバム『赤裸々』をリリース。そのタイトルには自分たちらしさを改めて打ち出すという意味も込められているようだ。

vivid undress(以下ヴィヴィアン)はどんなふうに始まったのでしょうか? 結成は2014年だそうですね。

kiila

はい。それまで私はシンガーソングライターとしてソロ活動をしていたんですけど、音楽を辞めようと思ってたんです。その時、とあるライヴハウスのブッキングの方が“俺が協力するから続けてみないか”と言って、メンバーを集めてくれて。最初はバックバンドというかたちでやってもらってたんですけど、思いの外波長が合ったので、そのままバンドになりました。

“音楽を辞めようと思っていた”とおっしゃいましたが、何があったのでしょうか?

kiila

なかなか上手くいかなくて、曲作りも行き詰まってしまって。向いていないと思ったんです。

でも、そのライヴハウスの方は辞めたらもったいないと思ったわけですよね。

kiila

“お前は絶対に辞めちゃいけない”と言って、まずyu-yaを紹介してくれて、そしたらyu-yaがsyunnちゃんを連れてきてくれました。それで初期メンバーだった前の前のドラムがrioさんを連れてきてくれたんです。

yu-ya

そのライヴハウスの方から“1回、kiilaのライヴを観に来てほしい”と誘われて観に行ったんですよ。歌声を聴いた瞬間、すごい人だと思いました。“良かったら彼女のバックで弾いてみないか”と言われて、その場で“ぜひやりたいです”って答えました。

そして、syunnさんを誘ったと。

syunn

その当時、yu-yaは別のバンドをやっていて自分も別のバンドをやっていたんですけど、同い歳ってこともあって仲が良くて、前から“何か一緒にやれたらいいね”と話してたんですよ。だから、yu-yaと一緒にやりたかったというのもあるんですけど、最初にスタジオで合わせた時、kiilaの歌声がいいと思って。

rio

自分はみんなとは違うフィールドでバンドをやっていたんですよ。ちょっと怖めのライヴハウスで、アンダーグラウンドというかハードコアというか。

rioさんが?

rio

そうなんですよ(笑)。“バックバンドとしてやってみないか”と誘われたので、“うん、やってみる”って軽い気持ちだったんですけど、加わったのが一番遅かったせいか、もうプロジェクトが進んでいて。いきなりレコーディングの現場に呼ばれて、“ピアノを入れてみてくれない?”って(笑)。でも、そこで“みんな音楽で会話ができる人だな”って感じたんですよね。自分はみんなよりもちょっと年上なんですけど、この人たちに教えてもらうことがいっぱいありそうというか。

kiilaさんは最初にメンバーを集めた時に、どんな音楽をやりたいと考えていたのですか?

kiila

何も考えてなかったです。ただ、アーティストとしての命をつないでもらったという感覚で。本当に私は歌いたかっただけなので、特にそこまで何がしたいというのはなかったんです。その後、マネージメントもすぐに決まって、大人が周りに増えたのも早かったので、最初は言われたことに対して応えるということが多かったですね。歌詞は自分で書いていましたけど、特に大きな野望はなかったです。

では、抜けてしまったドラマーも含め、5人で活動しながらヴィヴィアンのサウンドを徐々に作り上げていったと?

kiila

メンバーを集めてくれたライヴハウスの方が、プロデューサーというかたちでプロジェクトに関わってくれてたんですよ。その後、それまで協力してくれてた人たちから離れて自主でやるようになったんですけど、そこからですね。本当の意味で自分たちでやり始めたのは。

3枚目のミニアルバムの『ENDLESS』から?

kiila

そうです。それ以前はいろいろな人たちの意見が入ってたんですけど。

『ENDLESS』からサウンドも変わったのでしょうか?

kiila

変わったところもあるし、変わっていないところもあるし…それよりも気持ちが大きく変わりました。ファンの方たちに支えてもらっているってことを、自分たちでやり始めて初めて実感したんです。やっとみんなの顔が見えるようになって、そこに対して音楽をやるようになりました。

ところで、この4人は音楽的なバックグラウンドは共通しているのですか?

kiila

私は違うと思ってます(笑)。ポップミュージックが好きという共通点もあるんですけど、もっともっと掘ってみると、私はダンスミュージックがめっちゃ好きだし、syunnちゃんはマイケル・ジャクソンが好きだし。

syunn

R&B系の音楽が好きですね。

あぁ、なるほど。

syunn

yu-yaはまた違うよね。

kiila

重い系だよね。メタルとか。

yu-ya

ラウドロックですね。

rioさんは?

rio

何でしょうね(笑)。うちはお母さんがピアノの先生だったんですよ。だから、クラシックを嫌々弾かされつつ、もともとはギターをやっていたんです。その時に青春パンクのブームに乗って、一度“おデビュー”をしたんですね。髪形をモヒカンにして(笑)。だから、もう自分がよく分からない(笑)。

それぞれのバックグラウンドが入り混じってヴィヴィアンのサウンドを作っているのだと、今お話を聞きながら思いました。

kiila

よくyu-yaが“ケミストリーしたい”って言ってたよね。

yu-ya

そうですね。融合というか、ケミストリーした曲を作りたいねって。

rio

それに対する応用力がみんなにあるんですよ。“これしかやらない”ではなくて、曲作りにおいてはあまり否定をしないので、それぞれがいろいろな経験をしてから集まったのは良かったと思いますね。それぞれに培ったものがあるんですよ。

さっきおっしゃったように、前作の『ENDLESS』から自主レーベルを立ち上げてライヴの集客も伸ばしてきたところで、2018年3月にドラムのウツミさんが脱退してしまったのはバンドにとって痛手だったと思うのですが。

kiila

そうですね。“続けられるのかな?”と思ったくらい。もともと自主でやろうっていうのは、ウツミのアイデアだったんです。正直、この4人だけだったらマネージメントから離れた時点で終わってたんじゃないかな。私たちはただ音楽をやっていただけだったので、バンドを動かしてくれていた人が辞めてしまって“どうしよう!?”ってなったんですけど、なんとか建て直して。

syunn

音楽だけだったらできると思うんですけど、自主でやるにあたって、その時は裏方の仕事をウツミに任せていたのでそういうところが分からなかったし、本当にできるのかっていう不安もありましたね。でも、rioさんがそういうところを請け負ってくれて。

rio

もう、ただの事務おじさんですよ(笑)。もともとウツミは頭が切れて、自分で考えたアイデアを実現する行動力もあったんですけど、ウツミがいる頃から手伝えることは手伝っていたので、改めてウツミからひとつずつ学んでいきました。本当はやりたくないし、音楽に専念したいですよ。でも、バンドを動かすノウハウを知れば知るほど音楽業界の仕組みも分かってくるし、関わる人たちがどれだけ力添えしてくれているかも分かるので、やり甲斐を感じながら事務に日々勤しんでいますね(笑)。

そこで辞めようと思わなかったのは、なぜだったんですか?

kiila

ウツミが脱退する日がヴィヴィアンにとって初のワンマンライヴだったんですよ。その時、自分たちのためだけに集まってくれたお客さんが喜んでいるのを観て、“もともと私がひとりで始めたことがここまで来たんだ”と思ったら辞められないというか…もっと恩返ししなきゃいけないと思ったんです。

ということは、今回の『赤裸々』という作品は、これまで以上にみなさんのいろいろな想いが詰まったものになったのではないでしょうか?

kiila

毎回想いを最大限に詰め込んでいるんですけど、より曝け出した感はありますね。

だからこそ“赤裸々”だと。

kiila

吹っ切れたというか、ちょっと遠慮していた部分も全部取り払ったというか。人の目なんか気にせず、“今の私たちはこれだ!”みたいな気持ちで作りました。

曝け出したというのは歌詞の面ですか?

kiila

そうですね。嘘偽りなく、カッコ付けずに。私は結構斜に構えたバンドだと思っていて、自分でやっているバンドなのに自分でやっていないみたいな感覚もあったんですよ。でも、今回の作品は今の自分たちをちゃんと出せていると思いました。

遠慮していたというのは…。

kiila

遠慮していたというか、“こうしたほうがウケがいいかな?”ってちょっと狙ってやっていたところもあったんですけど、それも全部なしにしたんです。

どんな作品にしたいと考えたんですか?

rio

それよりも、ただ曲を作らなきゃいけないというか…4人で活動していくにあたって未来を切り開くのは曲だと思ったんです。でも、曲ができなくて。どの曲も難産でしたね。

kiila

“全曲シングルにできるぐらいの曲”というのは考えてたかもしれないです。

syunn

その中でやっと1曲目の「スクランブル」が出来上がって。

kiila

「スクランブル」はrioさんが持ってきたんだよね。

rio

うちらの癖なんですけど、詰め込みすぎちゃうんですよ。でも、それって聴く側にとってはどうなんだろうって考えることも多くて。たとえば、ライヴで1回聴いただけで帰りに口ずさめる感覚って大事だと思うんですよね。そういった考えでこの曲を料理したらどうなるんだろうと思って。しかも、ありがたいことにこの曲だけサウンドプロデュースをしてもらえる方に巡り会えまして、その方の意見も汲み取りながら一緒に制作することができたんですよ。だから、その中で得るものや新しい感覚もあって、うちらとしても今までにないような新鮮な手応えがあるんですよ。

今回、6曲中3曲(「盲目の世界から脱出せよ」「劣等者の逆襲」「輪廻転生」)を提供しているyu-yaさんは曲作りを振り返っていかがですか?

yu-ya

死にましたね(笑)。前作を超えるものを作りたいという気持ちはメンバー全員に共通してあったんですよ。何を超えるかは漠然としていたんですけど…kiilaが言ったように、全曲シングルになるっていうのもそのひとつだと思うんです。ただ、その“シングルになる曲”ってどんな曲なんだろうって。それを考えて考えて、曲ができても“これは駄目だ”ってなったりもしたんですけど(笑)、今回収録された3曲は前作までのヴィヴィアンをブラッシュアップするということを意識しながら作ったんです。そこの部分では、俺は前作を超えられたと思っています。

kiila

他にもいっぱい候補曲があったんですけど、そこから選りすぐった6曲なんです。

シニカルなところもある歌詞は全曲kiilaさんが書いていますが、強い言葉を使いながら、それぞれにちゃんと言いたいことがあるということが伝わってきます。歌詞を書く上ではどんなことを意識していたのでしょうか?

kiila

それが、あまり記憶がなくて…。

rio

トランス状態だったよね(笑)。

kiila

私も瀕死状態でした(笑)。とにかく必死でしたね。

じゃあ、心の底で思っていることが言葉として出てきたと?

kiila

現状を書きたかったのかなと思います。

聴きながら、結構悔しい想いをしてきたのかなと想像しましたが。

kiila

そうですね。挫折ばかりでしたね。上手くいかないことが多かったんです。自分はこうしたいのに、そうならないということが。

とは言え、単に想いを綴っただけではなく、それぞれにいろいろな手法を駆使しながら歌詞を書いている。たとえば、4曲目の「輪廻転生」が寓話風だったり。

kiila

2018年は周りのバンドの活動休止や解散が多くて。今までそういうことがあってもわりと人事だったんですけど、仲良くしていたバンドがたくさんいなくなって、才能がある人たちが消えていくことが残念だという気持ちを書いたんです。すごく才能があって、いろいろなことをやろうとしても、周りに潰されちゃったりするような状況を物語風に書いてみました。

5曲目の「アルティメット・サバイバル」は、ある意味挑戦的ですね。

kiila

この時が一番ヤバかったんですよ(笑)。追い詰められて、どんなに頑張っても無理なものは無理って感じだったので、歌ったり聴いたり、気持ち良いことを優先しながら、その時の精神状態を書きました。《美味しいもん食べよ》なんて、まさにそうですね(笑)。

rio

でも、“何だろう? このはまり具合は”と思いました。この曲は自分が作ったんですけど、歌詞が不思議とはまってる。

kiila

その曲が一番、書いていて楽しかったですね。

syunn

そこも含め、正直な気持ちが表れている。だから、タイトルを決める時も“赤裸々”が一番合っていると思いました。

yu-ya

レコーディングしている時は曲のことで精いっぱいで歌詞にまで頭が回らなかったんですけど、出来上がってから聴いたら泣けてしまって。

kiila

yu-yaから急にLINEが来て、“めっちゃいいね”ってすごく褒めてくれたんです(笑)。

yu-ya

「輪廻転生」の歌詞が本当に好きで。夜通し歌詞を読みながら、ずっと染みてたんです(笑)。

rio

怖いな(笑)。でも、歌詞に初期衝動的なものが感じられますね。5年やってきて、円熟してくる中で、それを出せたっていうのはひとつの成果だと思います。

演奏に関してはどんなアプローチで?

syunn

毎回心掛けているのは、yu-yaが言う“全員のケミストリー”。だから、もちろん曲に合ったフレーズを考えるんですけど、自分らしさを出すことに関しては譲らないように各々意識していると思います。その中で引き算したり足し算したり、みんなで話し合いながら作っていきました。

yu-ya

全部の楽器が上手いことはまっていってケミストリーするみたいなね。

rio

キーボードはどうしてもみんなのフレーズが固まった上に乗せるという順番なので、曲によっては隙間を狙ってリフを入れたり、印象付けることを考えました。そこだけキラッとすればいいという考え方ですね。ピアノしかやってなかったから、実は前々作ぐらいまでシンセを使うことに抵抗があったんですけど、前作で意外性を意識して当ててみたら良かったので、今回はそれをさらに大胆にやってみました。中でも「アルティメット・サバイバル」はひとつの挑戦でしたね。こんなに派手していいんだろうかと思ったんですけど、逆にド派手さが面白くて。

改めて、どんな作品になったという手応えがありますか?

kiila

6曲が6曲ともしっかり自信のある曲になったんですけど、歌詞的にはものすごく曝け出しているので、どう受け止められるんだろうって、ちょっとだけ怖い部分もあります。だから、聴いた人の反応が早く知りたいです(笑)。

syunn

正直、録っている時はちょっと不安もあったんですよ。

yu-ya

これまでプリプロをしっかりやってきたバンドだったんですけど、今回はそこまでしっかりできなかったんですよね。

rio

全曲のサポートドラマーが違ったこともあって難しい部分もありましたし。

yu-ya

でも、録ってみたら、やっぱり間違いなかったです。

rio

これ以上もこれ以下もないって言ったら変ですけど、今のうちらを最大限に出したところはありますね。それぐらい切羽詰まっていたということなんですけど、それが良い意味でかたちになって良かったです。

取材:山口智男

ミニアルバム『赤裸々』 2019年1月23日発売
MONOLITHIC RECORDINGS

  • MNLT-1003
    ¥1,700(税込)

vivid undress

ヴィヴィッドアンドレス:2014年、別々に音楽活動をしていたメンバーが出会って結成。実力派のメンバーが奏でるテクニカルかつソリッドなサウンドに相反するような大衆性のあるkiilaの歌声、そして90年代J-POPを想起させるど真ん中を突くメロディーを武器に、“J-POP 突然変異型 ROCKクインテット”を称し活動を始める。17年3月に自主レーベル“MONOLITHIC RECORDINGS”の立ち上げを発表、全てのバンド運営に 関する業務をメンバーで分担し、精力的に活動。19年12月に1stアルバム『混在ニューウェーブ』のリリースをもって待望のメジャーデビューを果たす。

「盲目の世界から脱出せよ」MV

「スクランブル」MV

トレーラー映像

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