【清 竜人 インタビュー】
今度は平成男を背負う歌もの歌謡!?
清 竜人の挑む
次なるオーセンティックとは?
清 竜人
毎度想像を超えたアプローチで聴き手を驚かせてきた清 竜人。ソロ名義では久々となる今回は、なんとオーセンティックな歌もの路線。アレンジャーに昭和を代表するポップスメイカーたちを起用し、懐かしさと現代ならではを共存させたハイブリッドさも興味深い。
今回のアプローチも完全に予想外でした。昨年末に行なったソロのピアノ弾き語りライヴから連想するに、今回はてっきりデビューの頃の厳かな世界観を想像していたもので。
昨年夏に清 竜人25と清 竜人TOWNを終えた辺りから、2018年はソロで動こうとは決めていたんです。ただ、どのような方法が最適なのかは、その時点ではまだまとまってなくて。ソロとはいえ、ただ過去の活動の焼き直しもつまらないですから。何かしら新しいアプローチを考えてはいました。
ちなみに今回のこのアプローチへの導線は?
ここ3~4年はカルチャー色の強い音楽性でしたから。音楽もだけど、音楽以外も大事な要素を持つ音楽性ばかりだったので。それらがひと段落し、逆にしっかりとした歌ものをやりたくなったというか。そんな中、あえてオーセンティックな歌謡曲をやるのもいいかなって。
それで今回の王道歌もの路線を?
ただ、それをそのままやっても面白くないじゃないですか。パロディーにならないように気を付けつつ、分かりやすく大味なメロディーラインで歌曲をやってみようと。温故知新じゃないけど、古くても良いものを取り入れつつ、新しいものにはしたかったんです。
今作の各楽曲たちは“平成のAOR”的な音楽のように響きました。
なるほど。それ、分かります。でも、自分的には“新しいかたちの歌謡曲が、この平成最後に向けてできたら面白いかな”というのがあって。80年代や昭和なアレンジに平成生まれの僕のメロディーセンスと歌詞の世界観の中でハイブリッドなものが生まれたら、それはそれで面白いだろうと。それもあってアレンジャーには、それこそ歌謡曲の全盛期を支えたベテランのみなさんに携わってもらい、僕のメロディーと歌とを料理していただいたんです。いわゆる当時にはなかった日本のオーソドックスな歌謡曲みたいなものを目指して。
ご自身でも十分にアレンジができるのに、あえて本格的な方々に任せたところにも興味が沸きます。
これは完成した際の総合点の高さを重視した結果です。極論、良いものが出来上がるのであれば、作詞作曲は別に僕でなくてもいいとさえ思っているので。自分はいい作品を、納得のいく作品を生み出せるプロデューサーでいいんですよ。あと、自分だけでやっちゃうと、いかんせん偏っちゃうんですよね。似ちゃう。僕の音楽をすごく好きなファンはそれでもいいでしょうが、ファン以外の人には聴きづらい作品になりかねないですから。
でも、それだとアレンジの変化により、楽曲の雰囲気も変わっていく懸念もあったわけですよね?
その方を信頼してのお願いだったので、その辺りの心配は特になかったです。例えばミッキー吉野さんだったら、彼独特のスイングさに楽団的なブラスアレンジが欲しかったので。なので、それぞれ各人の欲しい面をいただきました。もちろん、その辺りの各アレンジャーさんとのコンセンサスはしっかりととりましたね。きちんとイメージを伝えて。やはりみなさん百戦錬磨なので、みなまで言わずとも察してくれて。とはいえ、どこか化学変化も期待していました。
今回のアレンジャーはミッキー吉野さん、井上 鑑さん、原田真二さんの3氏にお願いしていますが、この人選というのは?
僕のJ-POPに対する価値観とリンクする音作りをされている方々ですね。
若いアレンジャーでも“こんな感じで”と伝えれば、器用な方ならできると思うのですが、なぜ本物の方々に?
あの時代のものを若者だけで狙うという概念が僕の中ではあまりなくて。やはり今回は温故知新で、あの頃の彼らと共作するという目的がありましたから。そのほうがある種ハイブリッドで面白いものが作れるだろうと。
あと、清さんの各曲の歌い方もむっちゃ色気を感じました。
その感想はすごく嬉しいです。その辺りも多少は狙ってました。やはり歌謡曲はある種の色気がないと成立しないものですからね。特に男性歌手は。
逆に歌詞や歌い方には、すごく平成ならではのモラトリアムチックな雰囲気がありました。
歌詞のテーマ設定にしても、なんとなくの言葉遣いや選び方をしたり、哀愁を帯びさせようとすると、やはりどうしても昭和っぽくなっちゃうんですよね。そこであえて平成さを出すためにも、歌詞のテーマや歌い回しで今の時代ならではさを出してみました。シチュエーションもあえて昔っぽくさせず、現代の歌謡曲を前提としたテーマや言葉遣いにさせてみたり。その結果でしょうね。
各曲、すごく平成の男の背中を感じました。
そこはかとなく漂う哀愁性は大事にしました。ちょっとしたセンチメンタルな抒情とでもいうか。その辺りって最近のJ-POPにはあまりない要素じゃないですか。時代は変わり、イデオロギーも変化していってるんで。そんな中、昔のままの価値観だと、なおのこと古臭く感じちゃう。その“今の価値観でなおかつ哀愁を帯びた感じにする”のは非常に大事にしました。今回の「平成の男」にしても“この平成の時代、男が女を守っていけるのか?”をテーマにしたのも、そのためですから。
“平成男はつらいよ”的な?
昭和に比べて平成って、まだアイコニックなものが存在してないじゃないですか。未だふわっとしてる。なので、あえてタイトルにもバシッと入れて、平成を象徴するひとつとして、物作りをしたかったんです。それが自分としてもやり甲斐があると踏んで挑んだので。
では、平成もラスト1年にして、“平成歌謡”を背負って立つぐらいの気概を込めていたり?
“平成さ”のまとめに入ろうかなって(笑)。今後、このようなオーセンティックな歌ものでアルバムも作っていく予定なので、みなさんには楽しみにしていてほしいです。今後も当面は僕の表現するところの日本のオーセンティックな歌謡曲を、今の時代を見つめ直して、なおかつ新しいスパイスを加えたらどうなるかを体現していきたいですね。
個人的には有線放送から今回のシングルの各曲が流れるのを聴きたいです。
分かります。今回は毒素のない音楽ですから(笑)。日常のBGMだったり、すごく聴きやすいし、今までのファンの方もですが、それ以外の方々にもぜひ聴いてもらいたいです。そこに対する訴えかけは、これまで以上に強いかも。年齢層も含め、これまでとは違った幅広い層に届くと嬉しいですね。
取材:池田スカオ和宏
「平成の男」MV
アーティスト
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