【シシド・カフカ インタビュー】
コラボ相手の私に対する客観性と
自分の言葉を歌詞として紡いだ主観性
シシド・カフカ
女優とミュージシャンの両面で活躍するシシド・カフカが完成させた2枚組アルバム『DOUBLE TONE』。金子ノブアキらと共演したセッション盤とトランカ・スタイルをテーマにしたオリジナル盤という、異なるふたつの表情で魅せる作品となっている。
今作『DOUBLE TONE』はセッション盤とオリジナル盤の2枚組で、カフカさんのミュージシャンとしての一面とソングライターとしての一面が詰まった作品ですね。
そうですね。セッションに関しては2015年のミニアルバム『K⁵(Kの累乗)』から継続して行なっている試みで、昨年11月から3カ月連続で楽曲を配信するなどやっています。また、昨年リリースしたミニアルバム『DO_S』はひとりの女性を主人公にしたコンセプトアルバムだったので、最近やっていなかった自分の言葉で歌詞を紡いだオリジナル作品を作りたいとも思っていて。セッションにおけるコラボ相手の私に対する客観性と、自分の中から生まれた言葉を歌詞として紡いだ主観性という、ふたつの面を堪能していただけたら嬉しいです。
タイトルはふたつの色とか音みたいな意味ですね。
写真用語にも“ダブルトーン”という言葉があって、色を重ねてひとつにすることなので、そこにもかけていますね。
セッション盤ではさまざまなアーティストがカフカさんを客観的にとらえて楽曲を制作していますが、ご自身でも“こう思われているのか!?”とか意外に思った視点はありましたか?
例えば「羽田ブルースfeat.横山剣 with CRAZY KEN BAND」で剣さんが描いてくださった女性像は、“世の男性は私のことをこんなふうにとらえているんだな”と思いましたね。ザ・クロマニヨンズの真島昌利さんが提供してくださった「新宿サノバガン(SON OF A GUN)」はストレートなロックなので、素直に私自身とそういう音楽を重ねていただけたのかなと思って嬉しかったです。また、「zamza feat.金子ノブアキ」はノブアキさんが望む私に歩んでほしい道が明確にあって、それに対して私が言葉を出していったかたちでした。
それら3カ月連続配信リリースの曲に加え、「SYNERGY m-flo feat.シシド・カフカ」、そしてディズニー・ピクサー映画の日本語版エンドソング「リメンバー・ミー」も収録していて。昨年はドラマ出演が多かったので一般的には“シシド・カフカ=女優”という印象が強かったと思いますが、「リメンバー・ミー」によって歌手としてのカフカさんが認知されましたね。
はい。いろんな方に知っていただく大きなきっかけになりました。ディズニー・ピクサー映画に関われる機会は一生に一度あるかないかなので、夢にも思っていなかったから本当に驚いたし、嬉しい機会に恵まれたと思っています。
オリジナル盤の「ひとり シンプル」ではその「リメンバー・ミー」でも共演した東京スカパラダイスオーケストラの谷中 敦さんが作詞していますが、谷中さんの書く歌詞のイメージとは違っていて意外でした。
オリジナル盤にはトランカ・スタイルをテーマとして設けていたので、谷中さんが合わせてくださいました。
トランカ…?
“トランカ・スタイル”です。スペイン語で落ち着いていることを意味する“トランキーロ”と英語の“スタイル”という言葉を合わせた造語で、アルゼンチンで流行っているんですよ。“最近どう?”“まあまあトランカ・スタイルだよ”みたいに、“落ち着いていい感じだよ”といったふうに使うんです。その言葉を知ったのが昨年の夏で、ちょうどその頃は自分の中で思うところがあって、“じゃあトランカ・スタイルを今後の自分の人生のテーマとして掲げていこう!”と思ったんです。落ち着いて物事に打ち込んでいこうと。そうじゃないと凝り固まって、辛くなっていきそうな気がしていたし。
それで肩の力を抜いた感じのものになったんですね。
ひとりでもシンプルに、肩肘張らずに生きていきたいという私の気持ちを、谷中さん流で言葉にしていただきました。年齢を重ねれば重ねるほど求めていないものまで背負い込んでしまうことは誰にでもあると思います。谷中さんが「ひとり シンプル」の中で書いてくださった《脱ぎ捨てて失いたいだけなの》という言葉にはとても共感しました。
どの曲にもそういうトランカ・スタイルの考え方や、そう生きたいと思ったカフカさんの気持ちがあふれていますね。
トランカ・スタイルを掲げて最初に制作したのが「特選」という曲で。自分の人生を“特選”にするため、今までの選択が後悔のないものになるように、この先の選択によって変えていこう、全ての選択を特選にしていこうと歌っています。この歌詞がある意味で私の意思表明になっていると思いますね。また、「全力のアイラブユー」もその場にあった怒りを投げ付けているみたいで、変に肩肘張っていないし。「空席のとなり」というバラードも無理に好きだった相手を忘れようとするのではなく、素直にどっぷりと悲しむだけ悲しめばいいじゃないかと歌っていて、これもひとつのトランカ・スタイルだと思っています。
聴く人にとってある種の人生応援歌でもありますね。
そうですね。“こういうふうに生きたい!”と自分自身のことを鼓舞しながら、聴く人のことも応援できたらと思っています。
「blue n’ red」はMIYAVIさんが作曲という。
夏に向けてフェスなどで盛り上がる曲を書いてくださいとお願いしました。いただいた曲を聴いて、ロンドンの地下鉄の中に無数のネオン管が走っている様子をイメージしましたね。時代の流れを地下鉄に例えていて、乗りたい流れにジャンピングする気持ちを奮い立たせたり、流れから自らの意志で降りていく強さも曲から感じました。みんなの背中を押せる曲にしたいと思ったので、ぜひ聴いてほしいです。
そんなカフカさん、今後はどんな活動予定ですか?
4月半ばから2カ月アルゼンチンに行っていて、そこで学んだサインシステムのイベントを10月に開催する予定です。打楽器だけの編成によるセッションで、指揮者のような方がいて、その人のハンドサインに合わせて演奏していくんです。面白い試みになると思うのでぜひ遊びにきてください。
取材:榑林史章
アーティスト
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