70年代初頭のSSW作品を彷彿させる
ダイアン・バーチの名作
『バイブル・ベルト』
ダイアン・バーチの音楽
当初、バーチは本作のサウンドプロデュースをあまり好ましいとは考えていなかったようだが、30歳を過ぎて人間としての経験を積んでいく過程で、本作の演奏やヴォーカルアレンジに接すると、改めてその仕上がりの秀逸さに惚れ直したのではないか。だからこそ、今回の来日公演で本作を再解釈したくなったのではと僕は推測する。来日メンバーは彼女を含め3人なので、オリジナルに近い演奏を期待しても無理なのは当然だ。しかし、キャロル・キングが歴史的名盤『タペストリー』(’71)で創り上げたような、シンプルでアーシーなサウンドを本作の優れた楽曲群に乗せることができれば、彼女の新たなスタートとなるのではないか。その意味でも、今回の来日公演はとても重要なパフォーマンスになるのではないかと僕はワクワクしている。
参加した豪華な
バックミュージシャンたち
プロデューサーのひとりとして参加している歌手のベティ・ライトは、17歳でリリースした「クリーンアップ・ウーマン」(’71)が大ヒットし、マイアミレディソウルの代表的存在として知られる。当時、アレサ・フランクリンやエタ・ジェイムスのようなシャウトする女性ソウルシンガーが多い中、ライトはソフトでポップを持った新感覚のシンガーであった。ジョス・ストーンがリスペクトしていることでも知られ、ストーンのデビューに全面的に参画し素晴らしい結果を生んだ。バーチにしてみれば、ライトに対してストーンのような思い入れはない。しかし、ベテランの助言と指導はバーチにとって大きな助けになっただろうと推測する。
リズム・セクションは、ベースにアダム・ブラックストーンとジョージ・ポーター、ドラムにはシンディ・ブラックマン、スタントン・ムーアという4名の超ド級ミュージシャンを起用し、重量感のある素晴らしいグルーブを生み出している。
他にも、マイケル・ジャクソンのトリビュートコンサートで音楽監督を務めたキーボードのレイ・アングリー、サックスのルー・マリーニとトロンボーンのトム・マローンの二人はブルース・ブラザーズのメンバーでもある。もうひとりのサックス、レニー・ピケットはタワー・オブ・パワーの元メンバーだし、これだけの豪華なメンバーが揃うことは滅多にない。
本作『バイブル・ベルト』について
それと、特筆すべきは彼女のピアノの上手さ。モデルのような彼女の容姿からは想像もつかないようなゴスペルタッチの泥臭い演奏で、キーボードのプレイだけを取り上げるとスワンプロック系も好きなのかもしれない。なお、彼女はバイオリンやチェロも弾けるようで、本作ではストリングスの一員としても参加している。
本作は間違いなく彼女の最高傑作だ。もし聴いたことがないなら、この機会にぜひ聴いてみてください。
TEXT:河崎直人
アーティスト
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