ヒデキと私と:ロマン優光連載109
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西城さん、いやヒデキと呼んだ方がしっくりときます。たとえば、ジミヘンをジミ・ヘンドリックスさんと呼ぶのが私の中でなんだか不自然なのと同じで、やっぱりヒデキはヒデキなのです。なぜならヒデキはスターなのですから。
私の母方の実家は広島なのですが、近所に住んでた人がヒデキのお父さんの経営してるパチンコ屋さんで当時働いていただか、前に働いていただかで、その縁でヒデキの等身大くらいのポスターを近所の家に配っていたそうで、母方の実家にもそれは貼られていました。妹の出産で里帰りした母に母方の実家に連れられていった二才の自分は、そのヒデキのポスターを見て興奮したのか、ポスターの前で『傷だらけのローラ』を何度も歌っていたそうなのです。ちなみに、その近所の人はドラマーであったヒデキの影響で家の中にドラムセットを組んで練習して近所にあきれられてたそうです。
親の話だと、二才当時の私が良く口にだしていた言葉は「ローラ」「ヒデキ」「ダイモンウカカ(当時の特撮番組『電人ザボーガー』の主人公・大門豊のこと。口が回らないため、こう発音していたらしい)」の3つ。ヒデキはスターだからわかりやすいですが、なぜに『電人ザボーガー』に二才の私はまっていたのでしょうか。物心ついた時にも『電人ザボーガー』のレコードは家にあったので、かなり気に入ってたのではないかと思います。ヒデキと大門豊の共通点は格好が派手なのとワイルド。二才当時の記憶はないものの、西城秀樹と大門豊が自分にとって最初のヒーローだったのです。
その話を親から度々聞かされていたため、幼稚園から小学校低学年の自分にとって、西城秀樹という人は奇妙な親近感を感じるスターでした。「広島のおじいちゃんちの近所の人がヒデキの家で働いていた」というのは幼少期の私にとって、何だか凄いことだったのです。
当時の人気コント番組『カックラキン大放送』。ヒデキはレギュラー格である野口五郎さんや郷ひろみさんが休みの時にピンチヒッター的に出演するのですが、それを「ヒデキが他の二人よりも格上だから、忙しくてたまにしかでれない。ヒデキが出る回は貴重」だと勝手に考えていて、私にとって新御三家の中でも特別な存在だったのです。それは単にヒデキが好きだっただけの話で、子供ってバカですね。
幼い私は三人のことを、地味な五郎、軽薄なひろみ、ワイルドなヒデキという風に捉えており、ワイルドだからヒデキが好きだったのか、ヒデキが好きだったのでワイルドが好きになったのかはわかりませんが、「ワイルドはかっこいい」という考えが生まれ、後々の趣味嗜好に強い影響を残すことになりました。たのきんトリオを地味なよっちゃん、軽薄なトシちゃん、ワイルドなマッチという風に把握して、マッチ派になったのも、ヒデキの存在があったからだと思います。小学校低学年の頃には、沢田研二さんというかジュリーという魔性のスターの影響もまた大きくなっていたのですが、それはまた別の話です。
ヒデキの死のショックが大きかったのは、物心ついた時にヒデキを「お兄さん」だと認識してたのもあります。いつまでたっても、どこかでヒデキを青年のままに捉えてしまっていたのです。子供の時から「おじさん」「おばさん」「おじいさん」「おばあさん」だと認識してたスターが亡くなった場合は、ショックを感じていても、年長者というところで納得してしまうところがあります。しかし、ヒデキは感覚的には「お兄さん」のままなんで、理不尽に感じるところが大きいのでしょう。実際にも、亡くなるには早すぎる年齢ですが、ヒデキのイメージというのは私の中でそれぐらい変わってなかったのでしょう。二度目に倒れた後のヒデキの姿をテレビで見た時も、たとえ半身マヒの症状や呂律が回らなくなっていても、やっぱりエネルギッシュでパワフルなヒデキだったのですから。
私の幼少期において重要なパートを占めていたヒデキ。その死は、自分の幼少期を過ごした昭和中期から後期という時代が本当に遠くなってしまったという実感を私にもたらしました。そして、人生の中での色んな局面で出会い、大切に思っていたものが今まで以上の速度で失われていくんだなという想いもまた深く感じています。私がヒデキという私にとっての最初のヒーロー、最初の指針であった人に対して今思うこと。それは大きな感謝です。本当にありがとうございました。なんと言ったらいいのかわからないのですが、本当にありがとうございます。
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