【GLIM SPANKY インタビュー】
近くにいる人に向けて
心を寄せるきっかけになれば
L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)
切々とした、けれども確信を抱いた上での“願い”の歌。ささやかだけど尊い理想についてしみじみと思う、心の視界がゆっくりと広がっていくような感覚を体感できる言葉と音ーー「All Of Us」、琴線に触れます。
「All Of Us」はふくよかで、かつしなやかさと強さが共存した楽曲ですね。この楽曲が生まれた背景をうかがいたいのですが。
松尾
これはドラマ(『警視庁・捜査一課長 season3』)のために書き下ろした曲なんです。ドラマのスタッフさんからの曲に関してのリクエストは特になかったんですけど、ひとつ“ドラマを観終わった人が明日も頑張ろうと思える曲にしてください”とだけ言われて。それで私のほうから“台詞にはしていないけど、実は伝えたいメッセージって何ですか?”って尋ねたんです。そうしたら“普通の人でも自分のキャパをオーバーして頑張るといろいろ進んでいける、みたいなことを伝えたいです”ということだったので、良い意味で普遍性のある歌詞にしたいなと思いましたし、闘っている日常はどの立場でも同じなので、そういう人たちにドラマを観終わったあとに、曲を聴き終わったあとに、どんな気持ちになってほしいかを考えながら制作に入りました。で、亀本が思い付いたリフとコード進行から、さらにイメージを広げていった感じです。
亀本
僕の場合は今回のドラマの雰囲気と自分たちがそれに対して感じたこと、そして“次に自分たちはこういう曲を出すべき”というのを全部踏まえた上で、“こういう曲がベストかな”と考えながらやってた感じですね。
松尾
あと、主人公を演じる内藤剛志さんがグリムをめちゃくちゃ好きでいてくださって。なので、内藤さんにも“役を演じる時に心の中で思っているメッセージってありますか?”って訊いたんです。そうしたら“泥臭く頑張って、気合い入れて挑戦しているそのさまを、それでも明日をちゃんと生きていけるという気持ちで演じている”と。だから、そういう日常的な感情をちゃんと伝えられたらいいなと思って、この歌詞を書きました。
すごく願いのこもった歌詞ですよね。
松尾
そうですね。それは自分に向けてもそうだし、人に向けても…家族とか近しい人たちに向けても。誰もが祈っていると思うんですよ。例えば、家族や恋人が“幸せでありますように”って。自分に向けても“いい日でありますように”とか思いますし。
“明日も頑張ろう”と思える曲って、たぶん背中を押すような曲という意味合いだと思うんですけど、GLIM SPANKYは背中を押してあげるというよりは、自ら喚起できるようなところに気持ちを持って行ってくれるというか。
松尾
直接的な言葉よりももっと心に寄り添う言葉のほうがいいんじゃないかと思って。ともに寄り添って頑張れる、お手伝いができる…くらいの感じの言葉にしたかったんです。あと、私がいつも思っていること…この歌詞そのものなんですけど、遠くの人に神経を擦り減らすよりも近くの人に愛情をあげることが、みんなにとって幸せなんじゃないかと。特にこのご時世はネットだったりとかもあるし、変な誤解で傷付いたりする人も多いと思うんです。近くの人を大事にするということを改めて言いたいという想いはありました。近くにいる人に向けて心を寄せるきっかけになればいいなって。それもひとつのテーマでしたね。
サウンドはドラマチックだけどどこか哀愁があって。
松尾
結構ドラムは大きい気がします。こういう曲っていくらでも派手にできるんですけど、サウンドはめちゃくちゃいなたくしていて。ドラムは地味でいなたい感じで叩いてもらっているんです。メロディーがメロディアスなのでキラキラした音でもいいんですけど、そこはロックなので(笑)。そんなに派手にならず、でもちゃんと存在感のあるサウンド…そこはこだわってやっています。
亀本
2曲目の「To The Music」もそうなんですけど、ローをしっかりと出しているんです。どんなにいなたい音でもローが出ていればオーケーだと思っているので。ギターも本当に古臭い音ですし、今のポップスのシーン中で言えばめちゃめちゃいなたい。でも、ローをどっぷりと出している。そこがこのシングルの一番満足度が高いところですね。今まで以上にローが出ているし、コンプ感も効いてますし…だから、スケール感があるように聴こえるんじゃないかなと思います。
キラキラした広がりじゃなく、どっしりした広がり方で。
松尾
そうです。そこは大事だと思っています。
「To The Music」はワウが効いたノリの良い楽曲で。
松尾
これは『J-MELO』という世界で放送される番組のエンディングになるということで、世界的にも通じる音楽を意識しました。日本の、アジアのロックとしてちゃんとノレるビートを作り込みましたね。あと、Aメロのハモりはちょっと東洋的な旋律に聴こえるものにしていたり、サビの半分は歌詞を乗せずに“イェイ”とか“ウォー”という表現にしたり。
ギターソロも面白いタイミングで入ってきて。A→B→サビのセオリーにとらわれないのがGLIM SPANKYらしいなと。
亀本
2A終わりですね。そこでサビが来てもベタかなって…ただそれだけの理由なんですけど(笑)。でも、その“セオリーにとらわれない”というのは結構自負してますね。次の「The Flowers」はサビというかコーラスで始まってBメロがあって…の繰り返しで。ま、Bメロの変形したバージョンは出てくるんですけど。でも、いきなり頭に主題を付けるって曲でもないし。
松尾
あと、ドラムがサビになっても派手にならない。
亀本
サビのほうが地味、みたいなね。
松尾
それはThe Beatlesがやっているような…サビだけどドラムは派手になっていない、でもちゃんとサビ感があるっていう(笑)。これは挑戦したことのひとつです。
あと、この「The Flowers」は伊勢丹の屋上でのライヴ映像が、アップルレコード屋上でのThe Beatlesを彷彿させるという(笑)。
松尾
50年経ったからできることだなって。私たち的にはオマージュというか、面白いことをやったなって思ってます。
亀本
パクリとかじゃなくてね。The Beatlesはもう人類の財産ですし。だから、こういうのをみんなで共有できるのもまた宝だと思ってます。
取材:竹内美保
「All Of Us」MV
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