Best Tracks Of 2017 / Eriko Sakai
キュレーター・Eriko Sakaiによる2
017年の年間ベスト・トラック!
5. Thundercat / Captain Stupid
まずジャケットのインパクト。演奏の巧さ。さらに元Suicidal Tendenciesのベーシストという衝撃の人物・Thundercat。
彼がやっている音楽っていわゆる“難解な音楽”に区分けされると思うのですが、それをクオリティを下げないまま彼なりにわかりやすくポップにキャッチーなサウンドの意匠を纏わせた最新作『DRUNK』。自身のキャラクターはファンキーだし、ジャケットもファニー。もちろん楽曲の中にも沢山の遊び心を混ぜていて、話題のKendrick LamarやWiz Khalifa、Mac Millerとのコラボも収録。アルバムのオープニングを飾るこの「Captain Stupid」は、偏差値の高い要素も感じさせつつ、同時に単純な音の気持ち良さもある曲だと思います。こういう音楽がフジロックとかにもまだ行ったことのないような、幅の広い人に届いたらもっともっと楽しいことになりそう。
4. Yusuke Hirado Prospects / Diploma (feat. Pxrxdigm. from WONK & Illa J)
本楽曲が収録されているアルバム『Heritage』は傑作です。ブラック・ミュージックをベースに、ジャズ、ヒップホップ、R&BとYusuke Hiradoのルーツが垣間見えるように、懐の深さと多彩なサウンドが楽しめるおもしろい作品。しかも、コラボ相手がEric Benét、ADAM at、fox capture plamなどなど豪華。中でもWONKとIlla Jとコラボしているこの曲は、重めなヒップホップでめちゃくちゃカッコイイ。2017年のうちに絶対聴いてほしい1曲。
3. FINLANDS / 恋の前
女性2人組バンド、FINLANDSのミニ・アルバム収録曲。1曲目の「カルト」のイントロで完全に心を掴まれ、捨て曲ナシ、傑作アルバム。特に3曲目の「Back to girl」がキモ。ミドル・テンポでメロウな雰囲気のある曲なんですけど、この曲でFINLANDSが自身の新たな領域を開拓したように感じます。そこから「恋の前」で一気に彼女たちの持ち味を炸裂させてくるのが最高です。あと、イントロが全曲本当にキャッチー。続きを聴きたくなる作り方が上手だなと感じました。普段こういう日本の女性バンドってほとんどど聴かないのですが、来年以降の邦楽シーンに殴り込みにいってほしいバンドだと思います。
2. クラムボン / nein nein
「nein nein」はミトさんが作詞・作曲なのですが、ダブ感のあるリズムにラップ調のメロディを原田郁子さんが歌うという、クラムボンじゃないと完成できない世界観が広がっていてハンパないです。
ちなみにライブだと、ミトさんがガンガン低音を歪ませてきてトリップします。音への没入感がすごいです。全国流通していないのですが、どうにかして絶対聴いてほしい1曲。
1. 環ROY / はらり
今年最も聴いたのは環ROYだった気がします。アルバム『なぎ』から1曲選ぶのはとても迷いました。「はらり」をはじめとして全てにおいて感じられるのが、トラックはあくまでもポップ。そして綿密に考え抜かれた日本語がとても美しい。 Qeticのインタビュー(https://qetic.jp/interview/tamakiroy-pickup/249066/) を読んで、ここまで日本語について考えてるアーティストなかなかいないと思いました。
海外国内問わずヒップホップが大きく盛り上がっている昨今ですが、いわゆる“流行”とは別次元の地位を確立した作品だと思います。
Comment
元々ジャンル偏らずに聴く方なのですが、2017年はヒップホップな流れから徐々にジャズやR&B、ソウル、ファンクといったブラック・ミュージックに流れた1年だったように感じます。アルバムとして良かったと感じたPUNPEE、BECK、U2、Weezerにも、ファンクやヒップホップの要素やコラボがあったし、“プレイリスト”として配信リリースしたDRAKEの『MORE LIFE』にも強く惹かれました。中でも「Free Smoke」はベスト・トラックに選びたかったです。今年のサマソニで一部の音楽好きに衝撃を与えたCalvin Harrisの『Funk Wav Bounces Vol.1』なんて、まさにEDM時代からブラック・ミュージックへの転換点を物語るもの。いつの間にか自然とロック・バンド聴くの忘れてたりするので、そろそろ太いロック・バンドが聴きたいような気もします。来年のArctic Monkeysのリリースに期待したい。
そんな中、個人的にいつまで経っても変わらないと思うのがエモ(逆にエモとブラックミュージック合わさったら激ダサい予感しかしない……)。American Footballの来日でエモ・リバイバルの機運が! と言われても結局は全然リバイバルしないのがエモ。エモ好きとか言いながら年間ベストに1曲もないエモ。最近では「エモい音楽」という言葉の使い方自体が変わってきているみたいで、動揺が隠せませんが、来年こそエモの襲来を願いたいと思います。ついでにロンドンのポストパンク・バンド、shameのニュー・リリースにも期待。
番外編 マイ・ベスト
【ベスト・ライブ】
『8月3日 toe at 恵比寿リキッドルーム』
toeのライブは毎回熱量が半端じゃないのですが、8月にD.A.N.と行ったツーマンはとりわけ凄まじかったです。インストだとかそんなことは全く関係ない熱量。「これが表現力か!」と鳥肌が立ちました。ライブでは毎回ドラムの柏倉さんがエモさ極まって爆発するのですが、この時は最終的に立ち上がってスネアにイス投げつけてましたからね。toeのライブで生まれるあの独特な空気感や雰囲気は一体なんなのか、未だに謎。2018年1月にコラボ曲や外部提供曲などを収録したアルバムをリリースとのことなので楽しみ。
あとは、復活を遂げたHi-STANDARDのさいたまスーパーアリーナでのライブは、対バン相手のマキシマム ザ ホルモンも含めて大熱狂、感涙、大拍手でした。初めて聴いた中学生のあの頃に“Turning Back”しました。2018年は海外フェスに行こうと計画中。
■Eriko Sakai 過去記事: https://spincoaster.com/author/deidaku(https://spincoaster.com/author/Eriko-Sakai)
アーティスト
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