【THE MODS】『THE MODS TOUR 2015
"BADLAND"』2015年12月17日 at EX T
HEATER ROPPONGI
2015年のTHE MODSは、森山達也(Vo&Gu)の脊髄終糸症候群の発症に伴う治療のために活動が止まっていた2014年の借りを返すように、森山の体調は万全ではないものの2本の全国ツアーを敢行。その総括となるのが本公演だったわけだが、アンコールのステージで飛び出したのが、冒頭の森山の言葉である。この日、ツアーファイナルを迎えたと同時に、2016年のデビュー35周年へのスタートが切られたと言える。
いつものように開演を待ち切れない観客たちが“モッズ”コールを響かせる場内。メンバーの登場でその声が一段と大きくなったことは言うまでもなく、そんなフロアーにオープニングナンバー「WATCH YOUR STEP」が投下された。1981年に発表された衝撃のデビューアルバム『FIGHT OR FLIGHT』の収録曲であり、人気の高いナンバーで口火を切ったライヴは、1999年発表の「IL GARAGE」、2015年発表の「BADLAND」と続く。デビュー作と最新曲、そしてその中間時期の曲が頭3曲で披露されたわけだが、 放たれたサウンドは荒削りなのに抜群の安定感があり、尖っているのに絶対的な貫禄があるのが興味深い。このバンドグルーブはキャリアを積み重ねないことには、到底生まれないものだ。
その後も“ちょっと古い曲を”と森山のウエットな歌声に宿るやさしさを感じずにはいられない「BABY BLUE」、ギターの苣木寛之が“六本木でモッズが演る日がくるとは思ってもみませんでした”とセンターに立って歌った軽快なロックンロール「STEP JAMMING」、ディープな音像を作り上げた「T-O-K-Y-O アイランド」、躍動的なスカナンバー「GO NOW!」…と多彩なナンバーが続き、34年の活動で培ってきたTHE MODSサウンドの振り幅の大きさを実感した。
“俺が一番嫌いな時間が…(笑)”と森山が黒のジャケットを羽織ると中盤の観せ場に。メンバーのルーツにある50〜60年代のロカビリーやバップのエッセンスを含んだロックンロールがプレイされる、もはや恒例となっている時間だ。「クラレンス+アラバマ」で軽快なステップを踏んだり、エルヴィス・プレスリーばりのマイクアクションでファンを魅了する森山。疾走感に満ちた「WHERE THE ACTION IS」では《ピンチの時こそアクセル吹かせ》とメッセージし、フロアーの床を大きく揺らした。
終盤へのスパートは北里晃一(Ba&Vo)がヴォーカルをとる「MEDICINE PUNK」から。パンキッシュな荒々しいビートが観客のテンションを蹴り上げると、さらに「ゴキゲンRADIO」というパンクナンバーの連発で観客を熱狂の淵に叩き込む。そして、本編を締め括ったのが「THE MAN OF THE MATCH」。威風堂々としたバンドサウンドが観客の拳を高く突き上げさせ、シンガロングを巻き起こした。
アンコールを求める“モッズ”コールに応え、ステージに戻ってきたTHE MODS。政治的なメッセージを唱える姿勢を持つバンドでもあるだけに、ここで湾岸戦争を背景に持つ「UNDER THE GUN~市街戦」が披露された意味を深読みしてしまったのは僕だけではないはず。また、冒頭のMC後、歓喜に沸く観客に向け届けられた《もう一度だけ 夢を賭けよう》と歌う「GARAGE WONDERLAND」も印象的だった。ギターソロ、ベースのフレーズ、ドラムのビート、そして歌声と歌詞、そのひとつひとつに胸が熱くなったのも僕だけではないだろう。
“30周年の時に、これが最後って例の場所で言ったんですけど…なんとか(笑)。いろいろまた迷惑をかけるかもしれませんけど、辿り着きたいと思います。いいクリスマスと最高の新しい年を迎えてください。ここにいる全ての…バカどものために(笑)”と、トリプルアンコールにも応え披露されたのは「LOOSE GAME」。THE MODSのスピリッツが落とし込まれた楽曲であり、何十年もライヴでプレイされる中で深みを増し、今やファンひとりひとりの想いもそこに投影されているナンバーだけに、会場の盛り上がりは最高潮に。そんな大盛況の中、本ツアーのファイナルであり、THE MODSの2015年が締め括られた。
…が、終演を告げる客出しのBGMが鳴っても熱烈な“モッズ”コールは続き、ついにメンバーを再びステージに呼び戻す! そして、披露されたのは初期の代表曲のひとつ「LET'S GO GARAGE」。来年の例の場所でのライヴの約束と同様、ちょっと早いがファンには最高のクリスマス・プレゼントとなったことだろう。すぐさまオイコールが巻き起こり、さらなる熱気が場内を制覇し、本公演は大団円を迎えたのだった。
2016年のTHE MODSは35周年を迎え、例の場所でのライヴもアナウンスされ、来年の彼らの動向には目が離せない…というか、すでにワクワクしている自分がいる。
アーティスト
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