【UNCHAIN】


取材:宮本英夫

大きな変革の始まりを告げる2ndアルバム完成!

前作『rapture』から1年の間に、UNCHAINは大きな変革を遂げましたね。

谷川

1年前と比べたら、自分自身が全然違いますね。別人みたいです。精神が…。

佐藤

よりUNCHAIN(解放)できたみたいな。

うまい! 本当にその通りだと思います。

谷川

開けましたね、完全に。日本語でやり始めたことがすごく大きくて、今までの枠が全部外れちゃった感じがします。英語しか駄目だとか、拘ることで逆に可能性を狭めていたのを、“日本語でもできるんだ”と思った時に、枠からはみ出ることができたので。すごく広がった気がします。

制作中からずっと、“UNCHAINのソウルミュージックを確立したい”と言ってきましたよね。

谷川

ソウルミュージックを真似するんじゃなくて、僕たちだけのソウルミュージックというものが…このアルバムでできたかどうかはまだ分からないですけど、この方向で行けばそれができるなと自分でも思えるアルバムができたと思います。

佐藤

方向性を見つけられましたね。自分たちが行き着く場所が、前よりも見えてきた気がします。まだチャレンジの段階ですね。もちろん1曲1曲に満足はしてるんですけど、これからもっと進化していくと思います。

日本語詞と英語詞の割合も、6対4になっているし。

谷川

本当は5対5にしたかったんですけど、途中で「Farewell blossom」という曲を英語から日本語に変えたので。メロディーラインに歌謡曲っぽさというか、和の部分があったので、日本語の方がいいだろうなと。

「Farewell blossom」は佐藤さんの曲ですけど、それは作曲者の意見として?

佐藤

いえ、最初はフュージョンのようなイメージで作っていたんですけど、それが“歌謡曲っぽいね”ということになって。自分が小学生や中学生の時に聴いてきた音楽の要素が出ているのかなと。

谷川

今までのUNCHAINだったら、やってなかったでしょうね。洋楽っぽくなきゃいけないとか、英語じゃなきゃいけないとか、そういう枠があったから。“和”のテイストは、今だからできることだと思います。

歌謡曲というか“和”のテイストは、6曲目「All Sincerity」にも強く感じました。そうかと思えば、スティーヴィー・ワンダーを思わせる「Tonight’s The Night」とか、谷川さんのもうひとつのルーツがよく分かる曲も入ってますよね。

谷川

まさに70年代のスティーヴィー・ワンダーを意識して作った曲です。今までこういうのは難しくて手が出しづらかったですし、作るんだったらいいものを作らないとスティーヴィーにも失礼だと思っていたので、あえて作らなかったんです。でも、今回は枠を飛び越えたところで、勇気を出してやってみました。

歌詞で言うと、ラヴソングが増えたんじゃないですか?「Turn Off The Light」とか「Fly In The Blue Moonlight」とか、とてもリアルで胸に沁みます。

谷川

日本語で読んじゃうと、今でも恥ずかしいかもしれない(笑)。でも、英語だったら“愛してる”と連発しても大丈夫とか、そのぐらい解放された精神状態だったんです。昔は、恋愛の歌詞なんて嫌だったんですよ。すごく小さい世界だから嫌だと思っていたんだけど、男と女の世界というのは、それだけではなくてもっと広い世界につながっていくものだということに気付いて、何かを恋愛に例えて言うだけでメッセージ性があると思うようになったので。やっと気付きました(笑)。

佐藤

ラヴソングは共感しやすいし、いろんなものに置き換えやすいですしね。

アルバムタイトルの“Music is the key”というのは?

谷川

僕たちの音楽がきっかけになってみんながつながったり、頑張ろうと思ってくれたり、ほんの小さな変化でいいので、僕たちの音楽で何かが起こってくれよという願いを込めて。ウェルダン・アーヴィンという人の「Music is the key」という曲があって、“このハーモニーがきっかけになって”みたいな歌詞のテーマが今の僕たちにぴったりだなと思って付けました。

最後に、リスナーの方へメッセージをもらえますか。

佐藤

僕らは今、再出発というか、新しいものを見付けたばかりですね。今回日本語を乗せた曲にはロックなものが多いんですけど、もっといろんな曲調に日本語を乗せても面白いかなと思いますし、これからどんどん新しい僕たちが沸き出てきそうな気がするので、お見逃しなく!

UNCHAIN

1996年に結成された京都出身のロック・バンド。2005年6月、1stミニ・アルバム『the space of the sense』でインディーズ・デビュー。2007年1月には、3rdミニ・アルバム『departure』でメジャー進出を果たす。ロック、ポップスはもちろん、ジャズやR&B、ソウル、ファンクなどさまざまなサウンドを飲み込み、独自のグルーヴで奏でる美メロ・ナンバーの数々。そして、愛や孤独を歌った切ない詞世界が話題を呼ぶ。2008年3月にリリースした1stフル・アルバム『rapture』は、全編英詞でグルーヴ・ロックの一つの完成形とも言うべき傑作となり、各方面から絶賛される。同年秋からは11月に「Across The Sky」、12月に「stillness in the wind」、2009年1月に「Brighter Days」とバンド史上初の日本語詞によるシングル3部作をリリース。2010年7月、3rdアルバム『Hello, Young Souls!!』を発表。2011年4月には、UNCHAINの2大ルーツであるロックとソウルをコンパイルしたコンセプト・ベスト・アルバム『Rock Flavour』と『Soul Flavour』を同時リリース。2013年2月にカヴァー・アルバム『Love & Groove Delivery』を発表すると、2014年2月に第二弾『Love & Groove Delivery Vol.2』、そしてデビュー10周年を迎えた2015年にも2月に第三弾『Love & Groove Delivery Vol.3』をリリースした。また、2015年6月には014年グラミー賞を受賞したサウンドエンジニア Sadaharu Yagiを迎え、L.Aでレコーディングした初のリメイク・ベスト・アルバム『10fold』を発表。2016年3月には8枚目のフル・アルバム『with time』をリリース。

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