【奥華子】シンプルなことを歌いたい
のかもしれない
シングル「笑って笑って」の取材時に“歌を歌う意味が再確認できた”と語った奥 華子。そんな「笑って笑って」を収録するニューアルバムでは、“自由になれたし、強くなれた”と話してくれた。
取材:石田博嗣
奥 華子=女性の感情をストレートに綴った恋愛の歌”という印象があるのですが、今回のアルバムでは「Birthday」のような“生きる”ことへのメッセージだったり、「他人の涙」のような内省的なところがすごく印象に残りましたよ。
アルバムに“BIRTHDAY”というタイトルを付けた時に、この14曲はどういう曲なのかを自分で考えたんですけど、確かに“人が産まれて、生きて、死んでいく”っていうこと…それこそ人間愛だったり、日々生きていること、恋愛の曲であったとしても、ただ“好き”や“嫌い”というのではなく、大きな愛を歌っている曲が多いと思いましたね。例えば『Birthday』は、当たり前の毎日、代わり映えのない毎日を送ってても、生きているっていうことはすごい奇蹟なんだってことを自分に言いたかったし、生きていることが辛いと思っている人に“大丈夫だよ”って言いたいと思って作ったんですよ。
そういう曲を作りたいと思ったのは、何かきっかけがあって?
いろんなきっかけがあったんですけど…友達に子供が産まれて、人間って人間から産まれてくるってことを身近に感じたんですね。その子は両親が出会ってなかったら産まれてこなかったわけだし、その両親だってちょっとしたことで違う人と結婚したかもしれない…って考えると、小さな偶然で人生って変わってしまうわけだがら、一瞬一瞬がものすごく大切だと思ったんです。人を好きになることってすごいことだし、ひとりの人に出会うだけで人生って変わるんだなって。そういうことを言いたくて『Birthday』を作ったんです。
でも、それはこのアルバムで言っていることの核でもありますよね。
そうなんですよね。産まれてきて、いろんな人と出会って、良いことも悪いことも日々繰り返して…すごく当たり前のことなんですけど、そういう当たり前のことこそ幸せなんだって思うし、産まれてきたこと自体が幸せなんだって歌っている曲が多いんですよね。そういうことを考えるようになったというか…そんな年頃なんですかね(笑)
「他人の涙」のように弱い自分をさらけ出した曲もあるのですが、これもそういうことを吐き出せる年頃になったということで?(笑)
そうですね(笑)。『他人の涙』はメッセージソングというか、自分の内側をさらけ出すような曲を作りたいと思ったんですよ。確かに、聴いててちょっと辛くなるような内容ではありますけど、そこまで言ってなんぼの曲だと思ったんです。『Barthday』の中でも言ってますけど、一緒にご飯を食べる人、悩みや夢を語れる人、結婚する人がいるっていうのは、こんなに人がいることを考えると途轍もない確率だし、ものすごいことなんだなって。ましてや自分の子供というのは、自分の命に変えてまで守りたいって言うじゃないですか。自分よりも大切な人がいること、自分と同じぐらいに愛情を持てる人に出会えることってのはすごいことだと思うんですよ。そういう意味では、『Barthday』と『他人の涙』は逆のことを言ってるんですけど、最終的には同じことを言ってるんで曲順も並べたんです。
そういう曲を作るモードだったのですか?
シンプルなことを歌いたいのかもしれないですね、今。“こうなりたい!”とか“こうならないといけない!”って切羽詰まってたりしたんですけど、“別にいいじゃん”って思えるようになったんですよ。“自分が、自分が”みたいに思ってたこともあった…もちろん、今もそういう部分はあるんですけど、ひとりでは生きていけないって思うし、周りの人がいるから自分がいれるんだって思うし、ファンの人が聴いてくれるから自分は歌えるんだって思うんですね。そう思ってると他人の存在がありがたく思えるんで、そんな気持ちでいられるようになったってのが大きいかもしれないですね。
「笑って笑って」の取材の時も、そういうことを言われてましたね。
『笑って笑って』をシングルとして出してなかったら、こういう気持ちにはなってなかったと思いますね。『Birthday』や『他人の涙』みたいな曲も作ってなかったと思うし。
ということは、「笑って笑って」の時に見つけた“何のために歌うのか?”の答えのひとつがアルバムにはあると?
そうですね。今まですごく試行錯誤していた…それは音作りやレコーディングに対してもだし、自分の存在に対してもなんですけど、そのひとつの答えになってますね。まだまだ通過点ではあるんですけど、今の奥 華子の在り方という意味では、自由になれたし、強くなれたし。“ダメならダメでいいじゃないか”って思えるようになったというか、別に完璧じゃなくてもいいと思えるようになったんですよ。それはアレンジでも、歌でも…あえて同時に録った歌を修正せずに使用していたりするので、そういう生々しさみたいなものも、このアルバムでは聴いてもらえると思いますね。もちろん、作り込んでいるものもあるんですけど、あまり細かいことは気にしてないんですよ。着飾ってないし、良く見せようともしてないし、在りのままの奥 華子というか。もっと綺麗にした方がいいんじゃないか、もっと化粧をした方がいいんじゃないかっていうのは、“何と比べてなのか?”って思ったら…何事にも“普通はこうだから~”というのがあると思うんですけど、“普通って何?”って考えると、別にいいのかなって。自分が納得していれば、きっと聴いてくれる人に伝わると思いますからね。
アーティスト
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