【キノコホテル】音楽は楽しく伸び伸
びとやるべき
L→R イザベル=ケメ鴨川(電気ギター)、エマニュエル小湊(電気ベース)、マリアンヌ東雲(歌と電子オルガン)、ファビエンヌ猪苗代(ドラムス)
都内を中心にひそかに秘密の花園を拡大中の女性4人組、キノコホテル。バンド!? ホテル従業員!? さまざまな憶測が飛び交うが、彼女たちの正体を知る者は少ない。そんな謎のベールに包まれたキノコホテルが公式としては初の音源を完成させた。
取材:ジャガー
今作が1stフルアルバムであり、メジャー第1弾アルバムとなるのですが、そもそもキノコホテルとはどういう集まりなのでしょうか?
マリアンヌ
私が支配人を務める“キノコホテル”というホテルの彼女たちは従業員で、ホテル営業の傍らで音楽をやっている、言わば企業ですね。
多忙を極めているのですね。どうして音楽活動を始めたのですか?
マリアンヌ
私以外は各々バンドの経験はあるみたいですけど、私は何となく趣味で作曲を始めたら曲ができたので、そのお披露目の機会として。あまり深く考えて始めたわけではないですね、ほぼ成り行きです。そんな成り行きから今までの歴史をまとめたものが今回発表する『マリアンヌの憂鬱』で。初めてのアルバムですし、キノコホテルの入門編と言える内容に仕上がっています。
今の自分たちができることを詰め込めたと?
マリアンヌ
やはり1枚目はそういう感じかしらと。しかし、今の体制になったのが2008年の12月で、09年の夏には録り出しているために入社して半年ぐらいの者もいました。私にとっては創業当初からの積み上げですけれども、半年でキノコホテルを総ざらいした人間にとってはアルバムに取り組む姿勢が多少違っているとは思います。楽曲自体は今までの歴史を代表するものですが、この4人でのサウンドはまだ発展途上の段階にあるので、入門編と言いつつもどことなく新しさも感じますね。
実演会(ライヴ)はすでに行なわれていますが、いざこの4人でレコーディングをされた感想はいかがですか?
エマニュエル
レコーディングは一発録りみたいにしたので、ライヴと変わらないテンションで行なえました。1曲1曲を作り込むというよりは、実演会でやって身に付いてきたものを録音するような。1枚目なので、この4人が生み出す勢いを表現すべきかなと。個人的に思い入れがあるのは「もえつきたいの」ですね。キノコホテルに入社してから私にとって初めての新曲だったので、その当時は自分のベースをどうやって出していこうか結構考えてましたけどね。
ファビエンヌ
フレーズのひとつひとつを見直すいいきっかけでもありましたね。私は入社して日が浅いのもあって、まずは順応しようと必死だったので、順応するだけじゃなくて自分のものにするためにもいいきっかけだったかなって。
マリアンヌ
フレーズの見直しもそうですが、本来であればレコーディングの前にいろいろ準備をやっておくべきだったんですが、みんな初心者なので何も考えず…。当日になっていろいろ問題があるわよってことに気付いて、それを直しながら録っていきましたね。初めてのことでしたし、壁にあたりながらもいい経験になりました。
イザベル
でも、時間としてはそこまで費やしてないですよね。録りは3~4日ぐらい? で、一斉に音を出したのは2日間ですね。
マリアンヌ
そうね。あとはギターを重ねたり、私が違う楽器を演奏したりで2~3日ほど。
イザベル
私はとにかく楽しみました。音源ってライヴではできないことができるじゃないですか。例えば、自分のギター音を重ねるとかいろいろ遊んでみました。
切ない心情を激しいサウンドに乗せた「真っ赤なゼリー」や、それぞれの楽器が暴れ狂うインストの「ネオンの泪」など収録楽曲は実にバラエティーに富んでますよね。カッコ良くもあり愛らしさを表現されているので、同じ女性としてすごく憧れます。
イザベル
「ネオンの泪」はケンカですよ(笑)。
マリアンヌ
ケンカから火事が起こって爆発、“ナイトクラブで火災、数十人死亡”と翌日の新聞1面に載ってしまうような、悲劇性を孕ませてみました(笑)。ちょうど真ん中に置いたのも、レコードでいうA面とB面の境目を担う曲という位置付けです。それにしても、同性に好意を持っていただけるとうれしいですね。私たちは女性だけのグループなので男性顧客が多いのですが、女性の方にもぜひ足を踏み入れていただきたい。
いろいろと謎に包まれてますから、最初の1歩はかなりのドキドキものだと思いますよ(笑)。でも、入ってしまえばすごく心地良い環境ですし、自由に音を奏でる4人の姿が目に浮かびます。
マリアンヌ
曲の大枠は私がある程度まで作るのですが、そこから先は各自が好き勝手にやっていかに化学反応を起こすか。音楽は楽しく伸び伸びとやるべきだと思うので、誰かがアドリブを仕掛けたら、周りのプレイヤーも対応して見せ場を作っていく。“この人がこう来たなら、私はこう行くわ”みたいな。それがバンド形態でやることの醍醐味であり、私が思い描く理想のかたちです。同じ気持ちで音楽を楽しんでくれる社員と一緒にやりたいし、私個人としても、打って返ってきた球を自在に打ち返せるような、そんな応酬を楽しめる演奏家になりたいものですね。
そんなマリアンヌさんが本作で気に入っているポイントは?
マリアンヌ
「あたしのスナイパー」に入っている、とてつもなく野放図で下手クソなボンゴですね。
イザベル
すごい顔で叩いてましたから、支配人が。
(笑)。これから音源を聴いて実演会に来る人も増えると思うのですが、そこではどういうものを表現していきたいとお考えですか?
マリアンヌ
作品を出すことで終わった感じもあるので、もしかしたらアルバムに入ってる曲は全然やらなかったりするかもしれません…ひとつの区切りではないですけどね。これからもやるんであれば、アレンジを変えて様変わりさせたり、遊べる余地はまだまだあると思いますけれどね。でないと演っているこちらが飽きてしまうから。今年は曲作りに集中したいと思っていますし、いい意味で実演会も楽曲も変わっていくのではないでしょうか。
ファビエンヌ
でも、そうやってどんどん次に進んでいきたい。本当に病み付きになりますよ。私が入社したのもキノコホテルの実演会を観てファンになったのが理由なので、みなさんにもそう思ってもらえるように頑張っていきたい。その最初の作品として『マリアンヌの憂鬱』を聴いてほしいですね。
アーティスト
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