【ART-SCHOOL】いい言葉は別に言って
ないけど、刺さるような言葉は歌って
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L→R 戸高賢史(Gu)、木下理樹(Vo&Gu)、鈴木浩之(Dr)、宇野剛史(Ba)
孤高のオルタナティヴロックバンド、ART-SCHOOLが結成10周年を迎えた。新作ミニアルバム『Anesthesia(アネスシージャ)』は、死の影のある暗く激しい切迫感から生命力みなぎるポップな躍動感へと音楽の力で突き抜けた力強い作品だ。結成当時から唯一のオリジナルメンバー、木下理樹(Vo&Gu)に話を訊いた。
取材:宮本英夫
結成10周年ということに感慨はありますか?
いろんなことがあったんで…“やり切った”という感じはありますね。5月の日比谷野音の映像を観た時に“あ、ちゃんと10年やったんだな”と思いました。
メンバーチェンジも何度かありましたが。
周りの友達のバンドは休止したり、解散してるのも多いから。何もなく10年間やれるバンドというのは、まずいないですよね。そういう面では“やったんだ”という達成感はあります。
しかも10年間、毎年かなりの量のリリースを続けていますよね。
曲が途切れたことはないですね。この先もプロデュースチームを作りたくて、曲のアイディアはいっぱいある。むしろ、出さないほうがキツイです。すごく自然な感じで、朝起きてコーヒーを飲むのと同じぐらいの感覚で曲を作るので。それは特別なことでも何でもなくて、日常だから。
アルバムにまとめる時にその時期のモードが自然に出るのですか?
そうですね。今回も最初は4~5曲入りでって考えてたんだけど、いっぱい作っていたので、ちょっと増やそうと思って7曲入りになったんです。
今回のミニアルバムで何か今のモードを象徴するキーワードはありますか?
音的にはThe Smashing Pumpkinsのアルバム『Adore』みたいな感じとか、ニューゲイザーと言われるYppah(イパ)というバンドをよく聴いてました。そういう音像にしたいなと思ってました。
特に1曲目「ecole」とか、生のバンドの音とプログラミングされた音と抜き差しが絶妙でカッコ良いです。
例えば一発録りとかは、楽曲的にそれが合うと思ったらそうするんですけどね。『ecole』はエンジニアさんとふたりでミックスを1カ月ぐらいずっとやってました。それぐらいかけないと終わらなくて。
こういう曲では、ライヴの再現性は度外視するのですか?
そうですね。バンドサウンドの曲もありますけど、そういうのはいっぱい作ってきたから。とにかく濃いものを作りたかった。そしたら、自分が作ってきたデモに近いものが一番濃いんじゃないかと思ったんですね。
言葉は一番最後に?
キーワードで出てくる時にはそのままはめますけど、どのバンドにとっても歌詞は重要だけど、このバンドには特に重要だと思っていて時間は一番かかりますよね。
言いたいテーマはあったのですか?
テーマは…本当は“この2010年代にあるべきもの”みたいなことを提示したかったんですけど…今って音楽は結構安いものとして扱われてるから、そこに何か違うものとして提示はしたかったですね。ちゃんと価値のあるものを作りたいということを考えてたと思います。
愛を歌ってると思ったんですよ。それは精神的なものも、ずばりセックスも含めた肉体的なものも。
セックスとか死とか、今回は結構多いですね。でも、実際自分がそれは経験してきたことだから。今回は、友達が死んだこととかいろいろあって。それを何とかロックとして、ポップに聴こえればいいなって。それは頑張りましたね。
その跳躍力、すごいと思います。沈むんじゃなくて、跳ねるというか。
それしかできることがないから。ドロッとした音楽は苦手なんですよ、個人的には。ドロッとしてても、例えばキュアーとか、すごくポップに聴こえるから。そういうふうに仕上がればいいなとは思ってましたけどね。
そういう意味のポップは、リスナーの側の意見としては10年前よりもより増してると思います。
音楽的にポップに聴かせるために、いろんなテクニックも身に付けたかもしれないですね、自分の武器として。だから、楽しみかたは人それぞれなんだろうけど、“なんかポップだな”と思ってくれてもいいし、1対1で向き合ってくれてもいいし。ただ、安い時代に安く消費されるのだけは嫌だなってすごく思ってます。CDの売上げが落ちて、ライヴの動員も上限が見えてきてみんな迷ってると思うんですけど、ちゃんと血の通ったものがあって、それを提示できればとは思うんですよね。だから、買ってほしいし、歌詞カードを見ながら聴いてほしい。いい言葉とかは別に言ってないですけど、刺さるような言葉は歌ってると思うんで。
アルバムタイトル“Anesthesia(アネスシージャ)”というのは?
読みにくいタイトルですけど。手術用語で“感覚を麻痺させる”という意味です。そういう時代だと思うので、そこで何かを提示したかった。このアルバムは、本当に苦しんで作ったから、それを簡単には消費させないぞっていう。今の時代に対していろんな思いがあります。
そして、10周年&リリースツアーは9月から始まりますが、今のバンドの調子はどうですか?
すごくソリッドになってますね。いつ終わるか分かんないとか、いつ自分が死ぬか分かんないとか、去年の暮れぐらいからずっと感じてたんで。今年の春ぐらいからは、ソリッドそのものじゃないですか。
この先の未来はどんなふうに見えていますか?
未来って想像すればするだけ裏切られてきたんで。だから、あんまり想像したくないです。むしろ“今日何食べようか?”とか“明日何歌おうか?”とか、そういうのを一生懸命やりたいです。
アーティスト
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