【オワリカラ】新しくて、過去と断絶
されていないものがやりたかった

L→R カワノケンタ(Dr)、ツダフミヒコ(Ba)、タカハシヒョウリ(Vo&Gu)、カメダタク(Key)

ポストパンクからフォークや歌謡曲まで、さまざまな音楽要素を超独特な感性で消化する注目バンド“オワリカラ”。その孤高のスタイルの真髄をタカハシヒョウリ(Vo&Gu)に訊いた。
取材:道明利友

“オワリカラ”というのは、すごくインパクトのあるバンド名ですが、どういう由来からこの名前を付けたのですか?

このバンドは2008年ぐらいから活動してるんですけど、06年ぐらいに僕がすごい感じてたことがあって…“最新の音楽”はもうできないみたいな気持ちが、その頃ってみんなにあったと思うんです。いろいろなものが出尽くして、もう焼き直ししかやれないみたいな。どんな音楽の話をしてても、なんだかんだ言って音楽ってもう終わったよね、みたいなところで思考を停止しちゃうようなことが、その当時の雰囲気にあったような気がして。でも、僕はいろんな流れが音楽にはあって、その流れを引き継いでいくのは全然悪いことじゃないし、またそれを2010年の若者が東京でやったら最新の音楽だと思ったんですよね。そういう意味で“終わってないよ”っていうか、“終わってる”って言うけどもう1回やれるぜっていう気持ちから、“オワリカラ”になったんです。

なるほど。いろいろな音楽の流れを受け継ぎつつ、ここからまた新たなものを始めたいっていう意志の表れというか。

そうですね。“オワリ”っていっても、すごくポジティブな意味で付けたんです。とにかく新しいものをやろうっていうのは、最初から目指してたんで。それでいて、過去と断絶されていないものにはすごくこだわってるんで、今はこのバンド名で良かったなって思ってるんですけど。

じゃあ、例えば今作のタイトル曲の「ドアたち」は、そのいろんな音楽のどの辺りの流れを受け継いでいる曲だと思いますか?

いわゆるポストパンクが僕は好きなので…GANG OF FOURとかTHE POP GROUPとかが好きなんで、このリフの感じとかっていうのは、多分そういうところの焦燥感というか…。それと、このサビとかって、90年代のポップスとか70年代の日本のフォークとかのメロディーの感覚があると思うんですよね。ギターはかなりエッジが立ってて、かなり攻撃的なポストパンク的要素はあるんですけど、そこにちゃんと歌が乗ったっていうことが僕は誇らしいし。そういうふうに、自分の中のいろんなものが溶け合ってる感じはしますよね。

サウンドはかなりトガッていつつ、どの曲もサビのメロディーはものすごく頭に残るのが独特ですよね。エキセントリックさとキャッチーさの同居みたいな感覚がありました。

あぁーっ。うれしいなぁ、それはすごく。僕、影響を受けたっていうか、日本のミュージシャンで好きな人が井上陽水さんで。いわゆる日本のフォークソング…あがた森魚さんとか早川義夫さんとかもそうなんですけど、彼らのすごいなと思うところは、ものすごく平坦なメロディーと言葉だけで、ものすごく新しいことがやれてたっていうところで。あと、阿久悠さんの歌詞とか、筒見京平さんや戸倉俊一さんの曲とか、“黄金時代”の歌謡曲も僕はすごく好きなんですけど、そういうずっと続いてきてる日本の音楽の流れもあると思うんです。そういうところで、演奏は100パーセントハードでメロディーは100パーセント歌謡曲…みたいな割合で200パーセントになってもいいっていうのがひとつのテーマになっているんで。自分が好きなその両方の要素を自然に成り立たせられているようなものが、目指してるもののひとつですね。

オワリカラ

オワリカラ:2008年結成。タカハシヒョウリの歌世界とメンバー4人のアンサンブルは激しく耽美、変幻自在。“終わり”と“始まり”のふたつの言葉が示す通り、ポップとアヴァンギャルド、未来と過去の架け橋となる最重要ロックバンド。その変幻自在なアンサンブルによる質の高い音楽が特徴。キーワードは“サイケデリックでカルトでポップ”。

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