【キノコホテル】『キノコホテル単独
実演会<サロン・ド・キノコ~ゲバゲ
バ大革命>』2016年10月22日 at 東京
キネマ倶楽部

撮影:にしゆきみ/取材:石角友香

 2年振りのアルバム『マリアンヌの革命』で、そのサイケデリアもニューウェイヴ・テイストもアップデートしたキノコホテル。ツアーセミファイナルのキネマ倶楽部はまるで彼女たちのためにあるように思えるほど架空のキャバレー、もしくは見世物小屋として最高のマリアージュだ。マリアンヌ東雲(歌と電気オルガン)のアンコールを含む3度のお召し替え、このハコならではのポーチからの登場、レッドカーテンの妖しさ、ゴージャスな照明などを全てがキノコホテルの世界観を演出。しかも、演奏そのものもシンプルでタイト。特にイザベル=ケメ鴨川(電気ギター)のフィードバックノイズやファズが、それこそストゥージズ顔負けのパンクのオリジンを醸し出すプレイは、巧拙を超えたすごみすら漂わせていた。

 GSやガレージロックもいいが、序盤早々に深遠な女の狂気と気怠さを余すことなく伝えた新曲「遠雷」では、マリアンヌのパフォーマー、そして作家としての奥行きも実感。もちろん、電気オルガンに跨りエロティックに煽り、鍵盤の上に20センチのピンヒールで仁王立ちする逸脱気味のパフォーマンスも彼女の美学だと分かっていても、生で体験するとかなりハードコア。時折見せる素の側面がお茶目だったり、ジュリエッタ霧島(電気ベース)がタフな演奏とは裏腹に話すと超・お嬢さんキャラだったりするギャップも楽しい。

 一見、アナクロでコスプレチックに思えるキノコホテルだが、軸にあるのは曲の良さやプレイセンス。それらを渾身の力で出し切った4人は美しかった。



セットリスト

  1. 反逆の季節
  2. おねだりストレンジ・ラヴ
  3. 流浪ギャンブル
  4. ばら・ばら
  5. マリリンモンロー・ノーリターン
  6. 遠雷
  7. てのひらがえし
  8. 月よ常しえに
  9. エロス+独裁
  10. 球体関節
  11. 愛と教育
  12. 愛はゲバゲバ
  13. 恋の蟻地獄
  14. 回転レストランの悲劇
  15. 恋はモヤモヤ
  16. セクサロイドM
  17. キノコノトリコ
  18. キノコホテル唱歌
  19. <ENCORE>
  20. 赤ノ牢獄
  21. 白い部屋
  22. 真夜中のエンジェルベイビー
  23. 真っ赤なゼリー

キノコホテル

全ての楽曲を手がける鬼才・マリアンヌ東雲を中心に創業された謎めいた女性だけの音楽集団。2010年2月にアルバム『マリアンヌの憂鬱』でデビューする。キュート&クールなルックスと強烈なキャラクター、楽曲のクオリティーや実演会(ライヴ)での爆発力は唯一無二。パンク/ニューウェイヴ、60'sロックンロール、プログレ、ラテンなど、さまざまなサウンドを昇華した濃厚な音楽性で、老若男女、メジャー/アンダーグラウンドを超えて幅広く浸透しており、その中毒性は高く、“いつか視た幻”のような既聴感を憶える“ありそうでなかった音楽”を提供し続けている。

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