【新山詩織】やっと呟けた、心の中の
“ひとりごと”
陰りあるムードから力強く開けゆく、新たなる“私”探し――。新山詩織の3rdシングル「ひとりごと」は、かつてなく自らの内面を抉り、心の奥底の本音を歌った曲だという。半年後の高校卒業を控え、“明日が怖い”と語る彼女の胸に、今、渦巻くものとは?
取材:清水素子
シングル曲で詩織さんが作曲に携わっていない作品は今回が初めてですよね。
はい。自分の曲も含めた候補のデモ曲を全部聴いた時、私の曲にはないノリやメロディーや雰囲気を持った曲だなぁって感じて。そこに自分が今感じている言葉を、そのまま乗せて歌ったら、どんなふうに聴こえるんだろう?って思ったんです。そしたら予想以上に難航してしまって…一旦出来上がった歌詞を全部書き直したんですよ。
書き直したって、なぜ?
レコーディング直前に見直して、なんか違うなぁと思っちゃったんです。だけど、そんなに簡単に新しい言葉って出てこなくて、溜息ばっかりついてるうちに、今度はその“溜息”っていう言葉から、いろいろ沸き上がってきたんですね。“私は今、何を歌いたいんだろう?”とか“どうありたいんだろう?”って、そんなふうに自問自答しながら書き進めていったら、一気に出来上がって! 結果的に、新しい歌詞の書き方ができた気がするんです。
新しいって、具体的には?
自分の弱い部分だったり、消してしまいたい部分、それも全部含めて自分なんだ…って認められるようになったというか。その上で、聴いてくれてる人たちにもそうであってほしいっていう気持ちが込められたんです。今までは学校内でのモヤモヤだったり、どうにもできない想いを書いていたけれど、今回はひとりの人間としての寂しさも踏まえつつ、本当に言いたいことを違うかたちで描けたんじゃないかな。
自分の中からあふれ出るものを率直に書くというスタンスは同じでも、そのベクトルが学校や世間という“外側”に向いていたのが、この「ひとりごと」では自分自身という内側に向いたのかもしれませんね。
そうですね。今まで以上に内面的なこと…絶対声に出しては言わないことだったり、心の中だけで呟いてる言葉を書けたんだと思います。明日が怖いから《もう戻る事の無い 昨日に未練を残して》と歌ってみたり、でも、周りに流されて生きたくはないっていう強い意志は、あとから読み返してみても感じるし。歌詞に《私の答えを いま 探し求め歩くの》とある通り、今、新たな自分探しをしているところなんですよ。
それはデビューして環境が変わったから?
そんな自問自答が、この曲ではループするギターのアルペジオに上手くハマっていますよね。
そう。まるで目が回りそうな、ゆらゆらしてる感じが出てる。楽曲自体ちょっと暗い感じだけど、そのおかげで今までとは違う新しい雰囲気が出せたんだろうし、最後には《誰も 知らない笑顔の花が 待ってるから》って希望につながる歌なので、少しでも届いてくれたら嬉しいですね。
《冷たい溜息 夜の風に》という歌い出しだけに、寒い夜に聴くと浸れそうです。間奏のハーモニカも寂しげで、良い味出してますよ。
ですよね(笑)。ライヴでいつか吹けたらカッコ良いなぁって私も思ったんで、ちょっと練習始めようかなぁって。ハーモニカホルダーを付けて、ギター弾きながら一回やってみたい!
すごくロックなステージになりそう(笑)。そんなロック感は奥田民生さんの名曲カバー「イージュー★ライダー」にも活かされていて、ウェットな「ひとりごと」とは正反対。
その違いを味わってほしいんです。むしろ、私の曲とは正反対の世界観を持ってる曲だからこそ、プロデューサーの笹路(正徳)さんもカバーを勧めてくれたんだと思うんですね。すごく明るくて、良い意味で能天気なムードがある。そんな曲は私にとって憧れでもあるから、レコーディングでも楽しく歌えたし、“自由”っていう言葉を大声で歌えたのも嬉しかった。自分の曲では絶対歌えないので。
“自由”に憧れながらも、それを素直に吐き出せない自分に対するもどかしさもあるのでは?
それは私以外の人でも結構あるんじゃないかなぁ。そうやって自分では踏み込めないところまで、カバーだと経験できるんですよね。おかげで学べること、今後の曲作りに活かせることも多いから、ずっとカップリングがカバーなんです。
人間っていろんな顔を持ってますからね。「ひとりごと」から「イージュー★ライダー」まで、同じ人間が歌っても全然不思議じゃないですし、詩織さん自身、パッと見は繊細な印象が強いけれど、実は頑固なところもあるでしょう?
しょっちゅう言われます(笑)。だから、「イージュー★ライダー」みたいな曲を、いつか自分でも、きっと書きます!
そう考えると、明日は怖いと同時に楽しみでもありますよね。高校を卒業したら、いったいどんな変化が起きるのか。
そのためにも、今は卒業に向けての歌詞を書いてるんですよ。スケジュール帳で卒業式の日に印を付けたら、なんだか寂しかったんで、いろいろ考えながら書いていて。ただ、ライヴをやりたいっていう気持ちは、ずっと変わらないです。この夏、昔から憧れていたフェスに出させていただいたし。今まで自分が楽しんでいた客席に向かって、今度はステージの上から歌うんだと思うと、やっぱり当日は緊張もしてたし、逆に興奮もしたし。“こんなふうに、ずっと歌っていきたい!”っていう気持ちが沸いてきたので、卒業したら日本全国でたくさんライヴをやっていきたいですね。
アーティスト
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