【かりゆし58】近くにいる人に対する
愛しさを歌詞にしたアルバム
写真左上より時計回り、中村洋貴(Dr)、宮平直樹(Gu)、前川真悟(Vo&Ba)、新屋行裕(Gu)
先行シングル「Oh!Today」、島袋 優(BEGIN)をプロデューサーに迎えた「生きてれば良い事あるみたいよ」を含むニューアルバム『大金星』が完成。近しい人への思いをテーマにした本作についてメンバー4人に語ってもらった。
取材:森 朋之
ニューアルバム『大金星』は、かりゆし58の新たな名作だと思います。前作『8』に続き、前川さん以外のメンバーも曲作りに参加し、さらに音楽性が深まってますよね。
前川
ありがとうございます。2月くらいには“次はこういうことをやりたい”っていう提案をメンバーにしたんですよ。そのきっかけになったのが、「アットホーム」という曲で。
オーディエンスに対する思いを描いた曲ですよね。
前川
『8』のツアーの時、これまで以上にファンの人たちに対する感謝が生まれたんですよね。すごく産みの苦しみを味わったアルバムだったし、“このアルバム、どうなんだろう?”という迷いの中でのリリースとツアーだったので…。(宮平)直樹、(新屋)行裕にしても、自分で作った曲をライヴでやるのは初めてだったし。
新屋
うん。
前川
でも、お客さんはしっかり受け止めてくれたんですよね。その嬉しさだったり、感謝の気持ちをかたちにしたのが「アットホーム」だったんです。その時に“こういうサイクルで音楽を続けていくのが一番いいな”って思ったんですよね。近くにいる人に対する愛しさだったり、大事にしたいという姿勢だったり、それをそのまま歌詞にしながらアルバムを作りたいって言ったら、メンバーも“いいんじゃない”って。
このアルバムでやるべきことがはっきりしていた、と。
前川
目指す場所に向かって進んでいれば、ストレスが少ないと思うんですよ。曲を作る時に“これでいいのか?”って不安に駆られることもないだろうし。あとは、“自分たちのことを信じ合おう”という話もしてましたね。
新屋
あと、久しぶりに沖縄でレコーディングしたんですよ。録ったのはリズムだけで、あとはギターとコーラスがちょっとだったんですけど、それがすごく良くて。
前川
「情熱の薔薇」(ザ・ブルーハーツ)のカバーをやらせてもらった時に沖縄で録ったんですけど、それ以来かな? オリジナル曲だと「アンマー」以来ですね。
宮平
7〜8年振りくらい?
どうして今回、沖縄で録ることになったのですか?
前川
ずっとやりたいって言ってたんですよ、特に(中村)洋貴が。
中村
気持ち的な問題もあったんですよね。リラックスして録ってみたいっていう。東京だと、どうしてもガチガチになってしまうんで。
新屋
沖縄のスタジオ、洋貴の家にも近かったし。
中村
リラックスして、いいテイクが録れました(笑)。レコーディングも早かったし。
その空気はCDにも確実に反映されていると思います。
前川
あと、もうひとつ“いいな”と思ってることがあって。このアルバムの4番バッター的な存在になってる「愛を信じている」は直樹の曲で、俺が“一生大事にしたい”と思ってる歌の「生きてれば良い事あるみたいよ」は行裕の曲なんですよ。かりゆし58のど真ん中にある曲をふたりが書いたっていうことにも、今のバンドの調子の良さが出てるんじゃないかな、と。
なるほど。「愛を信じてる」は大きな広がりを感じさせるラブソングですね。
宮平
僕はあまり歌詞を書かないので、曲調とかメロディーが主なんですけどね。この曲を書いた時は、洋楽っぽくて、でっかい感じの曲にしたいと思っていて。仮タイトルも“ハリウッド・イン・マイ・ルーム”だったんですけど(笑)。
前川
仮タイトルに必ず地名が入ってるんですよね(笑)。直樹は今まで(デモの段階では)メロディーを鍵盤で弾いたりしてたんですけど、“何でもいいから、歌詞を書いてみたら”って言ったんです。その中に“無限”という言葉があって、それがこの曲のメロディーにすごく合ってたんですよね。語感もいいなって思ったし、直樹のデモに秘められていたものが、歌詞にも活かされてるんですよ。
「生きてれば良い事あるみたいよ」はどんなテーマで制作したのですか?
新屋
勝手に“ACジャパンの広告でこういう曲が流れてたらいいだろうな”って(笑)。歌詞を書いているうちに“悩んでいる人が聴いた時に、力になれるような歌にしたい”って思ったんですよね。ライヴに来てくれる人もたぶん、いろいろと悩みがあるだろうし、“自分が好きなアーティストのライヴに行って、こんなことを歌ってくれたら嬉しいだろうな”と。一番、お客さんの立場になって書いた曲かもしれないですね。あとはもう、優さん(プロデュースを担当したBEGINの島袋優)のおかげです。
前川
すごく愛情を持って接してくれるんですよね、優さんは。この曲はもともと行裕が歌うはずだったんです。でも、他の曲の作業をしている時も、ずっとこの曲のことが頭に浮かんで。“一生大事にするから、歌わせてください”って告白したら、“いいよー”って(笑)。
タイトル曲の「大金星」にはラーメン屋を始めた友達、「大洋と太陽のBBQパーラー」にはバーベキューの店を始めた友達が登場しますね。
前川
両方とも本当の話なんですよ。ラーメン屋のほうは大阪の友達で、好きな人と一緒になるために店を始めて。もうひとりはアパレル関係の仕事をしてたんですけど、大量生産が嫌になって、“1対1で向き合える仕事をして、それを子供に見せたい”ってバーベキュー屋を始めたんです。30歳をすぎてから奮起して新しいことを始めるのって、すごいことだと思うんですよ。とっても眩しく見えるし、誇らしくもあって…。それを歌うことが、かりゆし58がやるべきことじゃないかって思ったんですよね。
アーティスト
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