【JASMINE】デビューから5年の軌跡を
辿るシングルベスト
JASMINEが2009年のデビューからの5年の間にリリースした全シングル11枚と新録曲3曲を収録した『PURE LOVE BEST』。彼女が辿った足跡とそれぞれの楽曲に込められたピュアな思いを語ってもらった。
取材:金澤隆志
こうしてデビューからの5年間にリリースした全てのシングルを時系列順に並べると、自分の成長の跡も見えたりしますか?
デビュー当時の曲を作ったのはデビュー前なので、マインドも歌い方もその当時とはずいぶん変わったなというのはあります。音楽に対する価値観が変わったし、歌の細かいところまで目がいくようになりましたね。前はかなりザックリだったんですよ。でも、今は“ここはもっと細かく作り込んだ方がいいな”とか、細かいニュアンスまでかなりこだわってます。声質も昔は雑。今聴くと、すごく幼い。たまに超恥ずかしい時とかあります。でも、逆に同じことはできないし、声も若干変わっているので、それはそれでいいんですけど。
この5年間でもっとも成長を自覚した部分は?
意識の違いが大きいかな。デビュー前と比較して今の方が死ぬほど歌の練習をしているし、以前は曲によってはレコーディングの日に鼻が詰まってたりもしたけど、今はそういうことはまずない。そこにシフトを合わせて生活して、調子が良くなければ当日までに必ず調子を良くするようにしています。昔は“レコーディング! イエー!”っていうノリで前の晩に夜更かししちゃったりしてましたからね(笑)。
遠足前夜ハイですね(笑)。
気持ちと行動が伴ってなかったし、経験がないからどんな準備をすればいいのかも分からない。経験を積むことで、曲に合った練習をしなきゃいけないってことを学びました。ハードな歌の時はハードな練習をしていないと声が出ないんですよ。やさしい歌の時は、できるだけ声を出さずに、喋る時も喉に力を入れないようにしたり。前はレコーディング作業そのものが楽しいという感じだったけど、今はそこに行き着くまでの苦労が楽しいと思うようになりました。出来上がりが良いほど楽しいから、その努力を楽しめるようになってきたんですね。そこまでの努力も結果に出るし。
11枚のシングル曲の中で、特に転機になった曲を挙げるとすると?
「Dreamin'」と「ONLY YOU」。2曲とも、それまでとは違う自分を出した感覚がすごく強くて。「Dreamin'」はずっとやりたいと言っていた壮大なバラードで、そこに向かっていく自分の気持ちと自分の体調を初めて合わすことができず、すごく悔しくて…。“そこに向けてしっかりとセッティングしなきゃいけないんだ”ということを学び、初めてレコーディング中に泣きました。同時に、自分の中で“こうじゃなきゃ嫌だ”“悔しい”という感情があるということに気付きましたね。そのためにしなきゃいけないことが絶対あるんだってことを学びました。「ONLY YOU」は愛情の表現だったので、自分自身と向き合い、掘り下げていく作業だったという意味で、強く印象に残っていますね。
「High Flying」では、曲調がガラッと変わりましたよね。この曲も転機のひとつと言えるのでは?
そうですね。「Jealous」のようなR&Bを主軸としていた中、EDM/トランス的な音へと移行していくというのが斬新な試みでした。曲調もそれまでのような“切ない”とかとまったく違うし。でも、いざやってみたら、自分がやる曲によって自分が住む世界も変わっていくんだなって。自分が自分を枠にはめ込んでいたので、それを取っ払って行動に移してみると全然楽しいし、人にも喜んでもらえたし。
さらに新録曲3曲が収録されているのですが、まずその1曲目である「Last Word」は松尾潔さんとの共作という。
“悲しい、切ない”をテーマにした「sad to say」や「Jealous」と同じ種類に入る曲ですね。最初に私が書いて、それに松尾さんに味付けをしてもらって、また書き直してといったやりとりをしながら作っていきました。松尾さんとの作業は初めてだったんですけど、本当にすごいなと思いました。あらゆる表現方法をお持ちで。その人のリアルな性格って、言葉のチョイスにモロに出ると思うんですよ。例えば《1年目の記念にふたり選んだリング》というフレーズは、このたった1行の中でふたりの深い関係性を描くことができているし。シチュエーションや背景の描き方の上手さもそうですけど、曲のコンセプト、メロディー、トラックの雰囲気にちゃんと合わせてくるあたりがすごいなと、本当に勉強になりました。
切々と歌い上げるヴォーカルもいいですね。
ありがとうございます。結構前に録ったんですけど、この頃からレコーディングするにあたって、前もってこれぐらい練習期間がないとダメ、みたいなのを計算し始めて。それが妙に印象に残ってます。もちろん“練習なんてしてませんけど”って顔しているんですけどね(笑)。そのほうがカッコ良いと思ってて。本当は家でガッツリ声出ししてからきてるんですけど(笑)。
根が真面目なんですね(笑)。
そうなんですかね。そうだったらいいな(笑)。
「Happy Dayz」はMINMIさんの鼻歌がベースになっている曲だとか?
最初にMINMIさんが鼻歌をレコーディングしてくれて、大沢伸一さんがそれを聴きながらトラックを作ってくれたんです。こういうやり方は始めてでした。これはMINMIさんが私のことを想定して作った曲というよりは、彼女が自分の中にあるものを出して作った曲なので、“あたしだったらこうだな”という部分をMINMIさんに会って“メロディーをこう変えてもいいですか”と直接聞いたんです。そうしたら快く“あなたの好きなようにしなよ”って言ってくださって。
歌詞は友達を勇気付けるメッセージのようですね。
実在する女の子の友達に触れるように歌っています。肩組んで“イエー”みたいな感じで。常に私を支えてくれて、ちょっとしたひと言に命を救われるのが友達なんです。幼い頃から“最後に頼りにできるのは友達だ”と思っているところがあるんですよ。でも、みんながみんなそういう友達に恵まれているわけじゃないし、そういう子にとっては私が支えになりたい、そういう存在になってあげたい…この曲はそういう思いで書きました。
「I Love It」はゴスペルのテイストを感じさせる、幸福感に満ちた曲ですね。
日々にあふれる幸せを歌っています。日常の中にあることひとつひとつに喜び、その背景を感じて、感謝して、愛して、という曲です。
そういった日々の幸せのひとつとして“マック ポテト”が入っているのがピンポイントで面白かったです(笑)。
日本マクドナルドさんに“こう歌ってもいいですか”って、連絡して許可取ったんですよ(笑)。マックのポテトって鉄板じゃないですか。10代の子たちはお金ないからとりあえずマックですよね。最高に刺激的ですよ、女の子たちの会話の内容が。
聞き耳立ててるんだ(笑)。
自然と耳がいっちゃうんですよ。音楽とか聴いててもそっちのほうが楽しくて(笑)。私は昔、友達と行くとなぜか超ケンカしてましたね。マックはいろいろ思い出あります。結局、友達とのコミュニケーションの場なんですよね。当たり前の日々の中にあるものが、実は感謝の気持ちであふれているべきものばかりなんですよね。《じいちゃんのツンデレ おばあちゃんの恋バナ》という歌詞も、実際におばあちゃんが亡くなって、“いつも一緒にいるけどいなくなっちゃう人たちなんだな”“おばあちゃんも女の子なんだな、可愛いな”と思ったことがきっかけで書きました。全てはいずれなくなっていくものという。変顔のプリクラも撮らなくなっちゃたし、失恋していちいちカラオケにも行かなくなっちゃったし(笑)。こういのは後になって振り返って気付くことだから。友達と毎日一緒にいられるというだけのことも特別なことなんだよって。
デビューからの楽曲と新録曲3曲を振り返っていただきましたが、改めてどんなふうに聴いてもらいたいですか?
聴く人が自分に重ねてもらっても、私をひとりの人間として“どんな人なんだろう”と思いながら聴いてもらってもいい。“自分はこんなふうには感じない”“ここは一緒だ”と、いろいろ感じながら聴いてほしいですね。あと、自分のアドレス帳の中にいる、身近な友達のひとりとして聴いてほしいというのはあります。
初回生産限定盤にはSPICY CHOCOLATEによる、JASMINE既発オリジナル33曲をブレンドした、64分というボリュームのMIX CDが付属しているんですね。
超嬉しいですね。KATSUYUKI a.k.a. CONTROLERさんに“JASMINEはすごくいろんなことを感じる子なんだね”と言ってもらえたのが嬉しくて。全曲聴いてもらうとそういうふうに思ってもらえるんだなと思いましたね。そういうふうに感じてくれた人が作ってくれたMIX CDです。SPICY CHOCOLATEさんが届けたい私が表現されているんだろうと思って。
アーティスト
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