【やなぎなぎ】視点を変えるだけで世
界が輝くことを伝えられたら
独特な世界観と浮遊感漂う歌声で聴き手の心をギュッと掴むやなぎなぎ。ニューアルバムは“自然と滲み出てきた”という、自然体かつ挑戦に満ちた全15曲を収録。やなぎなぎの“現在進行形の音楽のカタチ”を感じることができる渾身作だ。
取材:吉田可奈
ニューアルバム『ポリオミノ』を完成させてみて、改めて思うことはどんなことですか?
前作『エウアル』はアルバムを終着点として制作をしてきたんですが、今回は曲を好きなように制作していたら、アルバムが仕上がっていたような感覚なんです。アーティストとしてすごく理想的な制作をすることができました。
それだけインプットが多かった1年半だったんですね。
そうですね。たくさんの作曲家さんたちと楽曲を制作しただけでなく、海外のイベントにも出演させてもらったこともあり、すごく刺激的な日々を送らせてもらっていたんです。その中で、自分が歌いたい曲と、聴いてくれる人たちが喜んでくれる曲に違いがあることも気付いたんです。
どんな違いですか?
私自身はダンサブルな曲が好きなんですが、聴いてくれる人たちの反応を見ていると、私が歌うことに必死になる「トコハナ」のような曲が人気なんです。この曲は、“どう聴いてもらおう”という前に、メッセージ性が強い曲なので、とにかく私自身が力強く歌うということに終始しているんですよね。でも、どうやらそれがいいみたいで…。
きっと、聴いている人たちはみんな、なぎさんの声と世界観を好んでいるからこそ、そういう結果が生まれるんでしょうね。
そうだと嬉しいですね。結果としてライヴで一体感が生まれるので、歌っていてもすごく楽しいんです。
今回の『ポリオミノ』にも、前作同様とても抽象的な曲が多いですよね。
私自身が歌詞を書く時に大事にしているのは余白を残すことなんです。明確な答えを書くこともできるけれど、それを選ばずに、“もしかしたらこうじゃないかな?”という答えを何通りも残せるように作っているんです。曲を聴くことで想像力を刺激することができたら嬉しいですね。
そんな中で、なぎさんが作詞作曲した「逆転スペクトル」は、他の曲とは違う言葉選びのように感じました。
実はこの曲は唯一、自分の中で“ベタなものを作りたい”という感覚で制作し始めたんですよ。
“ベタ”っていう感覚、ちょっと分かる気がします(笑)。他の曲に比べて、すごくすごく真っ直ぐですよね。
そうなんです。他の曲は抽象的だからこそ、迷っている描写が多いんですが、この曲は目指すところが決まっていて、そこにしか行かないんです。それに最近、いろんなライヴを拝見させていただく中で、ひとりで活動しているからこそ、バンドっていいなって思うことが増えたんですよね。それなら、自分でバンド曲を作っちゃおうと思って作ったのがこの曲なんです。
学生時代、バンドに憧れていたり?
…それが、まったく(笑)。だからこそ、今の私が思う“青春”を曲にしてみました(笑)。
もしかして、意外と影響されやすいタイプですか?
そうなんですよ。最近は友達に影響されてボルダリングを始めたんです。壁を登っている最中は体と頭を一緒に動かすのですごく楽しいんですよ。それに、他の友達がハマっている夜釣りにも挑戦したいと思っているんです。
夜釣りですか! とてもアクティブなんですね。
楽しそうだなって思うと、やってみたくなるんですよ。
曲でもさまざまなジャンルに挑戦されていますしね。
そうですね。中でも今回挑戦したのは「テトラゴン」。この曲は、いつもまるめがちなサウンドをパキッと尖ったものにしたんです。それに、このアルバムのタイトルである“ポリオミノ”は、正方形の辺と辺を作って新しいものを作るという意味があるんですが、この曲の歌詞には、辺のつなげ方によってはまったく違う形になることから、違うものをつなげることによって別世界に行けたらいいなという願いも込めているんです。
とっても可愛いだけでなく、深い意味が込められているんですね。
はい。それに、どんなものも視点を変えれば違う世界になるということも言いたかったんです。
実際にそんな視点に気付いた経験はありますか?
私自身の体験ではないんですが、以前に『十二国記』という物語を読んだ時にすごく衝撃を受けて…現代社会に住んでいる主人公がある時、“あなたはこの世界の人ではないから、もともとの世界に連れて行きます”と言われてさらわれてしまうんですよ。もし自分が今いる世界が、自分のいるべき世界じゃないと知ったらどうするだろう?って。もしかしたら違う世界で生きる人生があるのかと思ったら、いろんな考え方が生まれてきたんです。
確かに、どんなに敵対しているふたりでも、根底に流れるものは一緒だったりしますからね。
そうなんですよね。そんな感覚をドリーミーだったり、ファンタジーな世界で描ければいいなと思ったんです。
それだけ聴けば聴くほど、深みを帯びるアルバムですね。
聴いてくれる人たちにとって、そうであると嬉しいです。さらに今回、初回限定盤には特典CDとしてカバー曲集が付くんです。
これは特典というか、しっかりしたアルバムですよね。
そうですね(笑)。特典とはいえ、かなり気合を入れて作りました。特にオススメなのがキリンジさんの楽曲「冬のオルカ」。この曲をkzさんにアレンジしてもらい、歌わせていただきました。原曲とはまた違った印象を持ってもらえると思うので、ぜひじっくり聴いてもらいたいです。
そして、年明けにはライブツアーが決定していますね。
2015年はライヴからの始まりになるのですごく楽しみなんです。ぜひ遊びに来てほしいですね。
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