【Poet-type.M】Poet-type.Mが描く“
夜しかない街の物語”
昨年はBURGER NUDSの再結成で話題を集めた門田匡陽が、2015年は自身のソロプロジェクトでの活動を活発化。“A Place, Dark & Dark”をテーマに掲げ、1年を通してコンセプチュアルな活動を展開していくという。その序章にあたる1月31日の独演会を控えた門田に、今年の展望を訊いた。
取材:金子厚武
昨年のPoet-type.Mの活動を振り返っていただけますか?
2014年を振り返ると、“LISTEN”“FEEL”“ANALYZE”の1年で、とにかくいっぱい音楽を聴いて、感じて、分析して、作るっていう、自分の幅を広げることだけに費やした1年でした。1stフルアルバム『White White White』(2013年10月発表)でPoet-type.Mは始まって、あの作品を作った時は、ポップネスに比重を置いてはいたんだけど、“門田匡陽のことを知ってる人が楽しんでくれればいい”ぐらいにしか思っていなくて。でも、やっぱりやるからには他の音楽を聴いてる子たちも排除したくないと思い始めたんです。ただ、俺は今まで自分のやりたいことだけをやってきた人間だから、それをやるには勉強しないといけないことがいっぱいあって、それをずっとやってたって感じかな。
そして、今年1年のプロローグが1月31日に開催される独演会『A Place,Dark & Dark -prologue-』なのですね。
俺、みんなが当たり前だと思ってるライヴのあり方にすごく違和感があるんですよね。全ての音楽がフェスで映えるわけではないし、ロックに限定したとしても、全てのロックがライヴハウスで映えるわけでもない。でも、今の日本は同じようなイベントばっかりじゃないですか。ただ集まった人とユナイトするためにあるように思えるし、“ほんとにこのかたちでいいの?”っていう違和感がすごくある。
その場の価値観に合わせなきゃいけないような雰囲気がありますよね。
そう。それで作り手もその場に合うような曲を作っちゃう。ずっと思ってきたことではあるけど、それはほんと良くないなって。俺は一番尊いのは音楽そのものじゃないといけないと思ってるから、その尊さを取り戻したいんですよね。
だからこそ、ライヴのやり方を見直そうと。
仮に今、Poet-type.Mがすごい成功していたら、また違ったかたちで物事をとらえているのかもしれないけど。今の自分の状況は、みんなに協力してもらってるからこそ、もっとセルフィッシュに活動したほうがみんなも楽しめると思ってるんですよ。なので、今回はライヴハウスではなく、椅子に座ってゆっくりとラフに音楽を楽しんでもらえる場を作りたいなって。
“夜しかない街の物語”というテーマには、どんな意図があるのでしょうか?
俺は2015年の東京で、はしゃぐつもりはないんです。みんなで価値観を共有して、バカみたいに騒ぐつもりは全然ない。ミュージシャンのエゴとか、“もっと成功しないと”みたいな強迫観念って、音楽にとってはどうでもいいことで、音楽そのものを抽出した時に、そういう余分なものは全部敵なんです。『A Place,Dark & Dark』は、現状の管理された全体主義的な音楽業界を街に例えていて、その中でそれを当たり前のように楽しんでる人もいれば、朝を探してる人もいる。そういういろんな価値観をひとつの場所にぶち込むと、絶対2015年の日本を象徴するものになると思ってるんです。
“今の音楽業界はダメだから変えよう”っていう一面的な見方ではなくて、まずは多様性を提示することが大事だと。
うん。今の音楽シーンがつまんないとは思ってないし、音楽を新しく発見するって意味では、こんなに恵まれた時代はないじゃないですか。それよりもミュージシャン側の意識の問題ですね。“そこに合わすなよ”っていう。
背景には綿密なプロットが存在してるのですか?
構想自体は、Good Dog Happy Menで『the GOLDENBELL CITY』っていうひとつの街の話を表現する三部作を作った時から、ずっとあったんです。その時にやり切れてない感覚があったから、“いつかまたこれをやろう”ってみんなと話したんですよ。そんな気持ちもあって、その時の自分の仇を討つじゃないけど(笑)、『the GOLDENBELLCITY』よりも緻密な舞台設定をノート3冊分くらい練って。曲を作る時はそれを何となく眺めつつ、でも細かいことは考えずに作ってました。
プロジェクトの一環として、CDのリリースも予定されているそうですが、新曲はどんなものになりそうですか?
日本の音楽って、サブカルとメジャーがそれぞれ自分の領域しか想定してないと思うんです。でも、オケの作り方でそこってクロスオーバーできると思うんですよ。おそらく僕の新しい曲は、非常に先進的なオケに、普遍的なメロディーが乗ったものになると思います。なおかつ、そのオケのジャンルは1曲ごとに全然違う。今ってみんなジャンルに縛られずに見境なく音楽を聴いてるわけだし、ミュージシャンの側が聴く人を限定しちゃいけない。俺はおじいちゃんにも聴いてほしいし、幼稚園児にも聴いてほしいから、オケがすごく面白くて、メロディーもいいっていうものをやりたいです。
今年はその新しい楽曲を持って、独自のやり方でライヴを展開していくと。
そうですね。ロックシーンにおけるフォーマットとはもうサヨナラします。自分のルールで、自分の尊さでやります。
では、最後に1月31日の独演会がどのようなものになるか、可能な範囲で話していただけますか?
今ストリングスアレンジを考えてて、弦楽四重奏と歌っていう新しい試みもやる予定です。曲は半分くらい新曲になる予定で、ほんとに2015年のプロローグって感じですね。半分が新曲ってことは、自分がどう演奏するかも、お客さんがどう聴くかも分からないわけで、想像力の余白がものすごくあるから、そこが不安でもあり、楽しみでもあります。
チケットが切符のデザインになってて、まさに“夜しかない街”へ入り込んでいくための片道切符ですね。
自分たちで責任を持ってライヴができるのであれば、当たり前だと思ってる部分をもっと楽しめるものにできるんじゃないかと思って。まぁ、ライヴに来た人は絶対こっちには帰って来れないと思います(笑)。それだけの自信はあるんです。
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