【忘れらんねえよ】俺らじゃないとで
きない言葉とサウンドにしたかった
L→R 梅津拓也(Ba)、柴田隆浩(Vo&Gu)、酒田耕慈(Dr)
シングル「ばかもののすべて」リリース後、柴田隆浩(Vo&Gu)がドミノ60,000個をひとりで並べて日本記録を達成するなど話題に事欠かない、忘れらんねえよが3rdアルバム『犬にしてくれ』を完成させた。新機軸となる今作について、柴田が語る。
取材:フジジュン
まずはドミノ日本記録おめでとうございます!
ありがとうございます(笑)。8日間かかったんですけど、ああいう単純作業は好きなので、そんなに苦ではなかったです。あと、ドミノって努力が比例するので、それが楽しくて。並べてる間は無になれるし、充実感あったし。やって良かったなと本当に思いましたね。バンドの名前を知ってもらうため、アルバムの発売に注目してもらうためにやったんですけど、これは絶対意味があったなと思ってます。
この経験は何かのかたちでバンドに活かされるんですかね?
いや、まったく活かされない。音楽に関係ないもん(笑)。でも、ニコ生で12万6,000人が観てくれて、GWはフェスに一切呼ばれてないですけど、それ以上の動員を上げたから十分です!あと、ニコ生ユーザーとすげぇハモるなって感じましたね。考えたらGWに家でニコ生に張り付いてるようなヤツ、俺らと変わらないなと(笑)。こういう人たちに刺さる音楽を作りたいなと思いました。全然リア充じゃないし、ウェイウェイした感じもないけど、それでいいや!って。
そんなところで届けるべき相手に出会ったと(笑)。今作の『犬にしてくれ』はそんな人にも突き刺さるアルバムだと思います。
僕はとにかく人と違うことがしたくて。もっと言うと発明がしたい…俺らじゃないとできない言葉とサウンドにしたくて。今回はそれができたかなと思ってるんですけど。
「ばかもののすべて」の時に“新しいサウンドを作りたい”と話してましたが、今作ではグランジの忘れらんねえよ的解釈といった、まったく新しいサウンドが生まれましたね。
俺の中でグランジが今すごく新鮮に聴こえてて。いちリスナーとしてシーンを見た時も、アッパーなものが多くてグランジ的なものって全然ないんですよね。でも、グランジをそのままやっても意味がないので、俺らにしかできないバカで切ない歌詞の世界観と、今のフェスやライヴハウスでちゃんと機能するビート感を掛け合わせたら、すごく面白い提示ができるんじゃないかと思ったんです。グランジって音はラウドだけど、やってる人間はナードで、上手くいってないヤツだったりするし。それって俺たちと一緒じゃん!みたいな。
歌詞もいつも以上にシンプルで端的に感じました。
そこは意識しましたね。うだうだと暗いことや真面目なことを歌ってるのはやり切ったから、“バカだなぁ!”と思われながら、ふとしたところに本気が見えるような歌詞世界にしたいと思って。ゲラゲラ笑った後に、“あれ? なんでグッとくるんだろう?”みたいな。今はそういうほうがカッコ良いと思うし、そういう方向に自分を持っていきました。
今作は“本気”の部分が演奏に見えて、歌詞で伝え切れない部分も音で表現し切れてると思ったんです。それを強く思ったのが「寝てらんねえよ」で。妬み嫉みだらけの歌詞なのに、後半の演奏で曲に込めた気持ちが伝わってきました。
ね! 重低音が負のオーラを纏ってますもんね(笑)。音はプロデューサーのNARASAKIさんが作ってくれたんですけど、“狂おしいサウンドにしたい”と言ってくれたから、“それです!”ってお願いしました。「寝てらんねえよ」の間奏も狂おしいじゃないですか。それが高速の4つ打ちにバカバカしい歌詞が乗っていて、すごく俺らっぽいし新しいなって。
最後に《なんだっていい全部やるよベイベー》と歌って、沸き上がる感情がサウンドで表現し切れていますよ。
最初は自分の内面だけで終わる歌詞だったんだけど、NARA SAKIさんと“外に向けて放出したいよね”と話して、最後は“世界を変えたい”と歌いたくて、あの歌詞になったんです。感情を増幅させたり、言葉の背景を表現するのがサウンドの重要性だから、すごく上手くいったなと思います。
で、サウンドを追求するNARASAKIさんにも感化されて、ギターとアンプ買っちゃったんでしょう?
買っちゃいました(笑)。そこもみんなと違うことをしたかったんです! だから、重低音の狂おしいサウンドを出すために、メタルの人しか使わないGENZ-BENZのキャビネットを買って……すごいですよ、“なんで、これを忘れらんねえよが使ってんだ!?”みたいな機材ですもん(笑)。とにかく反発したくて、逆のことがやりたかったんです。それが俺らの本質に紐付いた表現じゃないとダメだけど、迎合しないで俺らの道を突き進みたいんですよね。評価するのは世間だけど、アルバムが出来上がって、誰もやってないことをやれた自負はあります。
アルバムで鍵になった曲はありました?
新しいことができたなと思うのは、1曲目の「犬にしてくれ」ですね。サウンドもシューゲイザーをやり切れたし、歌詞もバカだけど切ないってところに奇跡的に着地してくれて。あと、「寝てらんねえよ」はグランジの現代的解釈ができたと思うし、最後の「紙がない」は下品な言葉を使わずに下ネタを歌い切るって挑戦もやり切れたと思うし(笑)。
でも、「紙がない」も《僕たちはもう拭かない》なんて歌詞に覚悟を感じましたよ。どの曲も歌詞はバカバカしいけど、サウンドを含めて正直で実直な想いが伝わってきました。
今回は何をやっても上手くいかない恋愛ド下手人間とか、仕事ド下手人間とか…まぁ、こんだけやっても売れない俺らが一番そうですけど、そういう人間に“これは俺たちの歌だ!”と思ってもらえるアルバムになったと思うんです。で、どうせだったらポップで笑えるほうがいいじゃないですか。
「ばかもののすべて」や「ここじゃないけどいまなんだ」でシリアスな部分は伝え切れてるから、アルバム新録の楽曲たちはそういうモードで作れたのかもしれないですね。
そうかもしれない。だからこそ、俺たちも攻めた表現ができたと思うんで、聴く人に刺さったらいいですね。みんなの溜まってるものを、俺たちが抜いてあげたい!(笑)
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