【ゆず】未来に残したい想いを楽曲に
込め、音楽で表現したい
L→R 北川悠仁(リーダー)、岩沢厚治(サブリーダー)
“永遠=TOWA”をテーマに音楽を追求した待望のニューアルバム『TOWA』。そこには“原点”を見つめた上での“深化”がうかがえ、デビュー19年目に突入した現在だからこその意欲的な作品に仕上がっている。
取材:セーニャ・アンド・カンパニー
約2年振りとなるオリジナルアルバム『TOWA』がリリースとなりますが、近年のアルバム『LAND』(2013年5月発売)や『新世界』(2014年2月発売)と並べた時に、制作にあたって一番大きな違いは何でしたか?
北川
ゴールを決めずに始めたことですね。タイアップがきたから曲を作るとか、“コンセプトはこれ”ではなく、自分が今感じていることとか、今鳴らしたい音みたいなものを自分のペースで作っていけたんですね。やり方としてはある意味アマチュアっぽいというか。与えられたミッションをこなすというよりは、自分のプライベートスタジオ(STUDIO HOUSE)が実験室みたいな感じで、そこでいろんな音を鳴らしながら研究を重ねていって、その中で自然と曲ができていきました。
岩沢
産みの苦しみみたいなものがなくて。無理したり背伸びせず、今やりたい曲をレコーディングしていった感じかな。レコーディングしている時から、“ライヴでこう歌うんだな”ということが想像できたし。曲と自分たちが近い距離にいる感覚です。
今回も個性的な楽曲が並んでいますが、シングル曲以外でこだわった制作アプローチなどあれば教えてください。
北川
そうだな…「みそら」や「いっぱい」とかは、目標にしてたのは“ピアニストを泣かせたい”。“ギターの弾き語りで作る曲はこうだろう”とか、“これはあとでアレンジャーが変えるしな”ではなくて、ギターで作るからこそできるコード進行や展開を、最初の時点でかなり詰めていきましたね。「二人三脚」もそうだったんですけど、アコースティックギターを中心に、ゆずのアンサンブルをさらに進化させたいという気持ちはありました。ここ最近は素材をアレンジャーに渡して、それを料理してもらう流れがあったんですが、今回は僕らが料理したものを柱に、そこに肉付けしたり、スパイスを入れるようにアレンジが重なっていく。そんなイメージです。
具体的な楽曲制作について聞かせてください。先程の話に出てきた「みそら」や「いっぱい」はアルバムの“陽”の部分にあたる、かなりストレートな曲という印象を受けました。一方で、社会風刺的ロックナンバー「た Ri ナ ぃ」など、かなり振り幅の大きい曲もあったり。
北川
時間をかけて作っていたので、反作用的に作っていた感覚ですね。先に「た Ri ナ ぃ」を作っていました。『新世界』ツアー中、横浜に戻ってきたらスタジオで曲を作って、自分で勝手に納期を決めたりしながらやってたんです。その中で、どちらかに偏らない、両側面の自分がいるなと。一方では足りないし、もう一方ではいっぱいだしと。そんな反作用で作っていきましたね。「みそら」という曲は、半分遊びで作っていたというか。ドレミファソラシドで言うミソラっていう音階をサビでやってみようと思って、最初は♪ミソラ〜って歌ってたんです。そこから“ミソラ”って“美空”だとか思ったり。突然できたというよりかは、日々音楽と一体となって過ごす中で、ポロポロ生まれたものをスタジオで積み重ねていった感じですね。
そのバリエーションの中で、全体を統一させる大きな役割を担っているのが、アルバムタイトル曲「TOWA」で。今回、コンセプトを決めず楽曲制作を行なってきた中で、“TOWA”というワードはいつ出てきましたか?
北川
曲をいくつか作っていくうちに、パーソナルな曲がある程度いっぱい出てきて。そういう曲だけを作るのも、飽き性なので飽きてきて(笑)。何かもうちょっと、表題曲であり、柱になるものを作りたいなと思った時に、ふと出てきたのが“TOWA”でした。
自身のどんな心境や想いから沸いてきたものなのでしょうか?
北川
自分はありがたいことに、昨年子供を授かることができて、何か…自分の中で、未来に対する想いが変わったんです。もちろん、今までも未来への想いや願いは歌ってきたんですけど、これまでと違う未来を、子供を通して感じることが増えました。日常にある何気ない話題や物事にしても、肯定的に思う時もあれば、以前よりシビアに思ったり、怖かったり、不安になったり。今まで聞き流していたニュースがずっと気になってしまったりとか。ものの見方が変わったんだと思います。その自分が見えているものを多くの人とリンクできるように作ったのが「TOWA」です。自分だけの未来じゃない。この身がなくなっても、次の世代に手渡して、続いていく未来なんだと。そんな未来に対して、自分には何ができるんだろうと。震災の時にも感じたんですが、自分にできることってそんなにたくさんはなくて。僕は未来に対して残していきたい想いを楽曲に込め、音楽で表現したいと思いました。
岩沢
出てくるべくして出てきたタイトルという印象ですね。「二人三脚」を一緒に作った時も、「OLA!!」や「終わらない歌」も、テーマはブレてないんですよ。普遍的で変わらないもの。そういうメッセージは一貫していたので、“なるほど”という感じで。全てがつながった感じでしたね。
この作品を“原点”と位置付けるのは簡単ですが、弾き語り曲でも新たな挑戦曲でも“深化”という言葉が相応しいなと思います。
岩沢
そうですね。最近、自分たちができることの少なさに喜びを感じているというか。結局、ギターを持って歌うことをやっているだけなので。それがより研ぎ澄まされていく感じで、原点に戻るというより、進んでいくイメージですね。
北川
弾き語り曲ひとつとっても過去の焼き直しみたいな感じは全然しなくて、すごくフレッシュな気持ちでこのアルバムを作れましたね。回り回って新しいものって巡ってるから、今の自分にはこれが新鮮というか。そもそもエンターテインメントすることや新しいサウンドを作ること自体が、自分の原点ですよね。新しいものを産み出していきたいという気持ちはずっと変わってないし、挑戦していく気持ちも変わらないんですよね。
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