【そこに鳴る】聴く人に衝撃を与える
音楽を作りたい
L→R 藤原美咲(Ba&Vo)、鈴木重厚(Gu&Vo)、たけむらともひろ(Dr)
昨春、1st EP『I'm NOT a pirolian』でシーンに登場した、そこに鳴るが3月9日に2nd EP『YAMINABE』をリリースする。ポップなメロディーはそのままに、サウンドも歌詞もさらに奔放に進化した意欲作だ!
取材:帆苅智之
1曲目「6月の戦争 -extreme explosion ver.-」での各パートがせめぎ合うように重なるバンドアンサンブルが顕著なのですが、正直言って2ndEP『YAMINABE』のドライブ感は前作の比ではないほど凄まじいですね。
鈴木
“必殺技の出し合い”みたいな感じですよね(笑)。こういうのは前作からやりたかったんですけど、前はミックスが上手くいかなくて、必殺技に聴こえにくかったというか、あんまり“ドカン!”というような音ではなかったんです。でも、今回は上手くいったと思います。“ex-ex- ver.”となっているものは全てそうなんですけど、そこに鳴るを始めてから2~3年目のものでその中でも一番「6月の戦争」が尖っていたというか、垢抜けたアレンジにせずに必殺技の出し合いにフィーチャーした感じなんです。
つまり、「6月の戦争」のようなサウンドがもともとのそこに鳴るの資質とも?
鈴木
だと思います、多分。
藤原
メンバー全員、根っこの部分ではポップな音楽が好きなんですけど、生まれがポップで育ちが何かややこしいというか…多感な時期に凛として時雨とか残響レコードのバンドを聴いてきたので、出てくるのはそこなのかなと思います。
竹村
以前は“我が! 我が!”みたいな個人プレイというか(笑)、各楽器が“誰が目立つか!?”って戦争しているみたいな曲ばかりで、そういう気持ちで演奏もしていましたし。“extreme explosion ver.”が付いている曲は攻撃に特化している曲なんです。
演奏していて気持ちが良いのは攻撃的なバンドアンサンブルですか?
鈴木
“気持ちが良い”というよりも“怖い”ですね。“ミスったらやばい”という(苦笑)。
全員
ははははは。
それほどスリリングだと?
鈴木
マジ、スリリングです。自分の曲なのにしんどい(苦笑)。綱渡りしている感じです。でも、自分は凛として時雨や9mm parabellum bulletに衝撃を受けてきたので、ああいうふうに聴く人に衝撃を与える音楽を作りたいかなと思うんです。
では、2nd EP『YAMINABE』はそこに鳴るのもともとのかたちを改めて打ち出した作品と言っていいでしょうか?
鈴木
あぁ…でも、「6月の戦争」のような曲もありますけど、「エメラルドグリーン」や「内緒にしててよ、醜い私のことを嫌っても」ってその真逆な面持ちだと思ってるんですよ。特に「エメラルドグリーン」は構成もJ-POPの定型な感じで。だから、そういうものがありつつ、初期衝動的なものもある作品になっていると思います。
まさに“YAMINABE”ということでしょうか。確かに「少女の音色に導かれ」のように、歌詞もサウンドもモロにナンバーガールを彷彿させる楽曲もありますしね。
鈴木
Aメロは向井(秀徳)さんっぽいギターの音色かもしれないですね。
しかし、ここまであからさまにその影響を露呈させている楽曲って珍しいと思います。何しろ《諸行無常の音色を 冷凍都市に投げ捨てろ》《「少女」って言っていいのは向井秀徳だけ》と歌詞にありますから。
鈴木
MATSURI STUDIOに許可取らんと…かな?(笑) 2年前の夏頃にKOGA Recordsの社長と出会って一緒にやっていくことになった時に、KOGA Recordsからリリースするんだからそれを記念した曲を何か作ろうと思ったんです。向井秀徳さんへ最大限のリスペクトを込めて(※ナンバーガールの1stアルバム『SCHOOL GIRL BYE BYE』はKOGA Recordsからのリリース)。《「少女」って言っていいのは向井秀徳だけ》と言いたいがための曲でもありますね(笑)。
藤原
歌詞を初めて見た時、メチャ笑いました(笑)。“こんなことがあっていいのか!?”って(笑)。
ナンバーガールの直撃世代ではないみなさんのようなアーティストがこういう楽曲を作り、こうして前線に出てきたことで、時代の変わり目を感じます。今までにないことをやっても不思議ではない存在というか。
鈴木
ジェネレーションが変わったということでしょうか? そう思ってもらえたら嬉しいですね。僕としては“凛として時雨を好きな人がやっているバンド”くらいの感覚ですけど、“新しい何かを作れそうなバンド”と言ってもらえるのは嬉しいです。
その点で言うと、今作での最大の注目は「エメラルドグリーン」の歌詞ではないかと思います。《こうして僕らは生きる 光を探して それでもそれでも生きるんだ まあ無理だけど ていうか光ってなんだよ》。こんなフレーズは過去に見たことがないし、ちょっと衝撃的ですらありました。
藤原
彼(鈴木)の性格がよく出ているなと思います(笑)。私も“光”という言葉に対して“それって何やねん?”って気持ちはあったんですけど、普通はそれをあえて口にするところまではいかないし。
竹村
僕らメンバーからしたらこういう歌詞は平常運転というか(笑)、いつも聴くフレーズなんですよ。他の曲よりも分かりやすく性格が出ている曲だと思いますね。
こういった歌詞はそこに鳴るの標準ですか?
鈴木
このニヒルさは他の曲でも滲み出てしまっている要素だと思うんですけど、「エメラルドグリーン」ではむしろデフォルメして分かりやすく伝わるように歌詞を書いたんです。後ろ向きなところから前向きに変化して、最終的に希望が出てきて終わるというのがスタンダードな歌詞の流れだと思うんですけど、捻くれた感じを出したくて、それを覆したというか、““光”という言葉を、そんな便利なポジティブな抽象的なイメージで、とりあえず使うんじゃないぞ”みたいな(笑)。そういう意味も込めつつ、ギャグ的なつもりもあって、僕のことを知っている人なら、《それでもそれでも生きるんだ》みたいな歌詞が出てきた時点で、“お前、本当にそんなこと思ってへんやろ!?”って思うと思うんですけど(笑)、それも面白いかなと。
大して意味なく前向きなイメージで“光”を使っているJ-POPの現状へのアンチテーゼというか、それを鼻で笑ってる感じというか?
鈴木
その“鼻で笑ってる”ことをさらに鼻で笑ってもらえたら嬉しいんです…ややこしいですけど(苦笑)。メタ的な感じと言いますか。言わばウーマンラッシュアワーの村本大輔さんの芸風に近いんですかね? あの方も自分の考えをデフォルメして芸にしていると思うんですけども、これはその感覚に近いのかなと思います。
アーティスト
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