【MADBEAVERS 】前作『プラズマバー
ン』の先に、この3人で行きたいと思
った

L→R EBI(Ba&Vo)、Kiyoshi(Vo&Gu)、JOE(Dr)

痛快なロックンロールアルバム『プラズマバーン』から約半年、“衝撃”に満ちたミニアルバム『その衝動の先へ』が完成した。よりシンプルに、ソリッドに、スリリングに研ぎ澄まされた本作について語るメンバーの言葉も熱い!
取材:石田博嗣

前ミニアルバム『プラズマバーン』から約半年という、早いペースでのリリースになりますね。

Kiyoshi

そうですね。ライヴをやる上で新しいマテリアルが欲しいってことで曲を作っているので、3曲ぐらい作りたいと思ってたんですよ。でも、最初は何曲作れるのか自分でも分かんなくて、結果的に気に入ったものが4曲ができたという感じで…だから、最初は3曲作ろうとしたんです。

このタイミングで曲を作ろうと思ったのは、創作意欲が高まっていたとかで?

Kiyoshi

いや、今回は作れる自信がなかったんですよ。『プラズマバーン』は音の面でもよくできたと思ってるし、すごく気に入ってたんで、正直言って新しいものを作るにはちょっと時間を置きたいと思ってたし。でも、ライヴはやりたい…だから、3人で出す音の塊をどうやって表現したら『プラズマバーン』の先に行けるのかなってすごく考えて作って、出来上がったのがこの4曲なんです。要は、曲を作る時に“いったい自分は何をやりたいんだ?”って考えるんだけど、『プラズマバーン』とは違うかたちで、その先にこの3人で行きたいと思ったんです。

どんなものを作るかバンド内で…

Kiyoshi

話し合い? ないです!(笑) でも、ずっとそうだから。

感覚で分かってるんでしょうね、バンド内のモードとかで。

Kiyoshi

そうそう。デモを作っている時に、EBIちゃんがベースを弾いて、JOEがドラムを叩いている姿が浮かんでるんですよ。で、実際にレコーディングで“せーの”で合わせる時に…レコーディングの時ってJOEとEBIちゃんはブースにいて、俺だけコンソールでギターを弾きながら歌うんだけど、もうその時点で“これはいい感じになるな”ってすごい手応えを感じるんですよ。それを毎回感じてるし、それを感じたいがために曲を作っているところもあるかな。当たり前なんだけど、確実にデモを超えてくるからね。俺はそれをすごく楽しみにしている。

では、Kiyoshiさんから今回の作品の曲が届いた時の印象は?

JOE

『プラズマバーン』の延長線上にある楽曲だなって感じましたね。“これでライヴをやれば、こういふうになるだろうな”ってなんとなく分かったから、そんなに考えずにパパパッて譜面を書いて…もちろん、自分なりに解釈するところは勝手にして、レコーディングに臨みましたね。

EBI

うん。『プラズマバーン』からガラッと変わったわけじゃないし…まぁ、僕はいつもの感じでしたけど(笑)。そうそう、今回はKiyoshiさん、曲がなかなかできないって言ってたんですよ。

Kiyoshi

1月末の時点で“もう無理!”って言ってたからね(笑)。

EBI

珍しくそんなことを言ってたから、“あー、産みの苦しみなんだろうな”って思ってたんですよ。そしたら4曲も届いて、“できてるじゃん!”って(笑)。

(笑)。そんな今作の表題曲の「その衝動の先へ」ですが、この曲が生まれたのはどんな衝動からだったのですか?

Kiyoshi

これはね、一番最後にできたんですよ。3曲作り終えて、“これでいいかな”って思ってたんだけど、サビのメロディーがパッと浮かんで。この曲ができたことで、うまく4曲がまとまった感じがありますね。マイナー調の「その衝動の先へ」があって、「MEMORIES」はメジャーで、「咆哮」でまたマイナーに寄って、最後はメジャー調のロックンロールって。“もうこれ以上は作れないな”って思ってたんだど、ほんと最後の最後のパッと出てきたんだよね。

その最後にできた曲が表題曲になったわけですよね。

Kiyoshi

うん。歌詞を書いてたら《衝動に唸る…》という言葉がサビにドンと出てきたんだけど、作曲する時って“いったい自分は何をやりたいんだ?”ってものをすごいほじくるんで、ほじくった結果、最後に出てきたのが「その衝動の先へ」なんだなって。歌詞もそうなんだけど、“衝動”って言ってもいろんな“衝動”があるじゃないですか。前向きなものもあれば、ただの欲望だったり、自分のエゴだったり…ストレスだって衝動のひとつだと思うし。『プラズマバーン』の時に漠然と言っていたものを、もうちょっと塊にして詰めれた感じかな。

そういう意味では、やはり『プラズマバーン』の流れの中にあるのでしょうね。歌詞も守りに入ることを拒むようなものだったし。自分の生き方に対する覚悟というか。

Kiyoshi

なんかね、MADBEAVERSはそういうものにしたいと思ってるんですよ。宣誓みたいな。一貫してそれしか歌ってない気がする。そんなにいろんなことを考えてないってことなんだろうけど(笑)。

次の「MEMORIES」が生まれた背景というのは?

Kiyoshi

曲ができない時期に、最近やってないことをやろうと思って、サビ始まりでドン!とくる曲…ポップでも、バラードでもない、その中間の曲を作りたいなと思ったんですよ。『プラズマバーン』にはなかったタイプというか。

ノスタルジックな感じがある曲ですね。

Kiyoshi

そういう意味では、ポップですね。昔はこういう曲をやるのが恥ずかしかったんだけど、最近は全然平気だな(笑)。それはドラムとベースとギターっていうトリオ編成だからってのもあるのかもしれない。これが鍵盤が入っているようなバンドだったら避けてるだろうな。やっぱり歌の部分で照れがあるからね。

歌詞もこのノスタルジックな感じから?

Kiyoshi

そうですね。メロディーと曲だけできて、なんとなく“MEMORIES”という言葉が浮かんで、それに向かって歌詞を書いていきましたね。ま、いつものパターンなんだけど。

その歌詞は“少年”がひとつのキーワードになってますよね。

EBI

サビの“少年”の部分がすごく入ってきますよね。

JOE

うん。だから、Kiyoshiが書く歌詞にしては珍しいタイプだなって思った。

Kiyoshi

“少年”と言ってるけど、何かの象徴でいいかなって思っていて…自分たちのことでもいいし、誰かのことでもいいし。自分の思い出と他の人の思い出をリンクさせる、みたいな。だからって、最初からそういう歌詞を書こうと思って書いたわけじゃないんですどね。何かテーマを決めて書くってことはしないんで。仮タイトルだけ決めて、そこに向かって書いていく…全然違うものになる時もあるんだけど、それは曲がそうさせたんだろうなって。だから、書き終わってから“俺はこういうことを言いたいんだな”って思うんですよ。

この曲はアウトロのアコギが印象的でした。

Kiyoshi

なんとなくスペーシーな感じを表現したくて。

最後は《宇宙の彼方に消えた》と歌って終わりますしね。

Kiyoshi

うん。ノスタルジーをスペーシーに表現できたかなって。ま、ライヴでの再現は無理だけど、アコギで昇天する感じに(笑)。

3曲目の「咆哮」はエモーションを爆発させたようなナンバーですね。

Kiyoshi

これはリフが浮かんだ時点で、“咆哮”というタイトルも浮かんだ。それしかないなって(笑)。ただ、タイトルを付けたはいいものの、全然歌詞がまとまんなくて、デモを送るギリギリまで書いてました。「その衝動の先へ」の歌詞を書き終わったあとも、まだ書いてたからね。

自分は何を叫びたいのかって?

Kiyoshi

うん。そういうことだったんだと思う。

サウンドはもちろん、ヴォーカルも感情的で。

Kiyoshi

そうなんだけど、意外にね、すごいメロディックで、そのテンションで歌いこなすのが結構難しかった。力を入れちゃうとダメで、そのバランスが難しかったんですよね。実はレコーディングの前に、高木フトシくんとの『二弦の共鳴 ~tour 2016~』ですごいテンポを落として、アコギでやってたんですよ。そこで練習して、なんとなくのレコーディングのコツを掴んだ(笑)。

JOE

タイトルのパンチが強かったから、「その衝動の先へ」かこの曲のどっちかが表題曲になるんだろうなって思ってましたね。

ドラムは聴く者の高揚感を蹴上げるというか、疾走感を煽ってますよね。

Kiyoshi

この曲のドラムはすごかった! エンジニアさんも“すごいっすね、これ”ってずっと言ってたよ(笑)。

EBI

レコーディングの時、いつもドラムと一緒のブースでやってるんですけど、とにかく生音がデカくて、遮音性のあるヘッドフォンを買いました(笑)。直撃ですからね(笑)。

JOE

激しいやつはね、小さい音では叩けないから(笑)。

当然、ベースも攻める感じで。

EBI

そうなりますよね。ドラムに煽られてます(笑)。

最後の「SWEET BABY ROCK'N ROLL」はロックンロールナンバーを作ろうと?

Kiyoshi

これは、ロッカーズの「可愛いアノ娘」へのオマージュソングです(笑)。歌詞に《可愛いあの娘》って出てくるしね。最初はもっと気怠い感じで、ミディアムテンポのロックンロールを作ろうと思ったんだけど、全然できなくて。テンポを上げたり、リフを変えたりして、四苦八苦してたんだけど、“これもう、ロッカーズの「可愛いアノ娘」へのオマージュソングにしょう!”と思ったらうまく転がって、こうなったんですよ。サビもできたし、歌詞もスラスラと書けた。

JOE

ベタなロックンロールが来たぞって思ったけどね(笑)。テンポが速いんでドラムは忙しくなるだろうなって思ったら、やっぱり忙しくなりました。

EBI

…僕は悩むことなく、いつもの感じでやりましたけど(笑)。痛快な感じで。

Kiyoshi

唯一、この曲は『プラズマバーン』に寄ってるかもね。シンプルなロックンロールというところで。

《妄想を》のコーラスも印象的でした。

Kiyoshi

「可愛いアノ娘」へのオマージュソングだからね(笑)。なんとなくのイメージとしては、めんたいロックとFoo Fightersが混ざった感じをやりたかったんですよ。

では、この『その衝動の先へ』はどんな作品が完成したと実感していますか?

JOE

これからが楽しみですね。ライヴでやっていくうちに変わっていって、7月の頭ぐらいには違って聴こえると思うんで。CDはレコーディングした日のかたちですからね。

EBI

これからツアーがあるから楽しみですね。お客さんの反応も楽しみだし。

Kiyoshi

うん。みんな初めて聴くわけだし。『プラズマバーン』の時はすごく反応が良かったんですよ。それを踏まえての今回だから…『プラズマバーン』とはまたちょっ違ったと角度だし、お客さんの反応が楽しみです。

『その衝動の先へ』

  • 『その衝動の先へ』
    MRMB-0013
    2016.05.06
    1800円

MADBEAVERS

マッドビーバーズ:Kiyoshi(Vo&Gu/media youth、hide with Spread Beaver、machine他)、EBI(Ba&Vo/ユニコーン、電大)、JOE(Dr/44MAGNUM、ZIGGY、hide with Spread Beaver)という猛者による3ピースバンド。1998年、Kiyoshiのソロ活動として“KIYOSHI'S MAD BEAVERS”名義で始動し、その後活動は止まるものの、05年に復活。08年4月にEBIが加入し、現在の布陣となる。EBIの加入により磨きがかかったソリッドなサウンド、そしてメロディアスな楽曲、さらに百戦錬磨の強者たちが繰り広げる圧巻のライヴパフォーマンス…まさに他に類を見ない、最強の3ピースバンドである。

アーティスト