【Anly】私にとって歌とは、最終的に
立ち上がらせてくれるもの
スキマスイッチとのコラボレーションで一躍脚光を浴びた話題のシンガーソングライターAnlyが、シングル5作を経て、いよいよ1stアルバム『anly one』をリリースする。沖縄・伊江島生まれ、20歳の彼女が放つ煌めきと唯一無二の歌声のルーツとは?
取材:本間夕子
1stアルバムということで、この『anly one』をどんな作品にしたいと思っていらしたのでしょうか?
1曲目と最後の曲は私のルーツを感じられるものにしたかったので、デビュー曲「太陽に笑え」で始まって、私の故郷の沖縄県の伊江島を思って作った「Come back」で終わらせようって最初から決めてました。あと、私は私というフィルターを通していろんなものを吸収して外に出すスタイルで音楽をやりたいと思っていて。なので、ある意味ジャンルがないっていうところを見せられる選曲にしようと。曲自体は16歳から19歳の間、特に高校生の頃に作った曲が多いです。
ちなみに曲作りはいつ頃から?
中学2年生の時に漠然と歌手になりたいって思ったんです。でも、歌えるってことだけでは、ラジオから流れてくるような人にはなれないだろうなって。私は5歳の頃からギターを弾いて遊んでいたので、自分で曲を作ればどうにかそういうステージに立てるんじゃないかと思ったのがきっかけですね。
お父さんの影響でいろいろな音楽に触れたと聞きましたが。
はい。夕暮れになると父が縁側で、晩ご飯になるまでギターを弾くんですよ。私も隣で一緒にエリック・クラプトンの曲を歌ったりして。時々、向かいのマンションのおじさんから“あれ歌って”ってリクエストがあったり(笑)。
どんな音楽を聴いて育ったのですか?
それこそクラプトンや、その時代のブルースミュージシャン、ロックだとZZトップ、CCR(リーデンス・クリアウォーター・リバイバル)、ハートとか…。
渋いな(笑)。
ハートはもう大好きで。家族で沖縄本島までドライブに行く時のBGMはだいたいZZトップかハートでした。家の中では母が民謡を聴いていたり、ラジオからカントリーが流れてきたり。カーペンターズやノラ・ジョーンズみたいな、しっとりした曲も好きですね。
見事にジャンルレスだ。本当にごく当たり前に音楽が側にあったのですね。
ひとりっ子なので遊び相手がギターだったんです。だから、今もギターが兄弟や友達みたいな存在で。歌手になりたいと思ったのも振り返れば小さい時からいつも歌っていて、父も母も“いいね、もっと歌って”って言ってくれる環境だったからだと思うんですよ。シンガーソングライターになりたいと両親に言った時も“そうなると思ってた。それがあなたの自然な姿だろうね”って受け入れてくれて。私にとって歌うことは息を吸うのと同じぐらい大切なことだなって思いますね。
実際、曲はどんなふうに作っているのですか?
ただギターと遊んでいたら、できたメロディーがロックだった…みたいに、あとからジャンルが付いてくることが多いです。歌詞も最初は意味が分からなくても最終的に分かる日がくる、みたいな。今はテーマに沿って書くことも覚えましたけど。
作る時は曲先? 詞先?
沖縄にいる時は歌詞からできてたけど、上京してからはメロディーからが多くて。きっと東京は音の刺激が多いからだと思うんですよ。沖縄にいる頃はトラクターの音か牛の声、父の歌ってる声ぐらいしか聴こえなかったので、物事を考える隙間がたくさんあったんです。
今回の『anly one』はいろいろなタイプの楽曲が揃ったアルバムでありつつも、トータルして感じたのは希望だったんです。「太陽に笑え」や「FIRE」みたいに力強く奮い立たせるものもあれば、「サナギ」や「傘」といったかわいらしい恋の歌の、心はずむような希望もあって。
私にとって歌とは最終的には立ち上がらせてくれて、一緒に歩んでくれるものだと思ってるんです。どんなに暗い場所から始まっても最終的には希望が見える曲を書きたいし、友達のように、家族のように人に寄り添うものを届けたくて。
ところでアルバムタイトルはなぜ“a”を小文字に?
パッと見、“only one”に見えるんじゃないかなと(笑)。オンリーワンになってほしいっていう願いも込めてます。
Anlyさんのオンリーワンな武器ってなんでしょう?
伊江島で生まれたことですね。
おお、即答。その心は?
やっぱり、その環境とか私を育ててくれた人たちの温かさが、こうやってジャンルを分けない自由な音楽を作らせてくれてるんだろうなって思うので。私の根っこにあって、この先も絶対なくならないものだし、それをまた私の音楽として出せる日がきたらいいなって思いますね。
では、この先、挑戦してみたい音楽は?
たくさんあります。アイリッシュもやりたいし、アデルみたいなバラードとか、カントリーも。中学生の時は“カントリー歌手になりたい”って言ってたくらいなので(笑)。
すごく合いそう。そう考えるとAnlyさんってご自身の趣向だけじゃなく、声もジャンルを問わないですね。
ほんとですか? そう言ってもらえて嬉しいです。
自分の声がギフトだっていう自覚はないですか?
私自身はちょっと自分の声にコンプレックスを感じてたりするんですよ。でも、「この闇を照らす光のむこうに」のレコーディングの時にスキマスイッチのおふたりが、ブースの向こう側からマイクで“Anlyちゃんの声はそのままでカッコ良いからいいんだよ”って言ってくださって、その瞬間にスッと“自然に歌おう”って思えたんです。
つい最近の出来事じゃないですか!?
でも、それが意外とターニングポイントで。力強く歌うことも私にとっては自然だけど、でも力を抜いて歌うってきっと家で歌っているような自然な姿なんですよね。そういう力の抜き具合がやっとここで確立できた気がしてます。
アーティスト
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