【藍坊主】深い森のようなアルバムに
なった
前作『ハナミドリ』から約2年。成長と変化を続けるバンドの姿を刻んだ4thアルバム『フォレストーン』が完成。彼らが本来持っている深い部分に分け入って制作された今作は、個性や思いが強く形になっている。
取材:岡本 明
約2年ぶりのアルバムになりましたね。
田中
そうですね。前作の『ハナミドリ』は今までで一番、藍坊主らしさと向き合って、俺たちにしかできないアルバムを作ろうって団結しながら作ったんです。でも、今回は“こういうアルバムにしよう”というのはなかったんですよ。『ハナミドリ』から後のhozzyの作品に変化があって、どこかに向かっている予感とともに、ここが大事なところだなと思えたんです。だから、あえて言葉にして固めようとするのは違うのかなと思えて、自然に作り上げました。前作は激しい曲、静かな曲と考えて作っていましたけど、今回はできてきた曲を入れるという作り方になっています。
hozzyさんの変化というと、どういう部分ですか?
hozzy
前々作ぐらいから自分のオリジナリティについて考えていました。その時はアルバムジャケットのデザインにも関わって、物作りの大変さが分かってきたんです。で、前作の『ハナミドリ』で自分でやれることはやり切れたと思ったんですけど、オリジナルって考えた割りに、とらわれているなと思って。まだ足りないものを感じるんです、それが何かは言葉では言えないんですけど。曲を作る段階で、根っこの部分を見ていない気がして。決まった方法に乗っているけれど、方法から見つめ直さないといけないなと思っていました。
田中
根源的なところだよね。
hozzy
「羽化の月」という曲は、それを確かめるように、サビを抜きにしてメロディーの断片をつなぎ合わせて展開するように作ったんです。ひとつの調(キー)の中で動くんじゃなく、強引に転調しても面白いことが生まれたりするんじゃないかってワクワクしながら作って。結果的にそれができたので、オリジナルはそこから先だなと思えました。
この曲、ほとんどプログレですよね。
hozzy
俺、プログレって聴いたことがないんですけど、いろんな方にプログレって言われるんですよ(笑)。ドラムの渡辺に聴かせたら、うれしそうだった(笑)。まさかプログレを作ってくるはと思わなかったって。でも、知ってて意図して作ったものじゃなくて、自分から出たものが結果的にそうなるのが重要だから。今回はいい足場固めになりました。
渡辺
聴かせてもらった時、最初、いいのかなって(笑)。僕は変拍子とか、そういうアプローチもこのバンドでできないかなと思っていたんですけど、それが曲の方から出てきて。何かにインスパイアされたものじゃなく、自分から出てきたのはすごいですね。
確実に幅が広がりましたね。
hozzy
そうですね。久々に集中して曲を作りましたから。そこからポップなものが生まれると、また違うものになりそうな予感がありますね。
今は大きな変化の時期ですね。
hozzy
藍坊主を好きで聴いてた人が、“ええ!”って思う部分があるかもしれない(笑)。でも、楽しいですね。
藤森
4枚目のアルバムで、これまで作ったものがあるから、こういう斬新なこともできるのかな。言いたいことや感情を曲にする、その原点の考え方だなと思えたんです。そういうメンバーがいるから、俺たちもいろんなことがやれる、それがよく分かりましたね。
“フォレストーン”というタイトルの意味は?
田中
“森の音”ということです。いろいろ理由はあるんですけど、今回の曲に木とか空気、水、そういう自然の例えがたくさん出てきて、森を連想するなと思ったんです。あと、今回の歌詞が直接的に物事を指し示してメッセージを投げかけるというより、モヤッと霧のように漂っていて、そこから聴いた人がメッセージを受信する歌詞が多くて、森のざわめきのような感じがしたんです。森の中って、川の音、木の音、虫の音とか、いろんな音があって、それがまるでメッセージに聴こえる瞬間があるんですね。“あの虫は腹が減っているのかもしれない”“このざわめきは風が荒れているのか”“雨が降るのか”とか。でも、それは自分が勝手に思っているだけで、森は何も言ってないんですよ。自分の心が勝手にそこに映し出されているだけで。今回は曲に自分の心を映し出すことで、改めてメッセージを受け取ることになるんじゃないか、と。それが森の音のような気がしてこのタイトルになりました。
聴き手が踏み込んでいくことで、いろんなイメージが沸くような?
田中
そうですね。“聴き手と一緒に作る”、そういう伝え方です。今回、hozzyも藤森も自分の内面に入り込んでいくような書き方をしているから、自ずと内面性が出ていて。聴く人は自分の心の奥深くを探らないと、見つけられないんじゃないかな、そういう深い森のようなアルバムになりました。
アーティスト
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