ROGUE主催イベント『GBGB』、9000人
を集め開催!
6月25日@『GBGB』(ROGUE)
続いて登場したFLYING KIDSは初年度から毎年参加していることもあり、バンドもファンも互いが勝手知ったる親密な空間を作り上げていた。「ディスカバリー」のようなファンキーな楽曲では踊り、「風の吹き抜ける場所」のようなアップリフティングなサビを持つ楽曲では歌う——客席とバンドとの交歓的な雰囲気は、4年で積み上げてきたからこその阿吽の呼吸のようなものを感じることができた。またイベントの馴染みだからこそ実現したのは、ROGUEの香川誠との共演。「セクシー・フレンド・シックスティーナイン」での両者の応酬には、互いが熟知しているからこその呼吸が感じられ、熱くも温かな空気がそこには流れていた。
イベントには別の形でのバンドで登場経験を持つ宮田和弥がヴォーカルをとるJUN SKY WALKER(S)は、「START」、「歩いていこう」などのお馴染みのナンバーと共に会場全体を沸かせた。MCではお茶目な面を見せつつ、初期衝動露にしたパフォーマンスは圧巻のひと言。ラストでプレイされた「MY GENERATION」では、衝動の勢いが余ってか、宮田が客席に飛び込むシーンも。その景色はどこかライブハウスにも似たものがあり、もみくちゃにされながらも、宮田は歌声と表情は歓びを溢れさせていた。
そんな先輩バンドからバトンを渡されたのがイベント初登場となるMr.Children。「名もなき詩」からスタートしたパフォーマンスは、最初からテンションの高い場所で音楽が奏でられるようで、バンドがこの場でプレイしているのが楽しくて仕方がないことを確認することができた。その証拠にMCで桜井和寿は「幸せです」と話しながら、ROGUEの奥野敦士との再会エピソードを嬉しそうに繋げていた。そんな憧れの先輩に対して桜井は「嬉しいのは青春時代のバンドが今も現役でやっていることで、その背中を追いながらも、未完成なまま前進している」と、楽曲のタイトルに掛けながら最大のリスペクトを送っていた。その楽曲を奏でているバンドは、偉大なる背中を感じながらプレイできている歓びに満ちているようにも映り、そこにはフェスのマジックが確実に発動していた。さらに言うなら、客席にハンドクラップとシンガロングの輪を広げていった「innocent world」の中の「この胸の中に流れるメロディ」に桜井はROGUEの歌を重ねていたのではないかと感じさせるくらい、この日のMr.Childrenの隣にはROGUEの影を見ることができた。締めのMCで桜井は「大事な曲です」という言葉に「大変なことがあったり、ついていないと思えることがあっても、誰かが背中を押したり、手を差し伸べてくれる。決して独りではない」という旨の言葉を繋げながら、ありったけの熱を込めて楽曲をプレイし歌った。それはかつて周りの仲間の助けと共に歌声を取り戻し、ROGUEを再結成し、『GBGB』の開催までこぎ着けた奥野の姿に勇気をもらったバンドのアンサーのようにも読むことができた。
そしてイベントのトリは集まったアーティストたちに愛されてやまないROGUE。オープニングの「OVER STEP」から力強さをみなぎらせていた奥野の歌声は、腹筋を失ったがゆえに発声法を変えざるを得なかったことを忘れさせるくらいに楽曲にみずみずしい初期衝動を吹き込んでいた。そんな自分に対する手応えと、満員の客席に背中を押してもらっている充実感からか、最初のMCで奥野は「感動するなあ。俺はハッピーだぞ」と素直に感想を語っていた。またバンド自体の状態も素晴らしく、映画用に制作された現時点で最も新しい曲の「俺の空」は、叙情的なメロディを丁寧かつエモーショナルに織り上げ、現在進行形でいい曲が出来、またそれをしっかりと形に出来ている——バンドとして最高の手応えをプレイと歌声に滲ませていた。そんなハッピーな時間を締めくくるかのように「GOOD TIMES」が本編ラストに用意されたのは、必然だったのかもしれない。
アンコールでは「『GBGB』のきっかけ、ROGUE再結成のきっかけを作ってくれたROGUEにとっての恩人」という紹介と共に桜井和寿が登場し、ROGUEとの共演が実現。ap bank fes '12では、体温調節や褥瘡の問題などの理由で、奥野が歌う映像と共に桜井による「終わりのない歌」が披露されたのだが、4年越しの悲願とも言える今回の共演で歌われた「終わりのない歌」は、無条件で人々の心を打つものがあった。改めてあたたかい曲だと感じるのと同時に、同じ歌を共有しながら笑顔で歌うふたりの姿には、純粋な「生への共感」を見出すことができた。発声法を変えざるを得ない奥野の歌は、「終わりのない歌」が発表された当時のROGUEを知っているファンにとっては異なる歌声なのかもしれない。でもそこには、人生の雨を一旦経験し、新たな世界を歩み出した奥野だけが持つ説得力が存在していたのだ。
奇しくもこの日は奥野の誕生日ということもあり、バースデーケーキがプレゼントされるサプライズも。そしてアンコールの締めは「LIKE A MOON」。「世界で一番愛している 君のために歌を唄おう」と繰り返されるフレーズは、誰の耳にも音楽は等しく響いていることを証明しているようで、バリアフリーの理想的な姿が会場の中には生まれていた。「終わりのない歌」は孤独に負けないために作られた歌だったとのことだが、必ず助けてくれる誰かがいることで孤独に打ち勝つことができることを、この日のイベントは教えてくれた。また、この日、待望のニューアルバムが10月に発売されることが発表された。なお、このステージの模様は8月21日、フジテレビネクストでのオンエアが予定されている。この日は雨とくもりと晴れが混在した群馬の天候だったが、会場の外に雨はなかった。「終わりのない歌」のように人生の雨もいつかは必ずやむのだ。
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