Tica

90年代中頃に活動していたThe Chang。70'sソウル〜ロックなどを消化した玄人好みの音を出す実にいいグループだったが、アルバム２枚を残し解散。そこでヴォーカル／ギター／メイン・ソングライティングを担当していた石井マサユキが、女性ヴォーカル、武田カオリに出会ったことにより結成されたのが、Ticaである。
バンド時代には、生のグルーヴを好み、ギタリストとしても通好みのするフレーズを連発していた石井だが、ここではプログラミングに徹し、R&Bやブレイク・ビーツ、トリップ・ホップといったエッセンスを混ぜ合わせ、フロア・フレンドリーなトラックを創出。打ち込み中心だが、無機質に料理するのではなく、ほのかな歌心を宿らせているところに石井の手腕が冴え渡る。そして武田は、シャーデーのムーディさとローラ・ニーロの魂を兼ね備えた歌唱で、サウンドの上を優雅に舞っていく。決して熱唱することはないが、微熱感覚をたたえた声には、本物のソウルが感じられるのだ。
デビュー・ミニ・アルバム『No Coast』（00年）は遊び心溢れるカヴァー集だったが、１stアルバム『Weight-Less』（01年）は、人肌の温もりが嬉しい“ハイブリッドAOR”に仕上がっている。はっきり言って別格です。