音楽で水彩画を感じさせたドゥルッティ・コラムの『LC』はポストパンク時代の異端である
70年代中期に登場したパンクロックは、巨大化したレコード産業へのアンチテーゼであった。たった数年のムーブメントではあったものの、多くの音楽システムを瞬く間に破壊した。そんなパンクも結局は大手レコード会社に吸収され終焉を迎えてしまうが、パンクの精神は若者たちの心に浸透していった。70年代末からのポストパンク時代には、スカ・リバイバル、エスノロック、ワールドミュージック、ニューウェイブ、テクノ、アンビエント、ネオアコなど、多くの新しい音楽が現れ、好奇心旺盛なリスナーにとっては楽しくわくわくする時期であった。テクノ系が主流となった80年代、商業主義に迎合しない若手のアーティストたちはインディーズでの活動を選んだ。そんなアーティストたちの受け皿として、英米を問わずインディーズレーベルの逆襲が始まる。今回取り上げるドゥルッティ・コラムの『LC』は、イギリスのマンチェスターにあるインディーズレーベル、ファクトリーからリリースされた2作目のフルアルバム。彼の音楽を聴いていると繊細で淡い色合いが見えるような絵画的印象が強く、他の誰にも似ていない傑作に仕上がっている。