リミックス制作の先駆者として知られる才人・ニルソンの傑作『空中バレー』
1968年、世界的なスターとなっていたビートルズが会見の席で「アメリカで注目しているアーティストは?」との質問に、ジョン・レノンとポール・マッカートニーがひとりのアーティストの名前を挙げ大きな話題となった。それがニルソンである。ニルソンはスタンダード曲のような本格的なポピュラー音楽のスタイルとサイケデリックなポップを混ぜ合わせたり、一人多重録音による斬新なヴォーカルアレンジを提示したりするなど、ポピュラー音楽界で独特の立ち位置を獲得したアーティストである。彼の歌う「うわさの男(原題:Everybody’s Talkin’)」は日本でも未だにさまざなメディアで使われているので聴いたことがあるのではないだろうか。今回は、その「うわさの男」を収録した3rdアルバムとなる初期の傑作『空中バレー(原題:Aerial Ballet)』を取り上げる。