ケイト・ブッシュの革新性が示された傑作『魔物語』の色褪せない魅力
今回は英国を代表する女性アーティスト、ケイト・ブッシュの1980年の作品、『Never For Ever (邦題:魔物語)』を取り上げてみます。70年代末、音楽界に現れた彼女は前例のないほどの独自の個性、表現力で立て続けに名作を世に送り、今なお音楽シーンに大きな影響を及ぼし、特にビョークやマドンナをはじめ90年代以降の女性アーティストの指針となるような足跡を残してきたと言えます。旺盛な70年代~80年代の活動を経て、90年代はほぼ引退とも言えるほど完全に音楽活動を停止していた彼女ですが、2005年に12年振りとなるアルバム『Aerial』をリリースして活動を再開。以降、マイペースでアルバム制作も続けている。独身時代の唯我独尊な音楽性も素晴らしいが、家庭を持ち、母となった現在の静謐で温かな音楽は以前にはない新たなケイトの音楽性が示されている。今なお輝きを失うことのない傑作『Never For Ever / 魔物語』を取り上げつつ、既成のミュージック・ビジネスに振り回されることなく音楽を続ける、彼女の歩みも振り返ってみたい。