Frank Wess

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    Frank Wessフランク・ウェス

    1922年ミズーリ州カンサスシティ生まれのフランク・ウェスは、“持ち替え”——“持ち替え”とは、メインの楽器以外にさまざまな楽器を吹くこと——の名手である。彼は数々の名門ビッグバンドを渡り歩き、主にテナーサックス/アルトサックス/フルートを吹きこなしていた。マルチプレイヤーであるが一番の功績は、“フルートをジャズに定着させた”ことだろう。演奏スタイルは基本的にスウィング。フルートの演奏も一音一音タンギングを使い、それがうまい具合に“なまり”として働くことで、一拍がとても長くユッタリとしているのだ。サックスも同様で、“一拍の重み”のある演奏を披露。かといって古いスタイルではなく、より洗練されたバップ・スタイルが魅力的である。
    簡単に彼のビッグバンド遍歴を書いてみよう。40年代にはビリー・エクスタインやラッキー・ミリンダーの楽団に、そして50年代にはカウント・ベイシー楽団の一員になる。ここでの活躍はめざましく、フルートを用いることによってサウンド自体に彩りを添えた。最も脂ののっている時期といえるかもしれない。また、アルト/テナーサックスを吹いていたが、特にフランク・フォスター(ts)とのテナーコンビで話題を呼び、“トゥ・フランクス”と称されていた。ベイシー楽団を退いてからはサド=メル・オーケストラ、86年には秋吉敏子オーケストラで活躍する。しかし、やはりベイシー楽団が水に合っていたのか、自らリーダーとなり当時のメンバーを集め、ビッグバンドを結成。かつてのベイシー・サウンドを見事に再現した。
    もちろんビッグバンドでの活躍のみならず、優れたソリストである彼は、ミルト・ジャクソンと共に『オパス・デ・ジャズ』(1955)という名盤も残している。