オルタナカントリーの先駆けとなったエルヴィス・コステロの『オールモスト・ブルー』
パンク〜ニューウェイヴ文脈で77年に登場したエルヴィス・コステロ。彼のデビューアルバム『マイ・エイム・イズ・トゥルー』はロック史に残る傑作である。実際にはパンクロックではなかったが、「アリソン」をはじめとする名曲群を収めたこのアルバムが、パンクロック嫌いのロックファンをパンクロックに振り向かせるきっかけとなったことは間違いない。今回取り上げる本作『オールモスト・ブルー』は彼の6枚目となる作品で、コステロ作品の中で最も聴かれていないアルバムかもしれない。それは、本作がカントリーのカバー集であり、アレンジも至極まともな正統派カントリーに聴こえるので、特にパンクロック好きには敬遠されたからである。しかしこのアルバム、80年代初頭のヒットチャートがポストパンク、シンセポップ、ディスコなどの音楽で占められていた時に、一部の若者にとってはとても新鮮なサウンドとして受け入れられた。『マイ・エイム・イズ・トゥルー』とは逆に、本作はカントリー嫌いの若いパンクファンをカントリーに振り向かせることとなり、90年代初頭に台頭したオルタナティブカントリー・ムーブメントに大きな影響を与えるのである。