フォークからロックへと転身を遂げたボブ・ディランの歴史的傑作『追憶のハイウェイ61』
アメリカでは公民権運動やベトナム戦争の激化と呼応するかのように、60年代前半は政治的なスタンスを持つプロテストフォークに大きな注目が集まっていた。ボブ・ディランの代表曲のひとつである「風に吹かれて(原題:Blowin’ In The Wind)」(’63)は、抽象的で文学的な歌詞と語りかけるようなヴォーカルで、フォークの可能性を広げることになった。63年7月に出演した『ニューポート・フォーク・フェスティバル』では大喝采で迎えられるなど、新時代のフォークシンガーとして頂点に立つのだが、同時期にビートルズをはじめとしたイギリスのロックグループと接することで、生ギター1本での活動に限界を感じ、徐々にロック的な表現に傾倒するようになる。ディランの6枚目のアルバムとなる本作『追憶のハイウェイ61(原題:Highway 61 Revisited)』(’65)は、フォークのエッセンスとロックサウンドが巧みに融合されたそれまでにない新しいスタイルを持っており、その後のロックの進化に大きな影響を与えることになる。