白瀬百草『hoshinoie』【まだ何でもない自分を何かに合わせていくことへの抵抗】
ゆっくりとしたギターにゆっくりとした歌が載ってくる。これをスローと呼ぶのかルーズと呼ぶのかは人によるのだろうし、どちらかに完全に決めつけることも個々の人自身の判断としても難しいのだろう。20歳前後の女性が華やかに世の中に出るひとつの手段として、かつてはアイドル歌手があり、そのうちにグラビアアイドルというのが主流となり、やがてアイドルグループの一員というのが一般的になった。その時代その時代に若い女性がなりたい何かが主体的に変わったのではなくて、その時代その時代にメディアが求めたものがたまたまそうだったというだけのことで、その出口に向かって、その時代の若い女性が自分を合わせていったというのが実態で、だから彼女たちはアイドル歌手になりたかったわけでも、グラビアアイドルになりたかったわけでもなく、華やかに世の中に出たかっただけなのだろう。