『ENTROPY PRODUCTIONS』は生バンドにラップを乗せた、近田春夫率いるビブラストーンの世界的にも稀な名盤
前回の当コラムで『建設的』を取り上げて日本のヒップホップの黎明期を振り返ったが、同期を語るにあたって、いとうせうこう&TINNIE PUNXを紹介して近田春夫を紹介しないわけにはいきますまい。近田春夫は邦楽史における重要人物であると同時に、この人の存在がなければ日本のヒップホップのかたちは変わっていたであろう、シーンのキーマンである。特に、87年から彼が率いたバンド、ビブラストーンは、生演奏+ラップという世界でも珍しいスタイルで、当時の音楽シーンに投じられた大きな一石であった。彼らのデビュー作であり、代表作でもある『ENTROPY PRODUCTIONS』をレビューする。