ピアニスト角野隼斗、自身最大規模と
なる全国ツアー”KEYS”を開催中~サ
ントリーホールでの東京追加公演をレ
ポート
続くモーツァルトのピアノソナタ第11番「トルコ行進曲つき」は、角野持ち前のサラサラとした爽やかな音色をベースに、時々空気を変えながら音楽を展開する。
これらはいずれも、今の形のピアノが生まれる前に作られた作品。“KEYS”をテーマとするこの公演において、モダンピアノの純粋な魅力を聴かせるパートだったといえる。
始めのテーマから、オリジナル版「トルコ行進曲」で聴かせたニュアンスを引き継いだ表現があって前曲からの流れを感じる一方、直球のモーツァルトからは大きく異なる自由な音楽が奏される。さまざまなジャンルを思わせる表現も現れ、調性とともに時代や場所まで変わっていくようだ。角野の音楽性と、鍵盤楽器への愛着、好奇心がひしひしと伝わってきた。
その後は、オーケストラ曲を鍵盤楽器のみで演奏してゆく。
「当時(1920年代後半)のパリのにぎやかな街並みを想像しながら聴いてほしい」という言葉と共にスタートしたガーシュウィン/角野編「パリのアメリカ人」は、グランドピアノ、アップライトピアノ、チェレスタ、鍵盤ハーモニカを駆使して、オーケストラとはまた違った立体感と、一人で奏でるからこその自在さを最大に活かした演奏。チェレスタや、独特の音がする角野のアップライトピアノの効果だろうか、普通の色鮮やかさというよりは、モノクロ映画の躍動感あふれるシーンを観ているようなおもしろさがあった。
アンコールとしてまず演奏されたのは、最近の自作曲だという「ノクターン」。どこか遠い国で、靄の中少しずつ明るくなっていく空を見ているような、幻想的な作品。
そして最後は「キラキラ星変奏曲」。このツアー中、公演ごとに別の調性を選んで弾いているということで、3月6日(水)サントリーホール公演は変イ長調。ポップでエネルギッシュ、ときにミステリアスな音楽が流れ出す。会場はスタンディングオベーションに包まれて、この日のコンサートは幕となった。
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